第8話 妹戦争勃発!?
午前中の授業が終わり、昼休みを迎えたので昼飯の準備をする。
すると直哉と凛が俺の所へとやってきた。
まあ互いに予定がない限りは、大体この3人で飯を食っているんだけどな。
そして、直哉と凛も近くの席を借りて俺の席に付けたりと、昼の準備をしている所に・・・
ガラッ!
と、教室のドアが開いた。
教室の外から開けられたので、誰が来たのかを確認しようと目を向けると。
そこには穂香がいた・・・
俺は1年の頃は穂香の存在を知らなかったのだが、穂香は入学当初からずっと可愛いと噂されていて、凄い人気があったらしい。
そんな穂香がこのクラスに顔を出したのだから、クラス中がザワッとざわついて彼女に注目する。
「あれ?五十嵐さんじゃない?誰かに用事でもあるのかなぁ?」
「おお!本当だ!きっと、俺だ!俺に用があるに違いない!!」
凛と直哉も例にもれず穂香に注目しているようだ。
しかも、直哉はとち狂った事言ってやがるし。
てか、そうか。
そういや穂香とはクラスが違うから、穂香の今の苗字が五十嵐ではない事を2人は知らないんだったな。
「いや、絶対に高橋君には用事がないって断言するよ・・・」
「なんでだよ!そんなのわからんだろが!!」
凛の言う通り、穂香が直哉に用があるという事は皆無だろう。
・・・っていうか、そんな事よりも。
なぜ俺の教室に!?
と、一人焦っていたのだが・・・
「あの、白川さんは居ますか?」
と、穂香は近くにいた女子に声をかけていた。
あ、ああ・・・
そういや美咲も同じクラスだったな。
ちなみに美咲も穂香に負けず劣らず美人なため、一説によれば2人が一緒にいると男子禁制の神聖な
知らんけど・・・
じゃあ、今年に入ってから2人と一緒に登校している俺は?と思っていた事があるが、どうやら俺は・・・
陰で男子に藁人形を打たれているとかいないとか・・・
こわっ!!
と、まあそんな事はどうでもいいが・・・
とりあえず穂香は、美咲と一緒に昼を取ろうと思って誘いに来たようだ。
そう安心していると・・・
穂香と目が合った。
それが運の付きでした・・・
「あ、兄さん!」
『・・・はああああああ!?に、兄さん!?』
あまりの驚きに、クラス中の声がハモる。
あ、これ絶対めんどくさくなるやつ・・・
クラス中の視線が俺と穂香を往復しながら、あちこちにクエスチョンマークが飛び交っているし。
そんな中、穂香はクラスの連中を気にする事もなく、こちらにやってくる。
「兄さん、丁度良かった。一緒にお昼しましょう?」
「え?俺!?美咲を誘いに来たんじゃなかったのか?」
「うん、それも目的の1つだけど、兄さんは美咲と同じクラスだから一緒に誘うつもりだったの」
「え?なんで!?今まではそんな事なかったのに」
「ちょっと私も思う所があって・・・兄さんとの関係を黙っているのはやめにしたの」
「そ、そうか・・・」
色々と疑問が尽きない所だが、なんか決意を持った目で押し切られてしまっては二の句が告げない。
つーか、朝の別れ際に言っていた「また後で」って、放課後の事じゃなくてこの事だったのかよ!
俺と穂香がそんな会話をしている中、直哉と凛は目を点にして放心状態のまま眺めていた。
そして、凛が急にハッと覚醒する。
「ちょ、ちょっと、ゆっちゃん!?え?何!?どういう事!?意味わかんないんだけど!?美女との禁断の兄妹プレイ!?」
あまりに焦り過ぎて、訳の分からない事をのたまいだした。
まあ確かに、今まで校内で接点のなかった同学年の穂香が、俺の事を兄さんとか言ったらわけわからんわな。
穂香も、えっ?という顔を見せたものの、とりあえず大人しく俺と凛のやり取りを傍観する事にしたようだ。
「プレイとか言うなや・・・はあ、まあ隠していたわけじゃないんだが、色々思う所があって今まで黙ってたんだけど・・・今の穂香は完全に俺の妹なんだよ」
「ええ!?何それ!?私の妹ポジションを奪われた!?」
「いや、ポジションとか言うなや・・・戸籍上では穂香は妹なんだよ」
「え?それ、どういう事!?生き別れた双子の妹が現れたとか、そういう設定!?」
「だから、設定とか言うなっつーの!俺の妄想じゃないんだって!現実なの!凛もちゃんと現実を直視して!」
「だって、言っている意味が解らなさすぎるんだもん!ゆっちゃんの妄想って言われた方が、よっぽど合点がいくんだもん!」
いや、俺を何だと思ってんの??
確かに、俺もめんどくさがって説明を
つーか、そもそも俺の妄想だったら・・・
穂香も俺の事を兄さんなんていう訳ないだろうが・・・
「はあ、簡単に言うとだな・・・俺の親父の再婚相手が穂香の母親だったってわけ。だから穂香の今の苗字は、五十嵐じゃなくて桜井なんだよ」
「えっ?あっ・・・そ、そうだったんだ・・・そっかぁ・・・じゃあ、こう言っていいのかわからないけど・・・ゆっちゃん、よかったね」
凛や直哉だけでなく俺の友人達は大体皆、俺が片親だという事は知っている。
ただ、俺の境遇など経験した事のない彼女達は、こんな時に何て声をかけていいのかわかるはずもない。
俺達の関係を今まで黙っていたのも、変な目で見られるかもという懸念もあるが、その辺を考慮してでもあった。
とはいえ、穂香の場合は苗字が変わってしまったのだから、周りには親が再婚したくらいは言わないといけなかったのだが。
さすがに、兄妹が出来たという事までは言っていなかったのだ。
まあ何にしても・・・
だからこそ凛も複雑な思いの中、慎重に言葉を選んでどういったら良いのか迷ったようだ。
そんな凛の言葉は間違ってないのだと安心させるべく、俺は・・・
「ああ、ありがとう。凛の言う通り、本当によかったよ」
そう言って、笑顔を見せた。
それを見た凛も、安心して笑顔を見せていた。
のだが・・・
凛は再び、急にハッとすると。
「えっ!?ちょっと待って!?じゃあ、やっぱり私の最大の危機じゃない!?本物の妹なんて現れたりしたら、私の妹ポジションなんて・・・お役目御免だよね・・・うぅ・・・」
そうわけのわからない事を凛が嘆きウルウルしだすと、思わぬ所から凛の助け船が現れる。
「ふふっ、話の途中にごめんなさい。貴方が(小さくて)可愛いと噂になっていた小坂井さんで間違いないよね?」
「ええ!?こんな美人さんに可愛いって言われちゃったよ!?というか、私って噂になってたの!?」
凛は穂香に可愛いと噂されていると言われ狼狽える。
自分が噂されているという事を知らなかったらしいが、そんな事を言われて素直にハイとは言いにくいのだろう。
穂香と俺を交互に見ながら、俺に確認してくる。
っていうか・・・
「さあ、俺は知らんよ」
俺は自分が接する事で初めて相手を知ろうとするので、噂に流されるつもりはないからさほど興味ない。
なので、噂の事を俺に聞かれても全くわからん。
「ああ、小酒井も1年の頃から噂されてるぞ」
凛に尋ねられた俺が首をひねっていると、直哉がそう答えた。
「ええ!?そうだったの!?なんで教えてくれなかったのぉ!」
「いや、教えた所でなんになるんだよ?」
まあ実際、もし凛がそれを知った所で有頂天になる事はないだろうし、むしろ逆に周りの目を変に気にしてしまう可能性の方が高い。
直哉もそう思って、凛に教える事をしなかったのだろう。
凛もそれがわかるから、「いや、まあ・・・そうだけどさぁ」とブツブツ言うだけで
「ごめんなさい、取り乱しちゃって・・・とりあえず、桜井さん?の言う小坂井かはわからないけど、私が小坂井なのは間違いないです。改めて、私は小坂井凛です」
凛も落ち着きを取り戻すと、放置してしまっていた穂香に向き直って謝り、間違っていない事と改めて自己紹介をしていた。
「そんなにかしこまらなくてもいいよ。じゃあ私も・・・私は桜井穂香。私の事は穂香と呼んでいいからね」
「う、うん!わかったよ、穂香!じゃあ、私の事も凛で構わないよ~!」
やっぱり女の子同士。
あっという間に仲良くなったみたいだな。
「うん、ありがとう。それでね、凛・・・さっき貴方は、私に妹ポジションを奪われたとか、お役御免って言っていたけど・・・」
「う、うん・・・」
「それ、きっと大丈夫よ?」
「えっ!?」
「だって凛達の話からすると、きっと凛は兄さんに妹の様に扱われていたんでしょう?だったらなおの事、兄さんが家族を
「そ、そうなんだ?」
「うん、兄さんの妹である私が保証するから」
「す、凄い自信・・・しかも穂香も、妹である事を完全に受け入れてるんだね?」
「もちろんよ。だって兄さんなのよ?・・・凛も今まで兄さんに対して、妹の様に接してきたならわかるでしょ?」
「・・・うん、その通り・・・その通りだね。だって、ゆっちゃんだもんね♪」
・・・何これ。
俺を目の前にして、俺をそっちのけにして
これ何の羞恥プレイですか?
やめてくれませんかね!?
恥ずかしすぎるんですけど!!
「っていうか、ゆっちゃん?黙ってたって言ってたけど、いつからなの?」
「あ、ああ。今年の春休みの間からだよ」
急に話を振られ、焦りながらも答える。
「そうなんだぁ・・・まだ一カ月くらいしか経ってないのに、こんなに信頼されてるんだぁ!さすがは私の
「・・・ちょっと、凛?あくまでも、私の兄さんなんだからね?」
「ふふ~ん、妹(ポジション)歴は私の方が長いんだよ~」
「そうかもしれないけど、私が本物の妹なの!」
『・・・・・』
ちょっと待って!
急に何!?
俺の妹の立場を争って修羅場ってんの!?
え!?俺って兄として、そんな重要な位置を占めんの!?
いやいや、別に俺なんて大した事ないだろが・・・
と、考えていると・・・
『ぷっ!』
と、二人で噴き出した。
「ふふっ、妹としての先輩、これから宜しくお願いしますね」
「あはっ、妹後輩だね!こちらこそ、よろしくね♪」
・・・どゆこと?
別に修羅場っていたわけじゃないって事?
妹(片方偽物)同士、何か通じる所があったって事?
・・・ってか、妹としての先輩後輩って何だよ!
そんなもんあるのかよ!
ま、まあ、別に喧嘩してたわけじゃなく普通に仲良くなったのであれば、それはそれでいいんだけどさ・・・
俺が心の中で、そう呟いていると・・・
カラッ!
再び教室のドアが開いたと思ったら、そこにいたのは唯でした。
「あ、あれは・・・新入生の中で、めっちゃ可愛いって評判の娘じゃん!」
「ああ、本当だ!」
「でも、何でこの教室に!?・・・はっ!きっと俺に会いに来たんだな!?」
「それは無い無い」
唯を見たクラスの男子達が、再びざわめき出す。
何で直哉といい他の男子といい、自分の事を知らない女子が自分に会いに来たとか言うんだろうな?
てか、唯が穂香の妹だという事までは、うちの男子は知らなかったのか。
ああ、そりゃそうか。
穂香は五十嵐だと思われていたんだもんな。
それに、穂香と一緒に登校しているとわかっている奴がいたとしても、今この場にいる穂香はクラスが違うため、穂香に用があって唯がこのクラスに来るとは思わないか。
と、そんな事を考えていると・・・
教室がざわついている中、俺は唯と目が合いました。
合ってしまったのです・・・
「あ、お兄ちゃ~ん!一緒にお昼食べよう♪」
『はああああああ!?』
俺を見つけた唯は、そう叫んでしまいましたとさ・・・
そして、男子共の怒号が飛び交う・・・
あ、これオワタやつ・・・
何がって、主に俺の人生が・・・
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