第187話 サマンお姉ちゃんについていく?
サマンのお姉ちゃん、えっとね不屈の美蝶の弓使いさんで、先行組のお姉さんなんだけどね、なぜか、今、僕は、町の中心でサマンお姉ちゃんと二人です。
えっとね、うちのメンバーは、ヨシュ兄の案内で、いろいろと領主まわりを探るチームとね、女性チームが商業ギルドに行ったの。
なんか、昨日、アンナが冒険者ギルドのギルド長と飲みに行ったんだけどね、そのときに、商業ギルドの伝言っていうか、顔を出して欲しいってお願いされたんだって。で、聞いたアンナと、商会長のママ、護衛にミラ姉が行ったの。
でね、余った僕とバンミでね、町の雰囲気を掴もう!ていう名目の元、遊びに出る予定、だったんだけどね、一応、引率はサマンお姉ちゃんってことで・・・
あ、先行5名のうち、お出迎えには、うちがアーチャだったけど、虐殺の輪舞はダムだけだったから、ダムが行ってて、不屈の美蝶はナージが行ったんだって。だから居残りはヨシュ兄とサマンお姉ちゃんだったんだ。
僕らが合流したら、サマンお姉ちゃんだけ別のパーティで、なんか遠慮してたのか、ほとんど会話に入ってきてなかったんだけどね、昨日から実は視線が気になってました。
チラチラって僕を見てるの。
はじめはちょっぴり短くなった髪の毛とか気にしてるのかなって思ったけど、一度前にももっと短いときに会ってるし、なんだろうって思ってたんだ。
会議の後に、ヨシュ兄に何かくってかかってるのを見たし、うーん、なんだろうねって思ってて、ママとはそんな話をしたんだけどね。
ママは、何かあったらサマンお姉ちゃんに同行して上げてね、って言ってたの。
ママが言うなら、それが正解。でもまぁ、特に動きがあるまで僕からは何も言わなかったんだけどね・・・
で、いざ、おでかけってなって、この町の広場みたいなところに行きました。
うん、露天もあってね、その広場沿いにも、店舗があるような、この領らしい造りっての?そんなところに連れてきて貰って、じゃあ、解散!て・・・
他の町でも、結構そんな形で解散してて、集合は解散した場所か、お宿、ってことが多かったからね、別に気にはしてなかったみたい、少なくともバンミはね。
一応、三々五々、好きにお店見学して、適当に拠点に帰る、ってことになりました。うん、いつもどおり。
町中は、意外と安全。
商人の町だけあって、商売してる人を襲うような人はほとんどいないし、お買い物客も、大通りで日中なら、ほとんど襲われることはないんだって。安心安全にお買い物ができるってのが、この町の誇りでもあるから、って聞いたよ。
でね、バンミはどうやら来る間にお目当てのお店とかチェックしてたみたいで、あっという間にどっかへ行っちゃった。
ひょっとしたら、気を利かせた、のかもしれないけど、僕は真相は聞いてないし、聞くつもりもないけどね。
で、なんとなく出遅れた形になった僕。そして、そんな僕を見ているサマンお姉ちゃん。
お姉ちゃんが言ったんだ。
「本当は早くモーリス先生に会いたいんじゃないかな?」
「モーリス先生?」
「協力者のお医者様。」
「・・・えっと、鍛冶師のみんなを助けたら、って・・・」
「そうなんだけど、ね・・・」
「えっと、・・・なんか問題があるの?」
「ヨシュア君はダー君に言うなって言ってたんだけど・・・」
?
ヨシュ兄が言っちゃダメって言うことは聞かない方が良い、のかな?
でも・・・サマンお姉ちゃんの様子では、なんか切羽詰まってそうで・・・
「あの、僕が聞いても良いこと?ヨシュ兄は意地悪でダメって言わないよ?」
「そうね。多分、ゴーダンさんとかもヨシュア君にそうしろって言ってると思うし。でも、私のわがままかもしれないけど、ダー君、君の知らないところで終わっちゃうのは違うんじゃないかって思うの。」
「終わっちゃう?」
「終わらないかもしれない。終わらなければ良いなって思う。でも、終わっちゃう可能性があるなら、ちゃんとダー君も知ってた方がいいんじゃないかな、って・・・」
「その、協力者のことだよね?えっと、モーリス先生だっけ?ひょっとして、その人、今、危険なの?リヴァルドに殺されちゃう?」
「ううん。そういうことじゃないの。そうね、やっぱり言うわ。あのね、モーリス先生は、なんか難しい病気なの。いつ死ぬか分からない。私たちが初めて会ってからでも、随分痩せられて、いつどうなるか・・・」
「え?」
「キャンサーっていう病気なんだって。私は聞いたことがないんだけど・・・」
「キャンサー?え?そう言ったの?」
「ええ。」
キャンサー、さすがに蟹座とかじゃないよね。
英語で癌、だ。
こっちでそんな病気がない、ううん、あっても分かんないだろうから、前世の言葉を使ったんだろうけど。
癌で、みるみる痩せてきてる、って本当に重篤、ってことじゃ・・・
「会わせて。」
気がついたら、僕の口はそう言っていた。
パッと心配ごとがなくなったように笑顔を浮かべるサマンお姉ちゃん。
「ええ、いいわ。その、みんなには内緒、ね。」
そうだね。
僕だけじゃなくお姉ちゃんまで叱られちゃいそう。
でも、多分本当に時間がないんじゃないかな、って思う。
ママがお姉ちゃんについてけ、って言ったのは、これが理由なんじゃないか、って僕は確信に似た感想を持ったんだ。
僕はお姉ちゃんに連れられて、とあるおうちへやってきたよ。
裏道にある、小さな、でも立派なおうち。
なんでも、モーリス先生が一人で住んでいるんだって。
なんかね、やっぱり弱ってきているのは周りの人にも当然分かる。
はじめはリヴァルドの側近として一緒に住んでたらしいけど、謎の病だからうつしちゃだめだ、ってことで、一人で療養してるんだって。お医者様だからこそ、一人の場所を作れたっていう・・・
でも、実際はほとんどベッドの中で生活してるらしいです。
一応、奴隷がついてるんだって。看病用にね。
あ、奴隷は一人にいれない、っていうなんとなくのお約束ごとがあるから、本当は二人で暮らしてるけど、一人、って言うんだって。
お世話はその奴隷の女の人が一人で、でも、先生は奴隷としてではなく一人の人間として扱うから、先生の味方みたい。なんでもね、闇医者時代からの助手としてずっと先生についてる人、らしいです。
おうちにつくと、サマンお姉ちゃんと、その奴隷の女の人はとっても良い感じの仲良しさんでした。お姉ちゃんは、僕たちももともと奴隷扱いだったことを知ってるし、奴隷っていうものに対して偏見はないっていうか、むしろ反対派。当然物扱いするような人じゃない。
ヨシュ兄もそうだし、こういうスタンスだったから、余計にモーリス先生にも信用されたみたいです。
「この子が、噂のダー君よ。先生とお話しできるかしら?」
「まぁ、こんなにかわいらしいお方なんですのね。もちろん、お入りください。先生も、是非とも会いたいと、常々お話しされてたんですのよ。」
僕とサマンお姉ちゃんは、そのやさしそうなナース服姿の女性に連れられて、そのおうちへと入って行ったんだ。
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