第2話 

2019年4月 学校に入学した。

私なんかが勉強についていけるわけがない。失敗した。


5月 やはり失敗だ。学校に進学することなく仕事にすすむべきだった。後悔している。


母は、正看護師というのになるために進学したことがあると言っていた。

現実的な話、授業料がとても安いため、日中働きながら夜間学校で資格取得のため通うことになったと。

順を追って言うと高校卒業後、准看護師になるために専門学校に入学。その後この学校に入学したと言うのだ。かなり複雑な話、母はこの時期の話をしたがらない。母曰く、この時期にこれから人生に関わる大きな変化があったらしい。


12月 進級が決まった。辞め時を見失った。


8月 辞めたい。死にたい。


その後はほとんどその言葉で埋め尽くされていた。

毎日睡眠時間が3時間ほどしかなく、体にも負担がかかっていたようだった。

母は生きづらさの他に感じていたものを見つけた。

HSP、ハイリー・センシティブ・パーソン。

高度に敏感な人。時に繊細な人と訳されるらしい。

HSP関連の本が母の本棚には複数並んでいた。

“気づきすぎて疲れる”や“感覚が敏感”など母の話を含め知ったことがある。

忙しすぎるが故、落ち着いて自分の時間を取ることができず、リラックスできる時間がなかったことが、精神を病むことを助長させたのではないだろうか。


授業の内容はどんどん難しくなり、母は勉強についていくことが困難になり、2年の終わりとともに退学し、区切りをつけた。


その後の日記には、死にたいと書かれることが少なくなり、明るい日々を送ったように見える。


6月 よく眠れるようになった。明日はゲームをやりたい。


今日はここで辞めておこう。母の知らなかった過去を知った一日だった。

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