第1話 カズマ
カタカタカタカタ、タタッ、カタッ、カタタタタッ。
暗い部屋にキーボードをたたく音がこだまする。
部屋の中は雑多だった。
機械類のパーツが幾本ものケーブルにつ上がれている中で、機械に挟まれる様に厚手の装丁の本が挟まっていたりした。本の種類もまちまちで日本語の物や英語の物、果ては何処の文字とも知れない書籍もあった。
そんな雑多な部屋の中心にはゲーミングチェアが埋もれており、そこに体育座りをしながらキーボードをたたく一つの塊が有った。
その塊の名前はカズマ。
中肉中背でちょっと不健康な顔色をした、しかし整った顔立ちをして居る青年である。
ちゃんと身だしなみを整えれば多くの女性にモテるであろう青年は、しかし目の下にクマを作りながらモニターを凝視している。
やっているのはゲームである。
最近地上で人気のオンラインシュミレーションゲームであった。
「だあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!まぁた負けた。」
カズマは被っていたパーカーを払いのけると頭をガリガリと描きむしった。
数日お風呂に入ってなかったのでふけが舞う。
「……ちっくしょう。風呂にでも入って気分転換でもしようか。」
そうつぶやいて椅子から立ち上がったカズマはワンルームの部屋から風呂場に移動してお風呂にお湯をためる。
「しっかし、何なんだアイツ。どのゲームでも必ず俺に対戦を挑んで来てはボコボコにしてくれやがる。ストーカーかなんかかよ。」
自分で言っておきながらまさかと思いつつ窓の方を見てしまうカズマ。
幸いにして窓から覗き込んでくる見知らぬだれかなどいなかったわけだけど、一度変な想像をしてしまうと気になるモノで真っ暗だった部屋に明かりをつけてカーテンをしっかり閉めて、ドアの施錠も確認しなくては気が済まなかった。
ドアのチェーンもしっかり閉めてからお風呂に浸かって疲れをとる。
お風呂から上がり、さっぱりしたカズマはモニターに映し出されていたさっきのゲームのリザルト画面を見て眉根を寄せる。
「ほんと、どこのどいつなんだろうな。いつかぜってぇに勝つ。」
カズマはモニターに拳を軽くぶつけると髪を拭いて寝床へと向かった。
モニターに映し出されていた勝者の欄に書かれていた名前は「SAKUYA」だった。
ちなみに電気はちゃんと消して寝た。
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