第4話 いや、魔王でした。
「え⁉ 美しいお姉様、結婚してくださいですって!」
「いや、まったくもって言っていない……
俺はタップアウトする。家に帰るなりこの仕打ちとは……。
悪魔――いや、姉の『
「だ、大丈夫ですか?」
姉から解放されたがダメージが抜け切らず、膝を折り、床に手を突く俺を心配して、春野さんが寄り添ってくれる。
――天使か⁉
そして、俺の目の前で大きな膨らみが二つ揺れている。
――たゆんたゆん。
「ありがとうございます――いや、違った。いつもの事だよ……まぁ、大丈夫かと聞かれると、あまりだ丈夫じゃないけどね――主に姉の頭の中が……」
俺は心配してくれた春野さんに、そう返した。
「ちょっと、リノちゃん。そこを退いてくれるかな? 今からその愚弟に『地上に舞い降りた美しき女神の一撃』を食らわせるから――」
――早い話が『飛び蹴り』である。
この姉は可愛い弟に異世界転生でもさせる気なのだろうか?
意味は理解出来ていないだろうが、何やら危険な雰囲気を感じ取ったのだろう。
春野さんは俺を守るように抱き締めてくれる。
――ふにゅん。
弾力があり、心地良い柔らかさの双丘が俺を包み込む。
恐らく、俺が今まで、姉に
――もう、ゴールしてもいいよね。
「ダ、ダメです!
春野さんが姉に言い返す。
(何だか、もう少し頑張れそうな気がしてきた……)
「もう、嫌ねぇ……
――悪魔め!
どうやら本性を現したようだ。
「ただ弟は姉の言う事を聞いていればいい。姉を
――いや、魔王でした。
「そ、そんな! ひ、酷いです!」
春野さんが姉を
「いや、もういいんだ」
そう言って、立ち上がる。『おっぱい』で大分回復出来た。
男って単純だね――いや、あれ以上接触していると別の個所が元気になりそうだ。
「ユーキくん! 大丈夫ですか?」
「ああ、話が進まないからね」
俺は春野さんを心配させまいと笑顔を作る。
それに、早く話を切り上げるのが正解だろう。
「あら、まだ姉に逆らうと言うの? ならば、真の恐怖とやらを教えて上げましょう」
ノリノリだな――いや、そういう話では無かった筈だ。
(
仕方が無い。このままでは収拾つかない。
「いいから、ふざけていると『夕飯』作らないよ」
俺の言葉に、
「うん、お姉ちゃん良い子にする。だから、夕飯作ってね♥」
直ぐ様、ちょこんとソファーへ座る。
――何て切り替えの早さだ。
春野さんも驚き、言葉が見付からない様子だった。
身内の恥とは――こうも恐ろしいモノだったのか――という事を改めて実感する。
俺は春野さんの手を引き、姉と向かい合うように腰掛けた。
そもそもの始まりは、家に帰り、姉を問い詰めたことに起因する。
「急な話で、まだ少し混乱しているけど――春野さんが今日からここで暮らす――というのは本当なの?」
「本当よ。リノちゃんがイジメられてるって相談を受けて――だったら、ここで暮らせば――って提案したの。勇希が驚く顔が見たくて、お姉ちゃん、内緒にしてたの♪(てへっ☆)」
――腹立たしい――いや、それよりも、
「イジメって――」
聞いていいモノなのだろうか……俺が
「お、お恥ずかしながら……わたし――」
「地元でアイドル活動していたのよね!」
春野さんの言葉を
「お祭りなんかのイベントで歌ったり、野菜が良く育つからって、畑に歌を流されたり――そりゃ、同年代の連中には
「う~(////)」
――『ローカルアイドル』というヤツだろうか?
話の雰囲気から、あまり本格的なことはしていなさそうだ。
あはは――と笑う姉に対し、春野さんは色々と思い出したのか、恥ずかしさから両手で顔を覆った。
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