エピローグ

第63話 アニメオタクになることが


 ――油断していた!


 というよりも――また同じ手に引っ掛かるとは……。

 同居している彼女と妹同然の女の子が、入浴中に乱入して来るなんて⁉


 落ち着こう、彼女達は水着姿だ――いや、無理だろ!


「ユーキくん! お背中、流しますね♥」


 ――ぷるるんるん♪


「兄さん! 背中を流してやるぞ」


 ――つるぺったーん♪


(絶対嘘だ! 何をたくらんでいるのやら……)


 二人とも、海水浴に行った時の水着と同じだ。

 莉乃は白い水着を、雛子は赤い水着を着ている。


 紅白だが……全然、目出度めでたい感じはしない。

 むしろ、莉乃の豊満な身体に劣情を抱かない方が難しい。


 加えて、最近は雛子も妙に色っぽい。まだまだ子供だと思っていたが、その美麗な顔立ちは男女問わずとりこにしてしまう程、魅力的だ。


 その二人がタッグを組んでいる。隙をうかがって逃げようと思ったが、ジリジリと間合いを詰められては、それも難しい。


(隙が無いのなら……作るしかない)


 今回は、姉の差し金では無さそうだ。

 ならば、強行突破も可能――だが、雛子に怪我をさせたくはない。


 かといって、今の莉乃に抱きつかれでもしたら、俺の理性など一発KOだ。


 瑞々みずみずしくも、肉感たっぷりの大きな胸がはずむ度、水着からこぼれ落ちそうになる。

 その巨大さにも関わらず、形は一切、崩れてはいない。


 更に俺の記憶には、その先端にある――ぷっくりと膨らんだ綺麗な薄桜色の――それがしっかりと残っている。


 ――不味いな。


 今までは何とか我慢していたが、彼氏という免罪符めんざいふを得た以上、思春期真っ只中にいる俺はどうにかなってしまいそうだ。


 ――仕方が無い。


「莉乃……綺麗だ。その瞳も、その髪も、その唇も――全部」


 俺は浴槽から身を乗り出し、彼女の手をつかんで、顔を引き寄せた。

 目と目が合う……莉乃の大きく澄んだ瞳に――俺の顔が映る。


「はわわわわっ!」


「キスしてもいいか? その胸を好きにしても、いいんだよな?」


 甘くささやくように告げる俺の言葉に、


「は、はひ! ど、どうぞっ」


 莉乃は目をつぶる。


 ――チョロいな。


「リノ、罠だ! だまされている――ダメだ、聞いちゃいない……」


 と雛子――俺はつかんでいた莉乃の手を離す。

 そして、今度は油断している雛子の手を取った。


 雛子を対莉乃用の盾代わりとして、風呂場を脱出する。


「おい、兄さん! これでは兄さんの機動兵器が見えないぞ!」


 ――見えなくていいんだよ……後、兵器とか言うな!


 そこまで、立派じゃない。


「ユ、ユーキくん……まだですか?」


 とは莉乃。まだ、目をつぶっているようだ。

 そんな訳で――俺は何とか、莉乃と雛子を風呂場に閉じ込める事に成功した。


 ――いや、勿体もったいない事したと思う自分がいるのは何故なぜだ?


 思わず、床を叩いてしまった。


「くっ、負けた気がする!」


 同時に着替えが無い事にも気が付く――いったい、何処どこに?

 いや、考えるまでもない。


「おい、雛子! 俺の着替えが無いんだが⁉」


 タオルもだ。


「フッフッフッ――戦いとは二手三手先を読むモノだと教えたはずだ……兄さん!」


 いや、教わった記憶は一切無いのだが……相手をするのも面倒だな。

 取りえず、部屋に戻ろう。


「ユーキくん、ひどいです! だましましたね」


 と莉乃。先にめたのはそっちだと思うのだが――この場合、俺が悪いのだろうか?


 雛子は兎も角、莉乃のパワーを相手に、いつまでも風呂のドアを押さえてはいられない。


「嘘は言ってない……莉乃は綺麗だ!」


「はうっ! えへへ♥ 嬉しいですね」


「おい、リノ――しっかりしろ!……弾幕薄いぞ! 何やってる!」


 ――さて、今の内にサッサと部屋に戻ろう。


 莉乃のトップスピードは俺より上だが、スタートダッシュは俺の方が早い。

 俺は駆け足で廊下へと出る。


 ――ドン!


 誰かにぶつかった。


「痛っ」「きゃっ!」


 この声は――真夏⁉ 訳が分からない。

 きたえている俺は、彼女を突き飛ばす形になってしまったようだ。


 真夏は見事に尻餅をついている。

 その姿は、何故か魔法少女だ。


 足を開いているため、下着がもろに見えてしまっている。


 ――何だろう? この罪悪感。


「あらあら♥」


 とは白雪さん。 何故、貴女まで⁉

 脳の処理が追いつかない。


「いてててて……」


「すまない……真由、大丈夫か?」


 反射的に手を貸すのは、俺の悪い癖だろう。


「うん、大丈夫――って、何故なぜ……裸!」


 しまった。そうだった!――隠そうにも、隠すモノがない。

 慌てて逃げようとして、俺は足をすべらせる。


 原因は俺がれていた事と真由が手を離さなかった事だ。

 何故なぜか、すごい見られている気がする。


「痛っ」「きゃっ!」


 再び同じような事に――いや、今回は裸の俺に真夏がおおかぶさる形になってしまった。


「あらあら♥」


 と白雪さん。見ないで欲しい。


「あーっ! ユーキくん……マ、マユちゃんと――」


 莉乃が風呂場から出てきてしまった。

 これ、怒ってる奴ですね……はい。


「兄さん! 昼間から大胆だな」


 ――雛子よ。お前には言われたくない。


「ユ、ユーキ……ど、ど、ど、退いた方がいいのかな?」


 俺は真夏の手をつかんで動けないようにしていた。

 真夏の方も、退くと言った割には、俺に身体を密着させている気がする。


「いや、今は不味い――白雪さん……な、何か隠す物をお願いします!」


「あらあら、あらあら」


 白雪さんは何故なぜか楽しそうだ。


「これが男の子の身体なんだね――どうしよう?」


 そう言っている割に、真夏は全然困っているように見えない。

 むしろ、興奮こうふんしている気がする。


「ユ、ユーキ! 何か固いモノが当たってるよ!」


 と真夏。申し訳ない。男とはそういう生き物なんだ。


「気の所為せいだ!」


 後でいくらでも謝るので、そういう事は言わないで欲しい。

 莉乃と雛子が聞いているのだ。


 それにしても、真夏は柔らかくていい匂いがするし、莉乃の水着姿も下からみるとすごい事になっている。


 おっぱいで莉乃の顔が見えない。

 雛子はいつも、こんな景色を見ているのだろうか?


「ちょっと、ユーキくん! マユちゃんも、早く退いてください!」


 莉乃はその場で屈むと、真夏につかみ掛かる。


 そんなところで、そんな姿勢を取られると――ホント、俺が困る事になるので止めてください。


 莉乃は何故なぜか、俺の頭を挟むように足を置き、しゃがんだのだ。


「いや、待ってくれ! 今、真由を退かすと……見えるだろ」


「見せてください!――いえ、彼女なので……むしろ、見ておくべきです!」


 そういうモノなのか? いや、それより――今は目の前にあるお尻を退けて欲しい。


「ユーキ、更に固くなってないかい?」


 と真夏。そりゃ、この状況なら仕方がない。

 それよりも、その台詞に一番反応したのは雛子だ。


「何、兄さん! あたしは見たいぞ! 見せろ!」


 ――本気か……コイツ!


 雛子は真夏の背後を取ると、スカートをめくろうと手を掛ける。


「ちょ、ヒナコちゃん……待って」


 と真夏。俺が手をつかんで押さえているから、スカートを押さえる事が出来ないのか⁉


 しかし――今、手を離すと莉乃のお尻が降ってきそうだ。


「あらあら、ダメよ」


 どうやら、白雪さんが間に合ったようだ。


「むー」


 と雛子。恐らく、白雪さんに持ち上げられ、スカートをめくる事が出来なくなったようだ。


 そして――白雪さんは俺にタオルを渡してくれた。

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