第40話 わたしの今までしてきた事は……
「立ってないで、ここ座れよぉ」
とお姉ちゃん。畳をバンバン叩きます。
これでは、寝ている二人が起きてしまいますし、他のお客さんにも迷惑です。
仕方がありません。素直に言う事を
「ありがとね。リノちゃん」
とはサクヤさんです。
――はひ? 急に何の事でしょう。
「私の弟と妹を好きになってくれて――」
「い、いえいえ……お二人の方が、わたしに良くしてくれて――
やはり、サクヤさんはユーキくんのお姉さんですね。
こういう事を言えてしまうところが素敵です。それに比べて、家の姉は――
「アッハッハ、莉乃を騙した甲斐があったってモノよねぇ」
と楽しそうに――ん? 騙した……何の事でしょうか?
詳しく聞く必要がありそうですね。
「ユッキーが女性に興味無い訳ないじゃん……」
そう言って、お姉ちゃんがわたしの肩に手を置きました。
「リノに迫られて、顔を真っ赤にしながら冷静を装うユッキー、さぞ可愛かったでしょうね! ちきしょー! わたしも見たかった……」
「んん?」
どういう訳か、サクヤさんが頭を抱えています。
「だーかーらぁ、嘘よ、う・そ! ユッキーがアニメオタク? アッハッハ、今時、ゲームやアニメなんて、見てない人間の方がレアでしょ」
お姉ちゃんはそう言うと、今度はバンバンとわたしの肩を叩きます。
痛いですが、少し我慢しましょう。
わたしは我慢の出来る子ですから――でも、後で覚えておいてくださいね。
「それがさぁ、わたしの嘘、信じちゃって……一緒にお風呂に入ろうとしたんですって⁉ それに一緒の部屋で寝てって――普通しないでしょ? ウチの妹、頭、可笑しいんですけど」
ヒャッヒャッヒャ――どうやらツボに嵌まったらしく、変な笑い方をされました。
寝たのは一緒のベッドですが、そこは訂正しない方が良さそうですね。
ユーキくんに言われて、学習しました。
それより、お姉ちゃんに頭を可笑しいと言われるのは我慢なりません。
しかし、今は確認しなければならない事があります。
「あの……それは、ユーキくんはアニメオタクでは無く、女性に興味が無いというのも『嘘』という事でしょうか?」
「だから、そう言ってるでしょ……あ、にゃん☆」
とお姉ちゃん。急にキャラを思い出したようで、語尾に『にゃん』と付けたのが余計に腹立たしいですね。
今なら素手でリンゴジュースを作る事も可能ですが、その頭で試してもいいでしょうか?
いえ、落ち着きましょう――わたし。
――殺るのはいつでも出来ます。
それよりも――
「あれ? では、わたしの今までしてきた事は……」
お風呂で背中を流そうとしたり、下着を一緒に買いに行ったり、一緒のベッドで寝たり――
――み、み、み、水着を選んで貰うのはセーフでしょうか?
前者に比べれば、大した事は無い
彼氏でもない男の子に、普通、お願いしません。
「
クックック――とお姉ちゃん。笑いを
――はう~! 穴があったら入りたいです……いえ、その穴にお姉ちゃんを埋めるのが先ですね!
「ニャッハッハ――もうダメにゃん。お腹痛いにゃ……あれだけ男の人が嫌とか言っておいて、自分はその『おっぱい』で誘惑するとか、ウケるにゃ~☆」
――トスンッ。
サクヤさんがお姉ちゃんの背後に回り込み、手刀で仕留めてくれました。
お姉ちゃんはそのまま白目を向いて倒れます。
「ま、気にしなくていいわよ。勇希には責任取らせるから――って、リノちゃん……聞いてる?」
――はわわわわーっ!
ど、ど、ど、どうしましょう! わたしは痴女の変態女で、その上、ユーキくんを困らせていました。
更に、先程は男の子のアレを立たせて喜ぶとか――だ、誰か……お願いです。
――わたしを殺してください!
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