処方2.イベント追加しておきますね。

第18話 恋人同士に見えますか?


 ――バタンッ。


「ヒ、ヒナコちゃん!」


 わたしは階段を駆け上がると、二階のヒナコちゃんの部屋のドアを勢いよく開けました。


「うわっ! ビックリするな――もうっ! 兄さんからのメールを読んでいなかったら、ショック死していたぞ……」


 本来なら――す、すみません――と謝っていたのでしょうが、今のわたしにはそんな余裕はありません。


 予想通り、ベッドの上でゴロゴロしている女の子目掛けて、思わずダイブしてしました。


 ぎゃーっ――と驚くヒナコちゃん。ユーキくんが居ない所為せいでしょうか、折角の長くて綺麗な髪が、今は『お化け』のようです。


「ヒナコちゃぁぁぁん!」


 わたしは抱き着きました。

 ヒナコちゃんの着ているシャツには『常に自分最優先』と書かれてあります。


「ああ、もうっ――あたしは未来の猫型ロボットではないぞ!」


 怒られてしまいました。


「ヒナコちゃん――くすんっ……」


「まったく……」


 そう言って、ヒナコちゃんはわたしの頭を優しく撫でてくれました。

 これでは、どっちがお姉さんか分かりません。


「取り敢えず、どうやって入ってきた?」


 わたしが少し落ち着いたので、ヒナコちゃんはたずねます。


「ユーキくんから合鍵を貰っています。ヒナコちゃんはいずれ変死体で見付かるかも知れないから、持っていて欲しいと頼まれました」


 秋瀬宅のカギを見せます。


「よし、寄越せ! 後で兄さんに裸で抱き着いてやる」


「ダメです! 猶更なおさら、渡せません!」


 ヒナコちゃんが手を伸ばしたので、わたしは素早くポケットにカギを仕舞いました。


「――チッ」


「わたしがしたいくらしです……」


「何だって?」


「……失礼、かみまみた」


「違う、わざとだ! ――で、何があった?」


「ううっ、聞いてください!」


 わたしが顔を上げると、


「いや、聞きたくない」


 明らかに嫌そうな顔をします。ここは好物で釣るとしましょう。


「そんなこと言わないで、聞いてください! ドーナツ上げますから……」


「いや、あたし、ドーナツ好きじゃないし……食べるの下手でベトベトするから、いつも兄さんが切って、食べさせてくれるし――」


「う、うらやましいです」


 流石はヒナコちゃんです。わたしの一枚も二枚も上を行っています。


「ふふん、あたしくらい生活能力がなければ当然の結果だな――お前もダメ人間にしてやろうか? あたしはキメ顔でそう言った」


「――それは遠慮します」


 これでは、ユーキくんも苦労が絶えませんね。


「で、兄さんと何があった?」


 驚きです。


「な、何故、ユーキくんが原因だと! ヒナコちゃんは何でも知っていますね」


「何でもは知らない、知っていることだけ」


「それでも凄いです。小学生だけあって、実は美少女探偵団の団長なのですか?」


「いや、中学生――何でもない! ……くすんっ」


 おっと失言でした。


「えっと……な、何かゴメンなさい」


 謝っておきましょう。


「フンっ……で、何だ。学校で何があった?」


「そ、そこまでご存じでしたか――じ、実は……付き合おうって」


「何⁉」


 驚くのも無理はありません。ユーキくんは超が付く程カッコイイので、ヒナコちゃんにとっても自慢のお兄さんの筈です。


 わたしなんかでは、釣り合わないでしょう。

 言葉を選ぶべきでしたか? ですが、わたしにも余裕はありません。


「い、いえいえ――付き合うフリ――だったのですが……」


 と正直に告げます。


「いや、あたしが驚いたのは――まだ付き合っていなかった事に――だ」


「え、恋人同士に見えますか? 嬉しいです! えへへ♥」


 ユーキくんの妹同然であるヒナコちゃんから恋人公認とは、問題が一つ解決しました。


「何か腹立つが……まぁいい――つまり、学校でリノがやらかしたので、そのフォローとして恋人同士のフリをすれば丸く収まる――という事までは理解した」 


 そこまでお見通しとは――

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