8.農夫

 魔女が処刑されてから半年がたったが、

 いまだに死の病は蔓延し続け、村人を苦しめていた。



 夕刻、フロイデ村の中心広場

 今日は村で厄払いの祭りが行われている。

 そろそろ祭りのメインとなるパレードが行われようとしていた。

 農夫のハンスとダニーは自分の子供がパレードに参加するため、エール片手に村の雰囲気に酔いしれていた。


「今日は子供たちの晴れ舞台だ。

 村人みんなに見てもらうことができるって、うちの子達も大はしゃぎでね」

「ああ。今日は最高の日にしよう。しっかり見てやらないとな」

 二人は嬉しそうに笑った。


 パレードに参加した子供たちが、シスターに連れられ、ちょうど村の南門辺りを行進し始めた。

 パレードは村の南門から始まり、中央通りを通って村の北部にあるメンダキウムの森の入り口まで進行する決まりとなっている。

 村人たちは目を輝かせ、パレードが自分の家の近くを通る瞬間を待っている、今この瞬間も楽しみで仕方がない様子であった。

 農民の生活は決して豊かではないが、今日はその貧しさをすべて忘れて、幸せな気分になれる。そんな特別な日だった。

 思い思いに精一杯着飾って、今日一日を存分に楽しむつもりである、そういう顔をしている。


 ふと、尖った帽子を目深に被った少女が群衆を縫うようにして中央広場に抜けていった。毛足の長い黒猫が後を追う。

 祭りの催しが何かあるのだろうか。


 夕刻の広場は黄昏時の夕日に照らされ、幻想的な雰囲気に包み込まれていた。

 ハンスとダニーの家は隣同士だったので、机やいすを家の外に出し、司祭から村人全員に振舞われたパンを片手にエールをあおりながら、最高の気分に酔いしれていた。

 パレードの最高潮となる村の中央広場では、今か今かと大勢の村人たちが目を輝かせている。

 いよいよ村の中央通りからパレードの子供たちの姿が見え始めた。

 中にはまだ小さい子供もおり、そのおぼつかない足取りでよちよちと歩く姿がとても愛らしく、よろけるたびに近くにいた村人たちが慌てる様子がなんともほほえましい。

 ほどなくして中央広場にパレードが足を踏み入れた。

 歓声を上げる村人たち。

 まるで戦果を挙げた騎士たちの凱旋を観ているようだ。

 その時だった。


 誰かが木の棒で地面を打ち付けた。

 すると村人たちの頭上で、不思議な模様のようなものが発光した。

「なんだありゃ?」

「何だろうねぇ。でも綺麗だわ」

 きら、きらとゆっくり輝く不思議な現象に村人たちは目を丸くしたが、日が沈み始めた空の朱色に相まって、より一層幻想的な雰囲気に広場が包まれた。


 突然、パレードの子供が悲鳴を上げた。


「あつい!いたい!なにこれなにこああああああああああ」

 和やかな雰囲気が一転、戦慄が走る。いったい何が起こったのか誰もわからない。

 村人たちはパニックになった。

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