第6話 裏切ったな!
「兄さんっ――裏切ったな……あたしの気持ちを裏切ったな!」
どういう意味か分からないが、リビングに来るなり、雛子はお
いや、春野さんを紹介した辺りからか……。
「まぁ、落ち着け。理由を聞こう」
「ふざけるな! こんな『おっぱい』ぽよんぽよんな人間と一緒に飯が食えるか!」
なるほど、『おっぱい』に対して、何か
まぁ、雛子はお世辞にも発育がいいとは言えない。
胸が小さいことがコンプレックスだったのだろう。
それが、このタイミングで爆発したと考えるべきだ。
「歯ぁ食いしばれ! こんなお胸、修正してやる!」
――これが若さか……。
「ひぃっ」
女性に対し、こういうことをするのは罪悪感があるが、仕方が無い。
――流石に修正されるのは困る。
まずは『おっぱい』が敵ではないことを教える必要があるな。
「春野さん、悪いけど、こいつに『おっぱい』を触らせてやってくれないか?」
「え、ヒナコちゃんに?」
「離せっ、兄さん! こんなモノを触ったら、あたしのSAN値が下がる」
もう十分下がっている気もするが――どうやら、巨乳を邪神か何かと勘違いしているようだ。
「大丈夫だ――ボク悪い『おっぱい』じゃないよ――ほら、春野さん、早く!」
春野さんの『おっぱい』がボクっ
「は、はい……分かりました。えいっ!」
――ぽむん。
雛子の顔を『おっぱい』で挟む。
最初は暴れていた雛子だが、やがて大人しくなった。
そして、両手で『おっぱい』掴み――ふゆんふゆん――と揺らす。
「ぷはっ」
苦しかったのか、顔を上げ、呼吸を整えると、
「愉悦っ」
と一言。どうやら、敵ではないことを理解したようだ。
俺は雛子を開放する。
「兄さん、あたしは間違っていたようだ」
――ぽよんぽよん。
「そうか……」
――ふにゅんふにゅん。
「あ、あのー」
と春野さん。何か言い
――ぷるるんるん。
「いい加減にしろ!」
俺は雛子を春野さんから引き離した。
どうやら、『おっぱい』の重力から魂が解放され、『乳タイプ』になったようだ。
「おおっ、すまない。我を忘れていた」
「い、いえ、そのー、仲良くしてくれますか?」
そう言って春野さんは両手を膝に置き、屈む。
――たゆん。
大きい胸は伊達じゃない!
自覚はしてないのだろうが、そういう姿勢をとると余計に大きく見える。
「ふんっ、べ、別に仲良くしないとは言っていないぞ」
雛子はそっぽを向いた――素直ではない――俺は苦笑すると、
「人見知りな所があるだけで、悪い奴じゃない。俺からも頼むよ」
と頭を下げた。
「はわわわっ、大丈夫です。ヒナコちゃんみたいな可愛い
どうやら、ファーストコンタクトは無事済んだようだ。
一先ず安心――といった所だろう。
「夕飯の準備をするから、二人でゲームでもして、待っていてくれ」
「あ、あのぉ……それでしたら、わたしも――」
「疲れているところ悪いけど、雛子の相手を頼むよ」
手伝おう――としてくれた春野さんに俺は耳打ちをする。
春野さんは少し考えた後、
「分かりました」
と返事をしてくれた。どうやら、俺の意図を汲み取ってくれたようだ。
雛子はもう少し、他人と関わった方がいい。
「さてと――」
俺はそう言ってエプロンを身に着ける。
どうやら、春野さんのキャリーケースには、大量の野菜が入っていたようだ。
――新ジャガ、新玉ねぎ、大根……春ニンジン?
実家で採れた野菜だろう。
――
野菜なら、別に東京でも買えると思うが、
(料理の写真を撮って、手紙を書いて送るか……)
さて、夕飯だが――この材料だと無難なのは『カレー』か……。
しかし、好みが分かれる。
姉さんは外食も多いので、舌が肥えているし、雛子は辛いのが苦手だ。
最近は野菜の切り方一つとってもうるさい。
しかし、『カレー』だと野菜も食べてくれるというメリットも――
いや、『肉じゃが』を作ってから『カレー』に変化させるという流れも……。
いやいやいや――そもそも、春野さんがいる。
安全策で、今日は『シチュー』と『サラダ』を作ろう。
新玉ねぎと春ニンジンもあることだし、ポテトサラダがいいだろう。
明日の昼は外で食べる予定だから、雛子はファミレスがいいと言うだろう。
朝は和食にして、野菜は『味噌汁』と『漬物』に使うとするか。
春野さんの好みも知っておきたい。色々と聞いておこう。
後は『コロッケ』を作って冷凍して、残りは『おでん』にするか……。
『おでん』は冬のイメージだが、俺は季節の変わり目に食べたくなる。
冬は鍋など作ることが多いから、逆に『おでん』は食べないのだ。
今日は下準備を済ませて、明日の夕飯だな――
などと考えていると、二人の楽しそうな声が聞こえてきた。
「遊びでやってんじゃないんだよ!」
▼ ▽ ▼
――翌日。
秋瀬家から俺たちが出て来ると、
「ヒナコちゃん、おはよう」
と春野さん。どうやら、玄関先で待ってくれていたようだ。
「うむ、昨日振りだな」
とは雛子――偉そうに……。
(着替えを手伝い、髪をツインテールに結ってやったのは俺なんだが……)
戦闘服と称して、黒いワンピースを所望したので準備してやった。
だが、まだ三月とはいえ、今日は天気がいい。その恰好では暑いだろう。
「こら、ちゃんと挨拶しろ」
「ふんっ、お、おはよう」
ぎこちないが――まぁ、いいだろう。春野さんは笑う。
「じゃあ、行こうか?」「はい」
俺が促すと、春野さんは雛子の手を取ってくれた。
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