第10話 課金ゲーム

 戦いは最高の娯楽である。

 それは戦うものにとっても、観戦する方にとっても同じことである。

 だから、戦いはなくならないし、戦いに大きな金をかける奴らが居る。

 悪魔はそんな人間の欲望を糧に生きているのだ。


「スタンバイレディ、――――ファイト!」


 賭けが打ち切られてとうとう試合が開始された。

 このゲームの戦いは互いの持つポテンシャルだけで戦うゲームではない。

 賭けとは別に課金要素があるのだ。

 課金とは観戦者が自分の賭けた方を勝たせるために、または面白い試合を見たいがために、ただ単に勝馬をつぶしたいがためにプレイヤーに課金をするのだ。

 ちなみに賭け自体はレーティングが設けられていてゲームごとに参加資格が制限されている。

 しかし課金に対してはその限りではないので、賭け金以上の金が投入されることもざらではない。

 プレイヤーはその課金ポイントをうまく使って自信を強化したり、武器を手にしたりと戦略を練って戦うのだ。

 だからこのゲームは荒れる。

 幾人もの思惑が混じり合い予想を許さない混迷を極める戦いが繰り広げられる。


「だっしゃあああああああああああああああああああ!」

「おらあああああああああああああああああああああ!」

 試合開始直後に鬼とサイクロプスが拳を打ち出し合いぶつかり合った。


「おおッと、いきなり両者ともに課金ポイントなど無視して殴り合い始めました。」

 観戦者用のチャンネルでは謎の実況ミスター・Mが叫びをあげる。

 これに対して答えたのは謎の解説ミス・Xである。

「これは互いに己の筋力に自身があり、相手が課金に気を取られてる間に仕留めようとしたみたいね。」

「なるほど、意識がそれてる間に決めようとしたわけですか。しかし、両者そのまま一歩も引かず殴り合いを続ける。」

「課金ポイントの使用をさせまいとしてるのか、もしくは己のポテンシャルのみで決着を付けようとしてるのか、判断に迷うわね。」

「しかしそうなると、ランクレアのサイクロプスが体格的にも有利になる。なる――――なるはずなのに、鬼は互角に殴り合っている。これはすごい。コモンとは思えない体さばきでサイクロプスの攻撃をいなし自身の攻撃を通している。」

「さて、このまま殴り合いで決着が付くか、はたまた課金ポイントを使って戦闘の流れを変えるかが見どころね。お姉さんとしては筋肉同士のぶつかり合いの方が好きだけど。」

「とか言ってますけど、この人刀で首が飛ぶところも大好きなイカレ野郎だぞ。」

「私は野郎じゃないわよ。しかしあのコモンの鬼、ランクに見合わない強さよね。新人かしら。」

「おお~~っと、ここでサイクロプスが武器を取ったぞ。ついに課金ポイントが使われた。対する鬼はどう出るのか見逃せません。」

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