第6話 バーチャルデビルコロシアム

 カズマが入ったゲーセンは外の見てくれはシャッターにシンナーで落書きがされて、有刺鉄線でバリケードを作って、ピエロみたいな化粧をしたやたら頭のネジが飛んでそうな輩たちがたむろしている風体だった。

 だが、中に入ればきちんと清掃も行き届いていてちゃんとした格好(下町基準)をしたものが利用しているまっとうなゲーセンだった。

 表のアレは見てくれだけだ。――――半分は。

 残り半分はガチでヤバいのだが、最近もっとヤバいのが下町に入り浸るもんだから皆大人しくなっている。


「それでお兄ちゃんはどのゲームで稼いでるの?」

 そのヤバいやつの一人がとことことカズマの後ろをついていっては訊ねる。

 カズマの前にはモーセの奇跡みたいに人の道が出来上がる。

「ちっ!」

 それを見てカズマはやりにくそうに顔をしかめる。

 カズマは顔を知られてはいない。

 だからカズマ一人ならこのようにはならず上手く人ごみに溶け込めるのだが――今は顔が割れてるヤバいやつが一緒なもんで「あぁ、アイツが……」と言った感じで注目を集めてしまっている。

「いつもなら賭け元ルーラーの張り具合を見て紛れ込むんだがな。」

「あっ、私が居て目立っちゃてるんだ。」

「そう思うんなら部屋で大人しくしててほしかったぜ。」

 こうなると本命のゲーム以外挑戦出来やしない。


「バーチャルデビルコロシアム」


 通称VDC、この都市の人間はみな心の中に悪魔を飼っている。

 比喩ではなく文字通りである。

 このゲームはその悪魔たちをヴァーチャルで戦わせるコロシアム形式のゲームだ。

 皆このゲームには金を払わない。

 金を稼ぐためにゲームをする。

 この都市にあるゲームはみんな大体そういうものだ。

 では誰がプレイヤーに金を払うのか。

 決まっている。コロシアムなのだから観戦者がいる。

 そいつらが観戦料を払いファイトマネーになるのだ。

 この都市は悪魔憑き、通称ラプラスに犯された病人を隔離する都市だ。

 何故隔離するかと言うとラプラスに犯されたものは例外なく強い闘争本能を刺激され、戦わずにはいられなかったからだ。

 治療は不可能でただ戦うことでみたされる人生。それをこの月面の衛星隔離都市の中で満たすのだ。

 しかし、


「戦争に勝る娯楽はない」と言った名言が生まれたように、戦い続ける病人を観戦するビジネスも存在していた。

 この都市で行われる戦いは地上、地球上の異常者健常者の娯楽として配信されて、賭けも行われている。

 その収益がこの都市を潤しているのだ。

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