第5話 衛星隔離都市
カズマの部屋はとある建物の地下の奥深く、秘密基地のような感じで存在する。
その建物から外に出ると
やたら煙たい排気ガスを吐き出すバイク。
騒音の絶えない歯車。
路面に面した店はシャッターを下ろしているかバリケードを敷いて見張りを置いている。
まさに世紀末な街の風景である。
足元を見れば錆混じりの汚水が流れており。
上を見れば高層ビルのように壁が埋め尽くす。
上に、高いとこに行けば行くほどきれいに磨き上げられたガラス張りの壁が見える。
そしてその壁より高いところ、天井からはとても綺麗な地球が見て取れるだろう。
そう、ここは地球ではない。
ここは地球の衛星、月に築かれた隔離都市である。
地球上で生活するのが困難な
その都市の中でも高層に住むものはそれはブルジョワジーな生活を送っているのだが、下層に住んでるものはと言うと――ご覧のありさまである。
カズマは家を出るとだらだらと目的地に向けて歩いていく。
その後ろを傘を――これまたフリルがいっぱいついたピンクの傘をさしてディアナがとことこと付いて行く。
そんな二人を町にたむろするならず者が目を付け――――みんな見なかったことにして目を逸らしていく。
「皆さんお行儀が良くなりましたね。」
「誰かさんがおもっくそ暴れ回ったからねえ~~~~。その張本人は一向にお行儀が良くならないけどね。」
「あらあら、ソレは怖いですわねぇ~。お兄ちゃん、ちゃんと守ってくださいね。」
「この町でドアチェーンをぶった切れる奴がどの口でほざく。」
暗にカズマはお前は襲われる側じゃなくて襲う側だろう、と言ったつもりなのだが、言われたディアナの方はコロコロと笑ってどこ吹く風。全然堪えていない。
「それで何処に行くのですか。確かお仕事に行くと。」
「ゲーセン。」
「まぁ、まぁまぁ、まさかそんなところで働いているのですか。」
「働いているというよりかは小銭を稼ぐ程度ならそこらへんでいいんだよ。」
「まるで甲斐性無しのろくでなしみたいですわ。」
「そこにクズと薄ノロを足していいよ。」
「たしませんわ。お兄ちゃんなら――。」
「公式でも出ればいいじゃないか、って言いたいんだろう。」
「うっ、そうですわ。」
カズマに自分が言いたいことを先回りされたことで口をつぐむディアナ。
「いいじゃんぇか。公式だけがすべてじゃない。折角のゲームなんだからさ、もっと楽しく遊ばないと損じゃないか。」
そう言ってカズマは目的地のゲーセンに入っていった。
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