第2話 告白した方の事情(1)



 ※



 それは、中学二年の夏の事だった。


 僕は、中学生に上がってから、両親から明かされた重大な告白のせいで、ずっと荒れていた。


 と言っても、成績を落としたり、素行不良な真似をしたりしていた訳じゃない。大好きな両親の悲しむ事など出来る訳もない。


 心の中だけが、ずっと荒れて渇き、ざわついていたのだ。


 表面上は普通なフリをしていたけれど、それが単なる無理で、虚勢を張っているだけなのは、自分でも解っていた。


 夜、枕に顔を押し付けて、声を押し殺して泣いた事も何度かあった。


 そんな僕の事に気付いた訳ではないみたいだったけれど、その日は級友達に、中学バスケットの県大会夏の予選が行われている会場に、半ば無理矢理付き合わされた。


 元々、学校の部活などには参加していなかったし、興味もなかった。


 子供の頃から師事している武術の師匠にも、「アレらは下らんし、お前が嫌っている“スポーツ”の団体競技はお前に合わんだろう」とか言われていた。


 確かに、ちまたで行われている“スポーツ”に、僕は嫌悪感すら覚えていた。


 何故なら、大体の“スポーツ”は、体格の大きな者、背の高い者が有利で、優秀だと決めつけられる、チビには用の無い、成長の早さでも競っているような背比べ部ばかりなのだ。


 大きければ偉いのか?背が高ければ有利なら、背の高さでボクシングの様に、クラス分けをして行うのが、正しい“スポーツ”の在り方ではないのか?とか、憤懣やるかたない僕は、色々理由をつけて部活の“スポーツ”全般を避けていた。


 もし参加に行ったとしても、“あ、チビだ”“戦力外のお荷物が来た”などと内心の見え透いた、こちらを見下した視線で見下ろされるのがオチだ。実際の経験もある。非常識な馬鹿なら、それらを口に出したりすらする。


 サッカーや野球はまだマシで、特にバスケだのバレーだのは大掛かりな背比べ大会か、と言いたくなる位に大きな学生の集団ばかりだ。この大会もそうだった。


 特に、バスケットボールの前回全国大会優勝校とかいう、全国からスポーツエリートを集めて育成しているという有名中学の面々は、留学生だという、プロ・バスケットプレイヤーにも似た黒人の学生、ハリウッドの俳優が紛れ込んだのかとすら思ってしまう長身の白人の美形学生など、とにかくデカい、中学生とは思えない面々ばかりだ。


 ただでさえ体格のいい、背の高い中学生に、それ以上な海外留学生が多数交じったその集団は、他とは浮いた、一種異様な集団だった。


「あれは反則だよなー……」


 観客席から眺めながら、一緒に来た級友すらそうこぼす。


「だけどあいつらを見に来た訳じゃないからな。あんなんじゃなく、なんか無名の中学のチームが、異例の大活躍をしているらしいんだ。今日はそれを見に来たんだよ」


 僕の不満そうな様子に、他の級友が笑いながら言う。


 なる程。あんなすでにオッサンみたいな集団を見せたい程趣味は悪くなかったみたいだ。


 そこで僕は、大袈裟に表現すると、運命的な衝撃の出会いをするのだった。






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コンプレックス持ちな彼です。

でも、スポーツって大体こんな感じですよね。

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