第208話 事後処理?

 僕はベッドで目を覚ましたよ。

 ちょっぴり魔力を使いすぎたみたい。

 あれ、ママがいる。それにミラ姉も?


 なんかね、カイザーを中心にパパラギ村に鍛冶師たちを避難させた後、そのままヨシュ兄とミラ姉はミモザに向かったんだって。

 そこですでに準備万端の国王様に、謀反の証拠とかを渡して、即、出陣命令が下ったんだそうです。海からたくさんのお船が派遣されたんだって。

 軍とは分かれて二人は地上から領都に戻ったんだけど、そこでママとも合流。怪我人の処理も終わっていたから、領都に残っていた面々も合流してこちらに来た、らしい。といっても、アンナとバンミは魔導師の見張りに残ったみたいだけど・・・



 ママたちがついたときには、トレサの港では、もう戦いは始まっていたけど、陸側に残っていた冒険者と合流して、領主の館とか、こちらでの要所を押さえるのに協力してたらしいです。

 なんかね、トレサの方が本拠地って感じで、兵もたくさんいたけど、メインどころは船に乗り込んでたんだって。

 それでも、かなりの抵抗があって、こっちの人数も少ないってこともあり、小競り合いのまま、踏み込むことは出来なかったらしいです。


 だけどね、僕が渦潮で足止めした船。足止め効果ばっちりで、軍のお船がちゃんと包囲できたんだって。

 で、2艇の船は拿捕されたそうです。

 が・・・・・


 リヴァルドと領主他、主要人物がいなかった、みたい・・・・

 どういうこと?


 「例の魔導具が使われたようじゃのぉ。」

 ドクも、僕が起きたのを聞いてやってきたよ。それで教えてくれた。

 旗艦に、メインどころと特選隊がいたのは間違いない。

 けど、彼らがいたと思われる船室には、数名の魔導師が事切れていた、のだそうです。

 ドクが言うには、ここで亡くなっていた魔導師と、ひょっとしたら一緒にいなくなった魔導師の一部の魔力を使って強引に転位したんじゃないかって。ペンダントを使い、自分の魔力じゃなく、人の魔法で送って貰って逃げたんだと思う、って・・・


 僕が寝ちゃってた時間って思ったほども経ってなくて、まだ今日の出来事だそう。

 それでも、軍の人が、船からも降りてきて、冒険者たちと一緒に、領主の私邸とか、分かっている建物を押さえることには成功したんだそうです。でもそのどこにも、消えた人達はいなかったって。

 今は、トレサ中心に人海戦術で軍が探してる最中なんだって。

 僕ら冒険者はいったん宿屋で待機中。

 ゴーダンは他のパーティリーダーと会議してるって。軍の人も一緒にね。


 それにしても、リヴァルド、どこへ行っちゃったのかなぁ。

 秘密基地、とかあるのかもね。

 しばらくは、僕らが出来ることはないし、宿で待ち、ってことみたいです。


 そうそう。

 アーチャたち潜水艦組。

 むちゃくちゃ頑張って、いっぱい救助したって。

 ほとんど敵だけど、エッセル号からも落下しちゃった人もいたみたいで、こっちは全員無事。

 本当は、地上担当の人が、何人か魔法の攻撃を受けて負傷したんだけど、ちょうどママが到着して、なんとか死なずに済んだ、ってことのようです。


 その日、作戦成功ってことで、一緒に戦ったパーティと祝勝会、やったんだ。

 もう、僕とママ、大変でした。

 ママは地上班の人達に女神だ、とか言われて、拝まれるし、いっぱいプロポーズされてるし、僕は僕で、お船班の人達に、御利益だ、とか言って、撫でられまくるし。こういうときのうちのパーティメンバーってまったく役に立たないんだよね。なぜかネリアが救出にきてくれて、なのに、ずっと僕がお説教されたのは納得いかないけどね。ネリア的には、僕の今回の魔法、完全アウト、なんだそうです、はぁ。


 それにしてもこの世界、まともな宗教ないのに、女神とか御利益とかって言うんだね。なんか不思議。そんな風に言ったら、セイ兄が何が不思議か分からないって言ってたよ。勝利の女神とか願いを叶える神様は普通にいるでしょって感覚、なのかなぁ。なんか祀るって感覚はないみたい。僕はどうだろう。よく考えたら、心の底から信じて祈る神様ってのはいなかったけど、神様っていうものはあってもいいかな、って前世でもぼんやりと思ってた気がする。なぁんだ。そう考えると一緒だね。組織だって宗教がないだけって考えると、前世の日本人もほとんどがそんな感じだったかも。



 トレサで2泊しました。

 でもね、本当に小さな港町。旧都に近い感覚みたいだけど、何があるか、て言われても、領主の関係する施設ばかり。造船が中心、かなぁ。これは想像以上にすごい設備で、新しいものでした。なんかね、今回の騒動のために工場から作ったみたい。一般人立ち入り禁止の建物多数。

 あとは、ザドヴァで破壊した教練所みたいな施設もあったよ。

 魔導師育成は続けていたんだね。

 こんな施設なんかは、ザドヴァ政変の後で作ってたら間に合わない。もっと前から、領主と結託して、トレシュクのザドヴァ編入って計画はあったみたいです。それが今回の政変で前倒しになったってのが真相かな?


 トレサでいても仕方ない。

 調査とかは、軍の人達がやってるしね。

 で、冒険者は引き上げようという話になったんだけど、2日目の夜、懐かしい訪問者がありました。リネイとトッチィ。ひいじいさんが育てた子供たちの中でも最後の人たち。今は国軍に所属していて、僕らとナスカッテ国に行ったあの二人です。

 二人は帰ってきてから王様付の近衛軍に配属されたって。まぁ、そのことは聞いてたんだけど、今回の遠征軍、一応仕切ってるのは二人なんだって。正確には近衛が海軍の上に立って総指揮をするって形らしい。この海軍、国軍の普通の兵士さんと、ミモザの海軍で成り立ってるんだって。海と言えばミモザの衛兵。前代官の私兵を除いても十分に強力な海軍なんです。

 王都とミモザから出された兵なんだけど、王様がミモザを訪れていた。で近衛もいた。なんせ他国も関係している事態。王様が直接来る、と言いたいところ。安全面を考えて王の手足たる近衛が出張る。そういう図式なんだそう。その手足に任命されたのがリネイとトッチィだった、って話。

 筋書きがそうだってこと、なんて、ウインクしながらネリイは言ってるけど、念押しされなくっても分かってるよ?こうなることを期待して、軍をミモザまで進めていて、王様も可能な限り戦場近くまでやってきたんだよね?


 「ていうことで、宵の明星は至急ミモザに戻って欲しいんだ。」

 いやいやトッチィ、何がということで、なのかなぁ?

 「王が待っておられますからね。」

 とリネイ。

 いや、ザドヴァのあと、報告したもんね?

 今回の報告は、僕たち必要?しかもミモザでって、王様そんなところにいないでさっさと王都に帰らなきゃ、でしょ?

 「幸い現在ミモザは王の直轄地となっており、王様が滞在されることになんら不思議はありません。」

 ・・・・

 いやいや治安とか考えたら、だめでしょ?

 ミモザは港町。なんだかんだでべらんめいな地域だよ?

 「アレクと会うのを楽しみにされています。」

 いやいやいやいや・・・

 「それと、明日朝までには現状の報告をまとめますので、それを王に届けるという指命依頼を宵の明星に出そうと思います。よろしいですね。」

 「ああ、分かってる。ミランダとラッセイは陸路で戻ってくれ。途中ヨートローとパパラギでみんなをピックアップしつつゆっくりで構わない。こっちに残りたい奴は残して構わん。残りは船で戻る。いいな。」


 ゴーダンの決定なら仕方ない?

 でもさ、初めっからこの予定、だったんでしょ?

 それでなきゃ、ミラ姉たちをミモザまで走らせたりしないもん。

 あーあ、いったいいつまで、僕はごまめ扱いなんだろう・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る