第196話 囚われの鍛冶師救出大作戦(2)
作戦決行の日。
僕は、潜水魔法をみんなで特訓した湖にいます。
ここにいるのは、僕とアーチャの潜行班とミラ姉、サマン、ノア、ネリア、そしてカイザー。
ママは非戦闘員のパッデと隠れ家で待機中。
ちなみに、この隠れ家にモーリス先生たちも来て貰ってるんだ。
モーリス先生がいたお屋敷は、リヴァルドも知っている領主から与えられたものなんだって。どうやら進行した病気の症状がひょっとしたら伝染するかもっていうことで、隔離の意味も含めてあの屋敷に籠もったらしい。これはモーリス先生が彼らから距離をとるためにそう進言して、上手く屋敷を与えられたっていう経緯があったようです。
けど、ここにきて、作戦が決行され、モーリス先生がこっち側だってバレちゃったら危険だしね。それにこのあと、鍛冶師とか、パッデたちは、バンミたち未成年組が待機しているパパラギ村で隠れることになってるんだ。そのメンバーに先生たちも入ってるから、移動のためにも、もう隠れ家に来て貰ったってことです。
僕たち湖側にいる人間とは別に地上から陽動班が領主の別邸を襲撃します。うん、残りのメンバー全員だね。といっても、別邸は兵士の一部の待機所も兼ねてるし、おそらく入れ替わり立ち替わりで常時100名前後の人はいそう。こっちの人数からすると、何倍もいるからね、油断大敵です。
で、です。
なんでここにカイザーがいるのか。
ジャジャーーン!
僕らの新兵器登場!!
あ、兵器じゃないんだけどね、あくまでノリです。
目の前の湖にぷかぷか浮いている、シルバーグレーを基調にした流線型の物体。
うん。カイザーの新作。
これを作って貰ったんだよね、この作戦のために。
はい。
潜 ・ 水 ・ 艦 !!
本体は4人乗りの小さなものです。
が!
外付けでエッセル号の船底を覆うぐらいのスペースを付けられます。
実際、これは、エッセル号の船底にかぽって被せるようになってるみたい。
普段は潜水艦の本体で、海中や海底を調査するんだって。
で、荷物とか人を運びたいときは、この船底カバー?を潜水艦にくっつけるんだ。
このカバーがすごくって、一種の形状記憶合金。といっても、前世の形状記憶合金よりもすごくって、基本的には薄くのばして船底に。で、潜水艦にくっつくんだけど、その大きさは自在に変えられる。最小で潜水艦3つ分、最大でエッセル号の船底を覆うでかさ。
このサイズと形は、魔力制御。ドクの開発した魔導具が使われてるんだけどね、金属の量は変わらないんだ。でかいほど薄くなるし、小さくすれば分厚くなる仕様。
問題は、魔力をむちゃくちゃ喰うってことかな?
宵の明星にとっては、問題にならない程度、だけどね。
この付属部分、船底の時は船底を覆う形で、まぁ、お椀型、かなぁ?縦と横の長さは全然違うけどね。けど、船から外すと、ラグビーボールみたいな形で大小します。
で、その屋根の中央に本体がくっつく、て形になるんだ。でっかい流線型の物体に小さな流線型がくっついてるって感じ。
で、今目の前にあるのは、一番小さな形にしたオプションをつけた潜水艦です。
湖の上に出ているのは、本体部分だけ。どっちかっていうと潜水艦の頭が出ている、って風に見えなくもないかな。オプション込みでも潜水艦の形っぽいんだもの。
「よいか、バッテリーはあくまで予備じゃからな。3人は上手く魔力を供給するんじゃぞ。なぁに、練習どおりにやれば何も問題ない。さて、では乗り込むかの。」
カイザーがちょっぴり力の抜けるような言い方でGOを出したよ。
そうなんだ。カイザーが加わっての特訓は、この潜水艦の運航特訓だったんだ。
カイザーの号令のもと、まずミラ姉が、そしてネリア、サマン、ノアの順で潜水艦に入って行った。最後にカイザー。
「ダーもアーチャも気をつけてな。無理だと思ったら、即中止じゃ。いいな。」
カイザーはそう言うと、潜水艦に入り、中から扉を閉めたんだ。
ハハハ、残念。
そう。僕は潜水艦に乗れない。
えっとね、ミラ姉が操縦して、他の3人は補佐しつつの魔力の供給を行うんだって。ちなみに操縦にも魔力はいる。そして体勢を維持するにも魔力がいる。なんせ水の中だからね、どうしても、燃料はいっぱい必要だってことのようです。
燃料。もちろんみんなの魔力だね。
カイザーはいざという時のメンテとか、脱出の指示とか、そういう時のために乗り込んでいるんだ。多分客室化しているオプションの方で見ているはず。
僕とアーチャ。
残念ながら、潜水魔法で潜水艦の横を移動します。
この潜水艦はね、別に攻撃用じゃないよ。
丈夫だし、ちょっとした攻撃なら防御できる魔導具ももちろん仕込んである。けど、あくまでこれは移動用。
僕とアーチャでお屋敷に乗り込んで、牢屋から鍛冶師たちを連れてくる。で、鍛冶師をこの潜水艦で逃がす、そういう算段。
だから、潜水艦は、鍛冶師が出てくるまでは、水中で待機の予定。
だったら、領主の別邸近くまで、僕たちも乗っていけば良いじゃん、そう思うよね。僕ももちろんそう言ったんだ。
だけどね、残念。
この潜水艦の弱点だって、僕は思うよ。
だって、出入り口は本体上部のみで、水が中に入らないように、出入り口の開閉は水上でしかできない、って言うんだもん。
「今度、ゆっくり乗せて上げるから、今はがまんがまん。」
ほくほく顔で運転するミラ姉に言われても、なんか納得できないよ、僕。
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