第2話

どうも。異世界に転生した路傍の石です。


ちなみに、36回目の転生です。


え? 石って生き物なの?というツッコミが聞こえてくるようですが、そうなんです。


この世界では、石も生き物なんです。


魔法が存在するこの異世界は、土や草花はもちろん、石にも魔力が宿っていて、この世界での魔力は生命力と直結してるんです!


えーと、つまり、魔力を宿す石(魔石)は生命力もある事になり…、まぁ、石も生きてるという訳ですよ。


うん分からん!という読者は、あんま深く考えずに読み飛ばしてOK。ここ重要じゃないから。


それで、今回転生したのは、路傍の石なんですが。


いやぁ〜。前回のミジンコがあまりにも短命だったからですね。テヘペロ⭐︎(死語)


前回の失敗を踏まえまして。


今回は食べられる事がなく、危険を回避する為に注目される事もなく、そして頑丈さにも定評あるモノを考えました。


そう!それが路傍の石です。ジャジャーン!


うんうん。我ながら良い選択をしたと思ってます。


あ。そうそう。勇者として召喚された後の話なんですがね。


勇者と言えばアレですよアレ。

魔王を一緒に倒してくれる仲間。


そう!パーティです。異世界あるあるです。


自分は神様から俺TUEEEなチートスキルを授けられて、すぐにこの国の王城内にある召喚の陣へと転送されました。


そこには、神様から既に神託を受けて待機していた巫女さんと、王子と、それから複数の騎士達がいました。


それで自分が現れると、その方達と早速パーティを組む事になりました。


パーティメンバーは、巫女さんと王子、そして騎士達の中から数人が同行する事になったのですが、ここで重要なのが、種族です。


ほら。魔王が居るファンタジーな世界なら、エルフだってドワーフだって、獣人だっているんですよ! 異世界あるあるです。


王子は人間でしたが、巫女さんはエルフで、他に同行する騎士は一人がドワーフ、もう一人が獣人でした。


日本にいた時の自分は、アニメや漫画やゲームが好きで、そういった人間以外の異種族を、紙面や画面で散々目にしていた筈なのに、いやぁ〜。実際に見るのとは全然違いましたよ。


自分は異種族に多少の興味があったし、実際に会えばもっとウキウキと嬉しくなるような気持ちになるものだと思ってたんです。


でもね。実際に異種族と会った時の気持ちは、ただただ困惑というか、まるで未知の生命体に会ったような、ウキウキ感とは真逆の、言い知れぬ怖さを感じたんですよ。


まぁ、神様に日本から引き抜かれた時は、真っ白な何もない空間で、神様の姿も見えず声だけだったから、現実感が無かったのだと思います。


だから、神様からアレコレ説明されたりスキルを貰って準備完了後、いざ召喚の陣へと転送されて。異種族と初対面した時に、初めて自分が異世界に来たと実感したんです。


多分あの時の自分は、この異世界の言葉がスキルで解読できなければ、全力で壁際まで走って逃げてた自信があります。キリリッ。


何故に壁際なのかって?


だって、背後に壁があるだけで、かなり安心できるじゃないですか。


え?そんな事ないって?


いやいや、背後に壁があれば、背後は守れる訳だから、あとは前だけに集中できるじゃないですか。


…え? お前、勇者だろって?

俺TUEEEチートスキル持ってるだろって?


・・・・・だって自分、元々は平和慣れした日本男子ですし。どちらかと言えば争いは避けて通る派ですし…。


ま。それはともかく。

始めはビクビクしてましたけど、言葉が通じた事と、人間の王子が居たから、彼等と暫く話していく中で、何とか落ち着く事ができました。


そこからは、魔王を倒すべくパーティメンバーで協力しながら魔王城を目指したんですが、その道中は結構、いや…うん。かなり大変でした。



ところで、転生36回目の選択肢について。


ちょっと今、間違ったかもと焦ってます。


というのも、何故か自分は、あれから何処ぞの若者に拾われて、只今バッグにin中なんですよ。


「この純度なら良い剣が作れる」とか何とか聞こえたのは、この現状を鑑みるに、どうやら幻聴ではないようです。


あるえぇ〜〜〜。おっかし〜な〜〜。


自分が転生したのは、そこら辺にあるような、ただの路傍の石なのに、何故に拾われたんだ?


すると、ふと気付きました。


今の自分は、ただの路傍の石なれど。


元勇者×34回の転生で(ミジンコはノーカンで)、“ただの”とは言い難い、高濃度の魔力を宿した石=魔石になってるじゃん!と。


う〜ん。…これは想定外だったな!!



…────おいそこ。

お前アホだろとか言うなよな!


これでも真剣に考えたんだからな!


‥さて、とにもかくにも、これからどうしようか…。


そこへ衝撃の一言が落とされました。


拾った若者に対して「良かったな、勇者!」って、誰かが言ったのです。


…何ですと?!


自分を拾ったのって、今代の勇者なのか?!


あっ…あのぉ〜!!

ちょっと物申したいんですが良いですかねっ?


て、‥あ‥‥‥。


…自分、今、路傍の石でした…。


いくら高濃度の魔石と言えども、石は石だ。

石に喋れる口なぞ付いてる訳がない。


つまり喋れない。


ってことは、当然、物申せない。


あちゃあ〜‥。

‥これは、またもや…詰んだかも?(滝汗)



〜続く〜


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