第2話 ディアナ・アレンジ

「おはようございます。」

 カズマが目を覚ますと見知らぬ女の子が顔を覗き込んできていた。

「うおおおおおおおおあああああああああああ!」

 すぐさま布団から飛び出し部屋の壁に張り付くカズマ。

「だだだだだだだ、誰だオマエは。」

「誰だとは失礼ね。また私のことを忘れちゃったの。私よ。ディアナよ。」

 そう名乗る少女は淡い赤髪、いや、もはやピンク色と言っていいボリュームのあるウェーブが掛かったロングヘアーを揺らめかせて、金色に輝く意志の強い瞳でカズマを見つめる。

「ディアナ?……あぁ、ディアナね。」

 ディアナは髪色と同じ色のフリルがたくさんついたドレスを着ていて、手にはクマのぬいぐるみを抱きかかえていた。

 そのクマのぬいぐるみをパソコンのモニターが置いてあるテーブルに背中向きでおくと。


 スルリ。


「まてまてまて、ディアナ、何でいきなり服を脱ぎだす。」

「だって、お兄ちゃんったらワタシの顔を見ても思い出してくれてないみたいだから、それならまた肌を重ねれば思い出してくれるでしょ。」

 そう言ってストンとドレスを足元に落として、ささやかな胸を覆うブラジャーのホックを外そうと背中に手を回すディアナ。

「まて、思い出した。ディアナ・アレンジ。俺の恋人だろ。」

 カズマはそう言って清楚な純白で綺麗なレースで彩られた下着姿になったディアナの肩を掴んで脱ぐのを止める。

「そうかしら。口では何とでも言えるよね。だからホントに思い出したか身体で確かめないと。例えば私のGスポッ――――。」

「ハイ、そこまで~~~。朝から下ネタ全開は勘弁してくれ。」

「あら、知ってるでしょ。私は朝からでも燃えるのよ。」

「お前の場合は1日24時間365日ずっとだろうが。」

「やぁね。私だって生理の日くらいはテンション上がんないわよ。」

「俺はお前とは付き合い長い方だけど、お前が生理になってるところなんて見たことないぞ。」

「そこはほら、女の子としてうまく隠してるのだよお兄ちゃん。」

「ハイハイ流石ですねぇ。魔女って呼ばれるだけはあるわ。あとそのお兄ちゃんって呼び方やめてくれる。」

「嫌よ。お兄ちゃんて呼びながらする方がお兄ちゃん激しくなる――。」

「なんねーよ。決してなてない。」

「ふふふ、口では何とでも言えるわよ。で・も、体の方は正直よね。」

 そんな見透かしたような視線で見つめられてグゥの音も出ないカズマは視線と共に話題を逸らす。

「そう言えばドアにはチェーンも付けておいたのにどうやって入ったんだ。」

「そんなの魔法に決まってるじゃない。」

 カズマがドアの方を見ると――――焼き切られたドアチェーンがぶら下がっていた。

『怖えーよ。俺の彼女がストーカー真っ青のやり口で部屋に侵入してくるとか、プライバシーはねえのかよ。』

 とは思うモノの自分で選んだ彼女だ。

 文句も言えないのが現実だった。

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