第4話 朱美の場合



 今回はシリアスな話です。



――――――――――




 私は良い人達に、本当に恵まれていたと思う。


 私を生んでくれた両親。

 大学で出会った教授とそのご家族。

 私の義理の娘となった穂香と唯。

 そして就職先で出会った桜井係長と義理の息子となった悠希。


 皆、自分の事よりも相手の幸せを願う人たちばかり。


 私は世間的に見ても裕福な家庭に生まれた。

 可愛がられながらも厳しく育てられたため、中学以降は高校も大学も全部女子校に通っていた。


 厳しいとは言っても常識の範疇であり、私自身は厳しいと感じた事はないけど。


 とにかく、そんな中で育った事から男性と接する機会はほとんどなかった。

 中学・高校には男性教師はいたけど、深く関わる事もなかったし。


 そして大学3年の時に専攻したゼミで教授と出会う。


 ゼミでは少ない人数で、そこまで広くはない教室で行っていた。

 だから必然的に教授との距離も近くなる。


 もちろん物理的な距離だけではなく、講義に対して質問する事もたくさんあったし接する機会も多かったという事。


 教授はどんな事を聞いても優しく熱心に教えてくれるし、男性に免疫のなかった私は徐々に惹かれていった。


 年齢が離れている事は全く気にならなかったし、子供がいるという事を知った時も気にならなかった。


 そこで私は、少しずつ教授にアプローチを始める。

 私が作ったお菓子を教授と娘の為にと渡したり、ちゃんとした食事を中々摂れない教授にお弁当を作っていったりと・・・


 ただ一つだけ気がかりな事がある。

 それは子供がいるという事は、結婚して奥様がいらっしゃるだろうという事。


 しかし、教授と色々と話をしていく中で、奥様が早くに亡くなっていたという事を知る。


 私は聞いてはいけない事を聞いてしまったと思ったのと同時に、不謹慎にも私が教授に近づいても問題ない事にほっとする。


 それに、教授は常に忙しそうにしているため、娘達は寂しい思いをしているのでは?とも思った。

 だから、私が奥様の代わり・・・にはならないかもしれないけど、教授と娘の心の隙間を埋めてあげたいと考えるようになった。


 そして、それは私の努力の甲斐もあって実を結ぶ。

 教授が私との関係を、前向きに考えてくれるとの事。


 ただ、教授の娘が私を受けいれる事が条件だと言われた。


 そこで私は教授に機会を作ってもらい、穂香ちゃんと唯ちゃんに会う事にした。


 娘達にとっては私と教授との年齢差もそうだし、何よりも大切な父親が奪われると考えて受け入れられない可能性の方が高い。


 そう覚悟しながら2人と会った時。


「こんにちは、穂香ちゃんと唯ちゃんね?初めまして、私は朱美。瀧本たきもと朱美です。よろしくね」


 私は少しだけ緊張しながら、出来るだけ笑顔で2人に挨拶をした。


「こんにちは、初めまして。私が穂香です・・・」

「こんにちは~、私が唯です・・・」


 2人も素直に挨拶を返してくれたのはいいけど、少しだけ戸惑った様子が見られる。

 だから、私は受け入れられるのは難しいかな?と考えていると・・・


「うわぁ、お父さんに聞いてはいたけど、本当に若くて綺麗な人」

「うん、こんなに若い人が私達のお母さん候補なんだぁ」


 と、2人で顔を見合わせながら話していた。

 これは、受け入れられている・・・のかな?


 そう考える私に、穂香ちゃんが話しかけてくる。


「ねえ、朱美さん?」

「ん?な~に?穂香ちゃん」


「お父さんの事・・・よろしくお願いします!そして・・・嫌でなければ、是非私達のお母さんになって下さい!」

「・・・っ!」


 穂香ちゃんは笑顔で、そして深々と頭を下げながらお願いしてきた。


 お願いしなければならないのは私の方なのに・・・


 拒否されることを覚悟の上で来たのに、笑顔で素直に受け入れられるとは思ってもみなかった。

 だから少しだけウルッときて、声を詰まらせてしまう。


 それが穂香ちゃんと唯ちゃんを不安にさせてしまったようだ。


「だめ・・・ですか?」

「やっぱり私達みたいに大きい子供がいるから・・・だよね」


 そんな事はない!

 そんな顔しないで!


 そう思った私は、勘違いしている事を伝えるべく2人を抱きしめる。


「違うの!そうじゃないのよ!・・・まさか、そんなに簡単に受け入れられるとは思ってなくて・・・嬉くて・・・」


 私が2人の耳元でそう告げると、2人は安堵した様にぼそっと呟く。


「朱美さん・・・」

「そうだったんだぁ・・・よかった」


 そして、安心した彼女達は更に言葉を続ける。


「朱美さん?私もね・・・嬉しいんです。こんなに若くて綺麗なお母さんが出来る事が・・・それにね、朱美さんはまだ若いでしょ?だからお姉さんの様な感じもするし」

「うん、そうだよね。お母さんとお姉さんの感覚を味わえるなんて、朱美さん1人で2度美味しいよね♪」


 穂香ちゃんは自分の素直な気持ちを吐露し、唯ちゃんも少しだけ冗談を交えながら笑顔を見せていた。


 私は2人に受け入れられた事により、それ以降も頻繁に会うようになった。


 ・・・穂香ちゃんも唯ちゃんも、やっぱり寂しかったんだ。


 特に穂香ちゃんは姉という立場であり、甘えられる人がいなかった。

 だから年の近い私に対して、母としてはもちろんの事、姉として甘えたかったのだろう。


 事実、2人はその事を言葉にしなくても、私と会う度に寄り添ってきて甘えてきたのだから間違いないだろう。


 後から聞いた事だけど、私の人柄などは教授から聞いていたし、私が時々渡していたお菓子も喜んでくれていたそうだ。

 その事もあって、私の事をすぐに受け入れてくれたのだとか。


 そんな様子を見て教授は私と籍を入れる事を決断してくれたのである。


 そして籍を入れた私は、穂香と唯の為に少しでも早く一緒いたいと考え、教授の家に住む事にした。


 ただ、私には大学は卒業してほしいという事で、子供を作るのは卒業してからにするとの事。


 その事は少し残念に思いながらも、もし自分に子供が生まれたら・・・

 娘なら穂香と唯がいるし、自分が子供を産むなら息子がいいなと、未来の事を夢に思いを馳せていた。


 そんな事を考えつつ、家に教授がいない中でも穂香と唯は私に懐いていたため、楽しい毎日を過ごす事が出来ていた。


 そんな中で穂香と唯が、優しい兄がいてくれたら私と出会う前を含めて大分違ったんだろうけどね、とたまに本音を話してくれるようにもなっていた。


 それは本当にそう思う。

 教授が忙しい中、彼女達はずっと女性だけの生活をしてきた。


 私という家族が増えても、それは変わらない。

 そこに男の子1人いるだけで、安心感なども含めて大分変っただろう。


 とはいえ、無いものねだりをしても仕方がない。

 だから、私は自分が出来る事を・・・


 彼女達を出来るだけ寂しい思いをさせるつもりはなかった。


 ただ彼女達と生活する中で、そう思っているのは私だけではない事がわかった。


 今まで穂香と唯の世話をしてくれていた家政婦さんや、教授のご家族も皆、穂香と唯を今でも可愛がり大切に思っている。

 そして、その中に後から入って来た私にすら、みんな気にかけてくれていた。


 本当に良い人達ばかり・・・


 こんなに良い毎日を送れるなんて・・・

 私は・・・私達は幸せだ・・・


 ・・・そう思っていたのに。


 教授は出張先の事故に巻き込まれ、帰らぬ人となってしまった。


 私は穂香と唯を連れて急いで教授の元へ向かったのはいいが、動かなくなった教授を見て絶望する。


 私達は何日も悲しみに明け暮れ、絶望に打ちひしがれていた。


 正直、死のうかと思った事も無くはない。

 ・・・でも、そんなのは私のエゴだ。


 そうするにしたって、やるべき事をやってからじゃないと。


 それに、今はそれ以上に考えなければならない事がある。


 それは・・・


 教授のご家族と、穂香・唯の事である。


 教授と籍を入れて、まだ数カ月しか経っていない。

 でも私にも遺産相続が発生する。


 だから、教授の家族からしてもよく思われないだろう。

 遺産相続で揉めるという話は、よく耳にするし。


 ・・・正直、私はそんなものいらない。

 そんなものの為に、教授と結婚したかったわけじゃない。


 そうは思っても、法律上で決められているため避けられない。


 だからこそ困る。

 教授が亡くなって悲しいのに、そんなくだらない事で揉めたくなんかない。


 だから、まずは相続放棄をしよう。

 ・・・そして、穂香と唯。


 今まで父親しかいなかったのに、その大切な父親を私が奪ってしまった。

 私が教授と籍をいれなければ、教授は亡くならなかったかもしれない。


 もちろんこれは、たらればの話ではある。


 でも2人からしてみれば、そう取られたっておかしくはない。


 ・・・彼女達から、そう思われていると考えるといたたまれない。

 だから彼女達とは籍を外して、教授のご家族にお任せしよう。


 そう考えて動き出したのだが・・・


 教授のご家族に、これからの事をお願いすべくお訪ねすると・・・


 ご家族からは、私を責める処か私を労わり励ます言葉しか出てこなかった。


 穂香と唯の事をお願いしようすれば・・・


「まずは2人と話をしてみなさい。穂香と唯を預かるかどうかの話はそれからだ。まあ、結果は決まっているだろうけどね」


 と言われた。


 結果は決まっている?と疑問に思いながらも、私は言われた通りに覚悟を決めて2人と話をする事にした。


 そして穂香と唯に、私が籍を外して教授のご家族にお世話してもらうように伝えると・・・


「・・・そんな・・・嫌だよ!お母さん!!」

「そうだよ!せっかく私達と家族になれたのに・・・」

「穂香・・・唯・・・」


 そう、穂香と唯に泣きつかれてしまった。


「それに・・・それにね?私は朱美さんの事も心配なの・・・私達と別れた後、どこか遠くに行こうとしているよね?」


 私は穂香の言葉を聞いて、ドキッとした。


 先程は、私を母としていなくなることを嫌がっていたが、今は朱美と呼んだ事で私自身を心配してくれている。

 そして穂香は、全てを終えたら教授の元に向かおうかと考えていた私の心を見透かしていたのだろう。


 もちろん、教授の後を追おうかどうかを迷っていた事まではわかっていないと思う。

 でも教授の後を追うにしろ追わないにしろ、どちらにしても穂香と唯の前からは消えるつもりでいた。


 それを感じ取られていたようだ。


「そんな、お母さん・・・朱美さんまでいなくなったら、私達どうすればいいの!?朱美さんはどうなるの!?」


 穂香の言葉を聞いて、唯までもが今後の自分達の事だけでなく、私の事まで心配していた。


 そんな2人を見て、私は自分の浅はかさを恥じた。


 まだ中学生の子供に、不安な気持ちにさせてしまった事。

 そして、まだ中学生の子供なのに、母であり姉でもある私の心配をさせてしまった事。


 どれだけ2人が私という家族の存在を喜んでくれていたのか。

 どれだけ2人が寂しがっていたのか。


 そんな2人を残して、自分だけ消えようなんて虫のいい話だ。


 私は彼女達を心配しているつもりで、結局は自分の事しか考えていなかった事に気づかされた。


 私は2人を抱きしめながら泣いた。


「ごめん・・・ごめんね・・・私は穂香と唯の前から、いなくなったりはしないから」

「本当だね!?お母さん・・・」

「絶対だよ!お母さん!」


「うん、本当に・・・絶対・・・」


 そう言って、3人で抱き合いながら泣いていた。


 教授のご家族は、最初からこうなる事がわかっていたのだろう。


 結果は決まっている・・・

 穂香と唯の気持ちをわかっていれば確かにその通りだ。


 どれだけ私は2人の気持ちを理解していなかったのか。

 私は彼女達を見ているようで見ていなかったという事。


 そう考えた私は、穂香と唯を更に理解するように努力し、彼女達を第一に考える事にした。


 彼女達に寄り添い、一緒に歩んでいく事に決めた。


 だから私は籍をそのままにして、相続する財産も教授のご家族のお勧め通り、彼女達の進学などのために素直に受け取る事にした。

 ただし、本当に必要なこと以外に使う事はしないつもり。


 出来るだけ教授のお金には頼らないで、2人を養っていきたい。


 そう考える私は、大学を卒業すると内定をもらっていた会社に就職をする。


 2人との時間が少し減ってしまうのは心苦しいが、それでも仕事の前後や休みの日は彼女達と出来るだけ顔を合わせ、家の事も出来る限りの事は頑張る気でいた。


 まあ家の事に関しては、私が出来なくても2人は自分達の事は自分達である程度は出来る。

 だから、私だけが頑張らなくてもいいと言ってくれていた。


 その言葉に少しだけ甘え、私は出来る範囲で仕事と家事を頑張っていこうと決意する。


 そして、その就職先で桜井係長と出会う。


 私は彼の部下として、直接仕事を教えてもらう事になった。

 彼は仕事が出来る上、教え方が丁寧で何事も熱心に教えてくれた。


 そうして職場の仲間として距離が近くなってくると、次第にプライベートな話もするようになってくる。

 そこで互いの境遇を知る事になった。


 桜井係長は私の事はもちろん、穂香と唯の事まで心配してくれていた。

 そして、自分の息子にも同じような思いをさせている事の申し訳なさを語ってくれた。


 ただ違うのは、私の子供は娘であり、桜井係長の子供は息子であるという事。


 彼の子供が大丈夫というのであれば、息子の言葉を尊重するというのが彼の信条。

 というのも、男にはプライドというものがあるから、それを傷つけるわけにはいかないとの事。


 私達女性にはわからない感覚ではあるけれど・・・


 もちろん、桜井係長だってほったらかしにするという意味で言っているわけではない。

 出来る限り時間を作って、息子と一緒に過ごしたりはしているようだ。


 ――余談になるけれど、40歳くらいで仕事が出来る桜井係長が課長に上がらないのは、この会社では歩合と達成報酬インセンティブを受けられるのは係長までだから。

 それによっては、課長よりも年収は上になるらしく、息子にはせめてお金の面で苦労をさせたくないという桜井係長の想いがあるからとの事――


 そうして、互いに互いの境遇を同情するようになり、私は彼の息子の心配を・・・

 彼は私と娘の心配を・・・


 その想いが募った頃・・・


 桜井係長から自分の息子をお願いしたいと言われた。

 そして、自分は父親を亡くした穂香と唯のために、父親になるからとも。

 あまり時間は取れないかもしれないが、それでも出来る限りの事はすると。


 桜井係長の事自体、私は尊敬しているし好印象を持っている。

 そんな人から、そう言われてしまっては断る理由がない。


 もちろん私の事も、桜井係長は気遣ってくれていた。


 彼が忙しい中、彼の息子は家の事を何でもやっていたという。

 だからきっと、私の助けにもなってくれると。


 もちろん、桜井係長自身も家の事を出来るだけやっていたそうだが、息子は笑いながら「疲れているだろうから無理しなくていい」と言ってくれていたそうだ。


 そして桜井係長も「自分で言うのも何だが、息子は良く出来た子供で私はダメな父親だよ」と、苦笑いをしながら言っていた。


 そんな事はないと思う。

 桜井係長が家族の事を思っているからこそ、彼の息子はそれに応えたのだと思う。


 そんな彼の息子が、私の息子にもなる。

 正直、自分が生んだ子供ではないとはいえ、息子が出来ると思うと心が躍らないわけがない。


 だから私は桜井係長の気持ちに応える事にした。


 そして、私と穂香、唯は彼の息子・・・悠希くんと顔合わせをする事になる。


 ただ、実際に会うとなると少し緊張する。

 それは私だけでなく、穂香と唯も同じように緊張しているようだ。


 桜井係長に息子の人となりを聞いていたとはいえ、その子は高校生の男の子。

 中学・高校の男の子となると、難しい年頃だと聞いた事があるから。


 しかしそんな思いも、良い意味ですぐに打ち砕かれる。


「初めまして。朱美さんと穂香ちゃんと唯ちゃんですね?僕は桜井悠希です。貴方達の事は父から伺っております。父共々、よろしくお願いします」


 緊張している私達に向かって、優しい笑顔と丁寧な言葉で私達を受け入れてくれていた。


 しかも私はその笑顔を見て、正直男の子に向かって言う言葉ではないのかもしれないけど、物凄く可愛らしく見えてキュンとしてしまった。


 それは異性としてではなく、こんな子が息子になるのだと嬉しく感じたもの。


 しかもそう思ったのは私だけではなく、穂香と唯も同様だったらしい。

 私と同じような表情で見つめていた。


 私達も互いに自己紹介をすると、悠希くんが私に問い掛けてきた。


「えっと・・・朱美さん?それとも母さんと呼んでもいいんですか?」


 歳の近い私に対して、どう呼んでいいのか少し戸惑っているみたい。

 その様子がまた、なんだか可愛らしく見えてくる。


「ふふっ、母と呼んでくれると嬉しいかな。でも、無理にとは言わないし、状況に応じて使い分けてくれても構わないわ・・・ただ、家族になるのだから敬語は使わないでね」

「あ、うん、わかり・・・わかったよ。母さん」


 悠希くんは、敬語を使いそうになったのを訂正した上で、私の事を母と呼んでくれた。


 私の言う事を素直に受け取ってくれる、そんな悠希くんに嬉しくて少しだけウルッときてしまう。

 それを誤魔化しながらも、私は悠希くんの事を悠くんと呼ぶ事を伝えた。


 そして悠くんは、穂香と唯にも私と同じように家族になるのだからと言われ、敬語や敬称をつけるのをやめて話すようになった。

 しかも穂香と唯も悠くんの事を気に入ったようで、すぐに仲良くなっていている。


 私達は互いに受け入れて納得したことで、タイミングを見て籍を入れる事に決まった。


 そして籍を入れると桜井家で一緒に住む事になり、私は夫の勧めで会社を退職する事を決意する。


 一緒に暮らすようになってわかったのは、夫が言っていた通り悠くんは家の事は何でも出来たという事。

 だから、私が何も言わなくても進んで家の手伝いをしてくれた。


 そんな悠くんは、私が自分の息子が成長したらと思い描いていた理想像そのものだった。


 優しくて思いやりがあり、笑顔が可愛く、一緒に居て安心出来る・・・

 いつまでも一緒に居たいと思わせるような存在。


 大きくなっても息子を溺愛する母親がいると聞いた事があるけど、その気持ちがわかる程に。


 もちろん穂香や唯も大事だし、いつまでも一緒に居たいと思う気持ちは同じだけど、やはり男の子に対する気持ちと女の子に対する気持ちでは違うのだと実感した。


 自分で生んだ息子ではないけれど、念願の息子が出来たんだ。

 しかも片親しかいない大変な状況の中でも、私が思い描いていた通りに育ってくれた理想の息子が・・・


 とはいえ、彼は今までずっと母親の愛情を受ける事が出来なかった。

 口にも顔にも出してはいないけど、きっと寂しい思いをしてきたのだろう。


 だから、これからは私が・・・

 母親として、目一杯の愛情を注いであげたいと思う。


 そう考えられる程・・・

 悠くんと一緒に過ごして何日も経たない内に、彼はすでに私には必要な存在となった。


 彼は私の大事な息子・・・

 大切な家族として・・・




 ――――――――――



 あとがき


 お読みいただきありがとうございます。

 もう一話だけシリアスが続きますので、お付き合いください。


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