7.瞬間

 嫌な予感がしたシエロは、群衆をかき分け、列の最前線へ移動した。

 中心をみて目を見開いた。

 ベベルを連行した集団がそこにいた。

「本日、本刻より森に棲まう悪きし魔女の処刑を執り行う!!

 我々に死の病をもたらした魔女を火刑に処し、我々は神の御導きによってこの忌まわしき病から解放されるのだ!」

 歓声を上げる村人。


 シエロはシスターを見つけ、大急ぎで駆け寄った。

「シスター!今すぐやめてください。あの人は何も悪いことはしてません。病とも関係ありません」

「私に処刑を中止する権利なんてあると思う?」

 シスターは全く取り合おうとしない。最悪だ。


 シエロは執行人に駆け寄った。

「やめてください!そんなことをしても病はなくなりません!」

「ふむ。それなら、焼いてみればわかる」

 頭に血が上った。ふざけるな。

「最低の愚か者!」

 鞄の中に入れていた斧に手を取り、思いきり執行人めがけて投げつけた。

 斧は執行人のすぐ脇にある丸太に突き刺さる。


「この子供めぇええええ!!」

 怒りで顔を真っ赤にした執行人は、思いきりシエロを殴りつけた。

 シエロの体は殴られた反動で吹き飛び、地面に打ち付けられる。

 イグニスが毛を逆立てて執行人の男をにらみつけ、とびかかった。

 ベベルが執行人に叫ぶ。

「やめて!恐れている魔女との約束を守れないの?」

 ベベルはシエロに駆け寄り、心配そうに顔を撫でると言った。


「きっと、いつかまたどこかで会えるわ」


 瞬間後ろから腕を引っ張られ処刑台へ連れられて行った。

 シエロはすぐに立ち上がると、肩をつかんで止められた。

「―――!」

 父だった。

「こっちに来なさい。見てはいけない」

 父の手を思いきり振り払う。

「離してよ!卑怯者!」

「――――――!!」





 まもなくして、ベベルさんは火にかけられた。





 ***


 火の粉が舞い散る風景を、群衆の中から少女が眺めている。

 毛足の長い黒猫を、胸に抱えている。

 一筋の涙が頬を伝い、

 それから、決意を胸に誓うと、


 黒猫と共に村から姿を消した。

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