第3話 俺は彼女達の兄と息子、兄と息子・・・
俺は夕飯を食い終えた後に部屋に戻っており、ベッドに寝転がって漫画を読んでいる。
ちなみに俺の家は無駄に広く部屋が多い。
元々の理由として、俺の後にも数人の子供が欲しかったという理由なんだけど、その前に母が亡くなったからな。
まあ、それはいいとして・・・
全員が別々の、個別の部屋を与えられているため、各々が自由に寛げるようになっている。
だから俺も自分の部屋にいる時は、何も気にせずにまったり出来る。
はずなのだが・・・
コンコン!
と、部屋のドアがノックされる。
「はいよ~。開けて入っても大丈夫だ」
俺の返事にドアを開けて入って来たのは、穂香と唯であった。
彼女達の恰好は、なぜか2人共ロングTシャツを着ている。
非常に可愛い・・・
いや、妹としてだよ!?
・・・女の子としても可愛いのは間違いないけど。
・・・っていうか、そんな事はどうでもいい!
そんな事よりも、もちろんその下はきちんとショートパンツを履いてるよな?な?
とまあ、どうでもいい心配をしてしまう。
・・・いや、だって彼女達が来てからの毎日を考えたらさ。
彼女達の兄、息子に対する距離感がねぇ・・・
警戒心が、異常なほど無さすぎるのである。
逆に俺が心配してしまうほどなのだ。
そんな事を考えつつも、入って来た彼女達に声をかける。
「どうしたんだ?」
一応用件を聞くものの、彼女達が俺の部屋を訪れるのは毎日の事だったりする。
「うん、用があるわけじゃないんだけど、兄さんが何してるのかなぁって」
俺の問いかけに穂香はそう答える。
これもいつもの事である。
俺は彼女達の相手をするために、起き上がろうとすると。
「あっ!いいよ、お兄ちゃん。そのまま本を読んでて」
と、唯に制される。
「そうか?じゃあ、2人も楽にして好きな事してていいよ」
彼女達がはっきりと口にしなくとも、今までどれだけ寂しかったのか、家族に飢えていたのかわかっているつもりだ。
それを感じている俺は、彼女達が望むなら出来るだけ側に居たいと思っている。
だから俺が直接相手をしなくても、俺の部屋に居たいというのであれば邪険にするつもりはない。
俺の部屋で、自分の好きな事をしていればいい。
そう思っての発言だったのだが・・・
その発言は間違いだったと、すぐ気づくことになる・・・
「ありがとう、兄さん」
「うん、じゃあお言葉に甘えて好きにさせてもらうね♪」
そう言った二人は、ベッドに仰向けで漫画を読んでいる俺に近づいて来る。
そして、なぜかベッドの上に乗った。
しかも、穂香は俺の上を乗り越えて奥に・・・
唯は手前側に・・・
何をするのかと思ったら・・・
「えっ!?あっ!ちょっ!」
俺が焦るのも無理はない・・・
仰向けの状態で、顔の正面に漫画が来るように腕を広げて肘から先だけを上げて読んでいたのだが・・・
その間に入り込み、俺の二の腕に頭を乗せやがりましたんですわ!
要は腕枕状態ですわ!
と、おかしな言葉遣いになるほど動揺する俺。
俺の右腕には穂香の頭が・・・
俺の左腕には唯の頭が乗っている・・・
更には2人共横向きになり、俺を抱くように腕を回してピッタリとくっ付いてくる。
「うふふっ、兄さん、兄さんだ~♪」
「ムフッ、お兄ちゃん、お兄ちゃんだよぉ♪」
しかもその状態で、嬉しそうに俺に顔をこすりつけてくる・・・
彼女達にとっては、兄が出来た事が相当嬉しいらしいのだ。
俺自身も、彼女達が兄として慕ってくれるのは嬉しい。
普段だって、俺の側にチョコチョコと寄り添ってくる姿は、本当に妹らしくて可愛い。
しかし・・・
しかしだ!!
今のこの状況はおかしいでしょ!
色んな意味でやばめでしょ!
俺も彼女達を妹だと思ってはいるが、彼女達ほど完全に割り切れてないんだよ!
だって、俺達は皆・・・高校生じゃん!!
兄妹になったのは、ついこの間じゃん!?
普通に接してくるのなら何も問題なかったのに、彼女達の兄に対する距離感が近すぎるんだよ!
女性を意識しちゃっても仕方ないじゃん!
いや、そうか・・・
これはきっと、俺の家族愛が試されているのだ!
彼女達の様に、俺も異性として意識するんじゃない・・・
彼女達を妹として、動じる事なく受け入れろ・・・と。
そうさ!
俺は兄、彼女達の兄なのだ!
とはいえ・・・
顔が近い・・・
全身が温かい・・・
触れる場所全てが柔らかい・・・
そして、風呂上がりの女性特有のいい匂いが・・・
・・・・・
ぬおおおおお!!
ちょっと待て!
ちょっと待ってくれ!!
何とか平静を保とうとしたけど、無理!
やっぱり無理だよ!!
やわこくて、温かくて、気持ちよくて、いい香りがするんですけどぉ!!
幸せなんですけどぉ!!
って、違うだろ!俺!
つーか、確かに好きな事していいって言ったけどさ!
でも俺が言ったのは、そういう事じゃないんだよ!
俺に構わずに好きな事をしろという意味だったんだよ!
だから、俺に構わんでくれよ!!
いや、頑張れ俺!まだいける!
何とか平静を保つのだ!
彼女達は妹、彼女達は妹、彼女達は妹・・・
そんな俺の思いも空しく・・・
彼女達の柔らかい感触に意識が持っていかれる・・・
俺の身体に伝わるこの感触は・・・
ノーブラじゃねえかよ!!
ちゃんと下着をつけろよ!!
より一層凶悪な柔らかさを感じてしまうじゃねえか!
しかも今度は足も絡めてきた為、そこに目を向けると・・・
Tシャツがめくれ上がった状態が目に入ってしまった、のだが・・・
・・・いや、ショートパンツじゃなくて、普通にパンツじゃねえか!!
下は下着だけかよ!!
俺の不安が的中しちゃってたよ!
何でズボン系の物を履いてこないんだよ!!
ちゃんと、下着の上に何かを着てこいよ!
2人の上半身と下半身の状態、2つ合わせて1つ!
つまり、ニコイチが正解なんだよ!!
・・・
もう俺テンパりすぎて・・・
自分で何言ってるのかわかんない・・・
2人共、ブラをしていない事・Tシャツがめくりあがっている事・・・
そのどちらにも全く気にする様子がない・・・
ホントにやばい・・・
平静を保とうとしてんのに、俺は余計な事に気づき過ぎてしまった・・・
すでに風呂場で見てるし、直接肌の触れ合いもしてるだろ?・・・だと!?
・・・風呂場と部屋では気分的には違うんだよ!
風呂は裸が当たり前の場所であり、部屋は服を着るのが当たり前の場所じゃん!?
いや、一緒に風呂に入る事を許容しているわけじゃないんだけどさ。
むしろ、本当ならそれもやめてほしい。
なんであろうと、部屋ではちゃんと着る物を着れよ!
そして、俺に抱き着かないでくれ!
そんな事を思っていると・・・
「こうして、私達に兄さんがいて触れ合えるなんて・・・本当に幸せ」
「うん、お姉ちゃんの言う通り・・・憧れのお兄ちゃんが私達の腕の中にいるんだよねぇ」
なんて事を言われちゃったりしたらさぁ・・・
完全に毒気も抜かれていくよね・・・
煩悩に支配されていた俺が恥ずかしい・・・
そう思うと、俺の心も自然と落ち着いてきた。
だから俺は・・・
手に持っていた本を置くと、2人を軽く・優しく抱きしめる。
そして、2人に対して自然と言葉も出てくる。
「俺も、穂香と唯という妹が出来て幸せだよ」
「えっ、本当?兄さんも幸せだと思ってくれているの?」
「嬉しい!お兄ちゃんにそう言ってもらえるなんて」
「ああ、本当だよ。本心からそう言ってる」
「そっか、ありがとう・・・私、正直なところ・・・兄さんに迷惑をかけているんじゃないかなって思ってたんだ」
「うん、私も・・・嬉しさが勝って、行き過ぎた所もあるかなぁ?って考えてたよ」
「ばかだなぁ・・・迷惑なんて思ってないさ。むしろ、妹の迷惑を受け入れてこそ、兄ってもんだろ?」
「兄さん・・・」
「お兄ちゃん・・・」
そうだ。
彼女達は今まで家族が家にいなくて、本当に寂しかったんだ。
ずっと我慢してきたのだろう。
誰にも甘える事が出来ず、誰にも相談することも出来ずに・・・
そして、兄が出来た事でその我慢をする必要がなくなり、抑えきれなくなったのだろう。
だからこそ、距離感なんて考える余裕もなく、家族との触れ合いをしたい欲求に駆られているのだと思う。
まあ、過剰な部分は少しだけでも遠慮してほしいものだが。
それを受け入れる事こそが、俺の・・・兄としての役目なのだ。
そして、それはこれからもずっと・・・
「だから安心してくれ。俺は絶対に、どんな事があっても・・・お前達から離れる事はないと誓うからさ」
彼女達は常に家族の誰かがいないという経験をしてきた。
そんな経験を、彼女達に二度とさせるわけにはいかない。
だから、もし彼女達が俺を嫌うような事があったとしても、どんなに俺から離れようとしても・・・
俺が彼女達から離れる事はしない。
もちろん、それには朱美さんも含まれる。
ただ、俺の言うそれは・・・
心の距離の話であり・・・
「兄さん、ありがとう・・・本当に嬉しい」
「お兄ちゃん、本当に・・・本当に信じてもいいんだね?」
「ああ、俺を信じてくれ」
彼女達も俺と同じ気持ちでいてくれるのだと・・・
俺の気持ちをわかってくれているものだと・・・
「うん、私は兄さんを信じてるよ。だから・・・だからね」
「うん、私もだよ♪じゃあ、じゃあね・・・」
「なんだ?遠慮せずに言ってごらん」
そう思っていたのに・・・
彼女達が、
『これからもずっと、ちゃんと一緒にお風呂入ってくれるんだよね?』
「・・・・・」
だああああああ!!
違う!違うの!
肉体的・物理的な話じゃないんだよ!
精神的な・・・心の繋がりの話をしてたんだよ!
確かに触れ合いを受け入れるみたいな事、俺も語ってたけどさ・・・
軽く抱きつくとかなら、俺も喜んで受け入れるさ!
でも、超えちゃいけない一線ってもんがあるでしょうが!
もう、すでに何度か超えてしまっているけど・・・
せっかく良い話になりかけたのに、なんでそっち方面に戻しちゃうんだよ!
思い出しちゃうじゃん!
せっかく煩悩を振り払ったのにぃ!
煩悩が舞い戻ってくるじゃん!
そんな心の葛藤を続けるため、何も言う事が出来なくなった時。
コンコン、ガチャっ!
と、ノックの音が聞こえたと思うと、俺の部屋のドアが開く。
「ちょっと、穂香!?唯!?お母さんには散々言っておいて、今度は自分達だけ抜け駆けするの!?」
と言いながら、ネグリジェ姿の朱美さんが入ってきた。
ええ~!?
だから抜け駆けって何!?
「ごめんね、お母さん・・・私も我慢出来なくて・・・」
「お母さん、私もごめんなさい・・・でも、お兄ちゃんを前に我慢なんて出来ないよ・・・」
いや、どういう事!?
我慢しろよ!
てか、何の我慢だよ!?
「そう・・・そうよね・・・でも、でもね?お母さんも、やっぱり一人だけで居るのは寂しいっていうか・・・」
「お母さん・・・」
・・・・・
うん、いや、そうだよな・・・
朱美さんだって、今まで辛い・寂しい思いをしてきたんだもんな。
でも、逆にそうやって素直に言ってくれるのは嬉しい。
それだけ俺達を信用してくれているという証なんだから。
「うん、そうだよね・・・ごめんね、お母さん・・・誘わなくて」
「お母さんに一言声をかけてくればよかったんだよね・・・」
「ううん、いいのよ。あなた達の気持ちもわかってるから」
・・・ん?
俺を置いてけぼりにして、また話が良からぬ方向に進んでいる気が・・・
だから、いつもだけど・・・
でも絶対、何か話がおかしいんだよ・・・
誘うだとか、声をかけるだとか・・・
もちろん、ただ俺の部屋でワイワイ楽しくしたいってだけの話だよな?な?
「うん、ありがとう!・・・という事で、お母さんには特等席を譲ってあげるね!」
「お母さん・・・はい、ここに来て♪」
と、穂香と唯が手を広げて、朱美さんの場所を開ける。
「えっ?お母さんが、そんないい場所を貰っていいの?」
と、朱美さんが驚いた、その場所は・・・
俺の胸の中・・・
要は、俺の両側に穂香と唯、真正面に朱美さんが来る事になるわけだ・・・
・・・・・
って、冷静に状況を説明している場合じゃねえ!
いやいや、おかしいでしょ!
俺の意思はシカトして、何勝手に話を進めてるんですか!?
何で俺の事なのに、アナタ達が決めるんですか!!
まだ、俺は許可してません!!
だって、やばいでしょ!
両側をうら若き乙女に挟まれ、正面からも若き美人に体をあずけられるとかさ!
そんな事を考えている間に・・・
「じゃあ、遠慮なく」
「っ・・・」
と言って、俺が拒否る間もなく・・・
俺の上に覆いかぶさりましたよ・・・
更に言えば、俺の上に乗った朱美さんをホールドするように、穂香と唯も抱き着いている。
もう、脱出不可能です・・・
そして、朱美さんも・・・
やわこいです、温かいです、いい匂いです・・・
結果、全身が気持ちいいです・・・
・・・・・
だあああああ!!
しかも、朱美さんのこの感触も、絶対ノーブラじゃん!
ちゃんと下着を着てこいよ!
「ちょ、ちょっと、朱美さん!」
「ん?何?悠くん・・・」
さすがに俺の理性がやばいと思い、俺の胸に抱き着いている朱美さんに離れるように言おうとしたのだが・・・
俺の声に朱美さんは少しだけ頭を上げて、俺を見る・・・
ちょ、ちかっ!
しかも、その上目遣いは反則だろ!
そんな優し気な、潤んだ目で見られたらさぁ・・・
「なんでもないです・・・」
と、答えるしかないじゃん!
「そう?ふふっ」
そんな俺を見て、朱美さんは楽しそうに笑う。
・・・はあ。
もういいけどさ・・・
てか、そこそこ広い家なのに・・・
親父を除く家族全員が・・・
俺の周り、直径50cm以内にいる。
密です・・・密です・・・
いや、ここだけ人口密度高すぎだろ!
他はスッカスカだよ!!
もっと広々と有効的に使おうよ!!
という俺の心の声は、心の中だけで空しく響いたのである・・・
・・・
そして、全く身動きできない状態で、ふと気づく・・・
あ、俺風呂入ってねえ。
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