第199話 囚われの鍛冶師救出大作戦(5)

 そのあとは、特段イレギュラーなこともなく、借りてる別荘へ到着。

 直線距離で湖を突っ切った僕ら湖班が早く到着。

 で、後始末含めた地上班も続々別荘に集合だよ。

 地上班が戻ったときには、さすがに僕疲れちゃってお昼寝中だったんだけどね、鍛冶師たちをお世話してる間に、セイ兄たちが潜水艦はリュックにしまっておいてくれたみたい。で、こっそり潜水艦見学に戻った鍛冶師たちがどこにもない、って大騒ぎしたから一悶着になったらしい。カイザーの、「やかましい!ザドヴァに送り返すぞ!」ていう一喝で大人しくなったのは見物だった、って、後で聞きました。



 領主の別邸なんだけどね、使用人たちは領主に最近雇われた人達がほとんどだったんだって。このあたりの別荘は、主に夏場、使われる。今はもう冬だしね、ほとんどの別荘って使われてないんじゃないかな?そもそも別荘だしね、冬場はほとんど住んでないところも多くって、時折隠れ家的に引きこもってる人がいる程度。だもんで、使用人も常駐してる人少ないんだって。

 でも、ここを領主がたくさんのザドヴァ人のために解放したために、新たに雇った使用人が彼ら、って感じかな。


 ただね、湖で操船とか、船上戦闘の訓練が出来るでしょ?内陸奥地で人の目は少ないし、海と違って穏やかだから、新人訓練には持って来い、だったようです。

 さらに、っていうか、あまり手がかからない人質、でもないか、まぁ、牢屋に入れてる人達(=鍛冶師たちのことだよ)もいるから、そういう人達の見張りとか世話とか、そんな訓練にもなる。

 てことで、この別荘はそもそもが合宿所的扱いで、訓練中の兵士がたくさん住んでいたようなんです。

 えっと、これは、僕らと別れた後、セイ兄が台所でゲットした情報ね。


 この新人っぽい兵士たち、どうやら使用人さんたちに嫌われてたようです。

 話によると、ザドヴァの上流階級の子弟がほとんどなんだって。

 内乱中の国から堂々と逃げ出せるにはそれなりの地位とかが必要だったようで、結果、上流階級の子弟がやってきたってことみたい。

 で、プライド高い、っていうか、まぁ偉そうなんだそう。

 わけわかんない注文も多く、若いメイドさんは身の危険を感じてすぐにやめちゃったり。

 敗戦兵のくせに、って、とっても嫌われていたので、いろんな情報、落としてくれたんだって。



 いろんな情報っていえば、一応司令官の部屋、らしいところから、作戦表だったり、メモや計画、命令書、なんてのも出てきたみたい。

 これを国に渡せば、あとは、国の兵隊さんたちが上手くやるだろう、って、リーダーズが話してたよ。


 なんかね、リヴァルド派の上流階級なんだけどね、多くはザドヴァで息を潜めているようです。で、次男とか三男っていう感じの子弟がこっちの国に送られたらしい。

 お手紙とかでは、こっちで蜂起してザドヴァ新政府へと討ち入ったときに、各地で一緒に反撃ののろしを上げる、って言ってる、らしい。そのお手紙自体は多分リヴァルドとか領主が持ってるんだろうけど、まぁ、そんな手紙を貰ってるから、その次男とか三男とかを、しっかりと鍛えなさい、的な命令書があったようです。

 えっとね、みんなはね、本当はザドヴァではどっちが有利かって、当主とか嫡男なんかは、じっくり様子見してるんだろうって。

 リヴァルドが勝ちそうなら、このシナリオどおりになるだろうし、逆に甥っ子殿の現体制が強そうなら、そっちにごめんなさいして、むしろ討伐軍とか出すかも、だって。

 自分ちの子供がいるのにそんなことするのかなぁ?って僕なんかは疑問だけど、貴族ってやつはそういうことをする生き物だって、みんな言ってたよ。貴族。怖いね。



 とか言ってるけど、もう僕たちのお仕事はおしまい?

 いいえ、帰るまでが遠足です。


 えっとね、きっと、ここはすぐに足がつくだろうって。

 鍛冶師さん達が湖から救出されたって情報はそのうちリヴァルドたちにも行くだろうしね。

 てことで、ちょっぴり休んでいる間に、パッデたちと合流です。

 まずは、カイザーが鍛冶師たちとモーリス先生たちを安全なパパラギ村の隠れ家まで引率だって。

 パッデの馬車で行くから、パッデと、あとはミラ姉とヨシュ兄、ダムとナージ、といったチームで護衛件、伝達係で先行だよ。


 残りの僕たち。

 いったん領都の隠れ家で待機です。

 なんかね、リヴァルド一味の本体はまだ領都にいっぱいいるからね。

 今回のことで暴れられちゃ、民間人はひとたまりも無い、って、冒険者ギルドに泣きつかれたんだって。

 あ、今回の作戦のこと、一応ゴーダン達がギルド長に報告してから決行してるんだけど、その計画の報告の時にね、言われたんだって。

 報復してきた時の戦力はおいておくように、ってギルド長からの命令です。


 別荘でちょっぴり休憩していた僕たちが領都の中心部に戻る頃、さすがに不穏な空気が漂っていたよ。

 先行組、危機一髪ってかんじ?どうやら、状況が判明するまでに領都は出発できたみたい。今は、門が閉じられて出入りが出来なくなってる、って、偵察に言っていたノアさんが報告してくれました。



 そんな感じで拠点にしていたおうちで話していると、冒険者ギルドのリックさんがやってきたんだ。

 どうやらギルドでもめ事になっているそうで。

 なんでも、町に領主の部下でもある憲兵だけじゃなく、他国=ザドヴァの鎧を着た兵士が一緒になって、闊歩してるっていうんで、冒険者たちとあちこちでぶつかったみたい。それだけじゃなく、一般人もそんな兵隊さんたちに、帰れ!みたいな罵倒を浴びせたり、物を投げたり、販売拒否をしたり。それに怒った兵隊が暴力を振るったとか、もう、町中そんな小競り合いで大変で、とにかく平定の手伝いをしてくれ、って、僕らを呼びに来たようです。



 「捜し物、だとしたら、俺たちだろうしなぁ。一般人に手を出すとあっては、放っておけないか。」

 「とりあえず、町の人には家に籠もって貰って、隠れて貰いましょう。」

 「冒険者は一度ギルドに集めて警邏させるか。」

 三大パーティのリーダーたちが、頭つきあわせてそんなことを言ってるよ。

 まぁ、僕らはパーティの方針に従うだけです。


 「よし、道々、説得しながら、ギルドに向かうぞ。リックはここらの有力冒険者を集めてくれ。」

 「そのつもりです。」


 なんとか鍛冶師の救出は成功したけど、まだまだ騒動は終わっていないようです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る