第184話 トッソー村での出来事
いろいろお話し合いしてる間、僕はララさんに抱っこされてたけどね、さすがに勘弁、な感じなんだよね。
と思ってなんとか脱出を試みるも、全然離してくれないんだよ。
はじめはね、幼なじみに悪いことされたり、村も脅されたりね、精神的ショックも強いだろうから、僕を抱っこしてれば少しは癒されるのかな、ってがまんしてたんだけどね、でも正直僕の方がちょぴり参って来ちゃってます。
そんな僕の様子に気付いて、ママが、
「傷が開いたらダメだから、ダーを預かりますね。」
て、言ったの。
実際、ママが魔法で傷をある程度治しちゃったけどね、失った血は戻らないし、もともと治癒魔法は、本人の治る能力を加速させるものなんだって。で、もともと治癒能力の高い人=魔力の多い人にはよく効くけど、そうでもない人はそこそこなんだ。それでもママの治癒能力はすごくって、魔力が少ない村人のララさんでも、ナイフで裂かれた腕の出血を止めただけじゃなく、中の方はもうくっついてる。
ナイフを斬りつけたのが素人で、上手に切れてないから遅いんだってドクは言ってた。うちのメンバーが斬りつけたなら、切り口が綺麗だからもう薄皮ついてるだろうって。
それか、うちのメンバーが傷ついたんだったら、もう傷口が分かんなくなってるかも、って言ってます。うん、それは僕も同意かな?へへ、経験者は語るってやつです。
そんな感じで、ママが僕を引き取ろうとしたんだけど、ララさんが僕をギュッと抱きしめて「ダメッ」て言うんだ。
抱かれてる僕には、ララさんがものすごく怒ってるって感情を感じ、戸惑っちゃったよ。まさかの、治療してくれたママや、うちのメンバーに対して怒ってる?
「私はこの子に助けられました。こんな小さい子にです。あなたたちですよね。こんな小さい子に剣を持たせたの。しかも、あんな危ないこと!あなたそれでも母親ですか?そんな人にこの子を渡すわけにはいきません!!」
それを聞いてママは顔がサッと青くなったよ。
ママは気にしてるんだ。僕が剣を持つこと。魔法を攻撃に使うこと。戦うこと。
でも、いつでも笑って見守ってくれる。
ママを守るのが僕が一番やりたいことだって知ってるから。
ママの前に立ってママを守る。
ママの後ろから、こんな商品あるよ、って差し出す。
それが僕のやりたいこと。
ママはいっつもニコニコしてて、優しく包んでくれるけど、本当はハラハラもしてるし、僕に危ないことをして欲しくないって思ってる。けど、ぼくのやりたいことを優先してくれて、もしもの時はママが絶対救うんだって思ってるから、誰にも出来ないすごい治癒魔法を身につけたし、僕の思いついたものを商品にできるようにって、駆け足で商会を持ってもいいCランクまで駆け上がったんだ。
何も知らないで、この人は何を言ってるの?
ママをいじめるな!!
「「「「ダー!!」」」」
!!
・・・・・
「ダー、もういいから。大丈夫。ママは大丈夫だよ。怖くないからね。ごめんね。良い子、良い子。」
気がついたら、僕はママに抱かれてて、頭をずっと撫でられていたよ。
カッポカッポカッポ・・・
僕たちは村を出て、ヨートローへ向かってます。
あの後、すぐに出発したんだ。
領都ヨートローまで、馬車で約3時間てところ。
いろいろお話しを聞いてたら、被害にあった村はほとんど領都から日帰り圏内だって。
領都の近くは、割と生活や軍事を支える重要な産業が多いんだそうです。
作物を作ってたり、トッソーみたいに薬を作ってたり、武器を作ってたり。
それもあるのか、単に日帰りがいいからなのか、被害は首都の近くに集中してるって聞いたよ。
もう一つ聞いてること。
さっき、何があったのか。
ララさんの話を聞きながら、僕の魔力がふくれあがるのにみんな気付いたんだって。
気付くや否や、まずはゴーダンとセイ兄が飛び出した。
二人は僕を抱くララさんの腕の間に強引に体で割って入り、ゴーダンがララさんを抱きしめ、セイ兄が僕を抱きしめて、反対方向に飛んだんだって。
それでゴーダンと村の人達をドクが魔法で結界をつくって守ったそうです。
僕の、魔力はララさんに向かって飛んでいったんだって。
無属性の魔力だったって、聞きました。
アーチャがすぐにセイ兄の腕の中の僕を包み込むように魔力を展開。
バンミがママの前から僕を抱きしめて、僕の中に入ってきたそうです。うん魔力制御でね。
それでなんとか、僕の魔力が押さえ込まれた、って言ってた。
村の人はポカン、だったって。
でも、村長さんは、ララさんが悪いっていって、お詫びしてくれたそうです。
で、話もそこそこに、呆然とするララさんを任せ、慌てて出発しました。
ララさんがこれ以上僕に近づくのは、ララさんにも僕にもよろしくないだろうからって言ってたけど、たぶん本当は僕が怖がられると、僕、ショックを受けちゃうかもって思ったみたい。
ほんと、過保護な人達です。
ちなみに、ジャンゴと鎧の人達は預かって来ました。
村で家畜移送用だけど、鉄格子のはまった馬車が1つあってね、それを借りることになったんだ。それで、そこにジャンゴたちを入れて領都に連れて行きます。
幸い、僕らのシューバは2頭。1頭にそれを繋いだんだ。
本当は、ここに置いておいて、兵隊さんかなんかに引き渡して欲しかったんだけどねぇ。小さな村だし、怖い人を置いておく力がないんだって。
だから、領都についたらしかるべきところに引き渡す予定。
けど、そのしかるべきところってのが問題かもね、って言ってます。
それにしても・・・僕は、かなり反省中、ていうか、自分に困惑中です。
今回、僕が暴走しちゃったって分かる。でもみんな怒ってないって。
誰も怪我してないし、あれは仕方がないって言ってる。
でもね、僕は気付いたんだ。
僕をララさんから引き離したセイ兄の服がチリチリって燃えてたの。
きっと、僕は一瞬気を失ってるか何かしてて、その間にママがセイ兄のやけどを治したんだ。
それにね、バンミ。
僕とバンミの魔力量の差はものすごくある。もちろん僕の方が何倍も多い。
制御できてない人の魔力を押さえつける、なんて、普通は魔力量の大きな人が小さな人にかろうじてできる技なんだ。いつもお稽古でバンミに僕の魔力を預けて教えて貰ってるけど、それは僕の意志があってこそ。僕が受け入れているからバンミは傷つかないけど、暴走状態の僕にそんなことやったら・・・最悪、バンミは廃人か、死んでてもおかしくない。
みんな、そんなことは分かってるはず。
だけどね、大丈夫だよ、って言ってくれる。
ダーはちっこいからね、危なくないように守るためにみんながいるんだよ、って・・・
僕は確かにまだ6歳で、でもなんだか違う世界の知識とかあるから、年の割に落ち着きだってあるし、考えられるんだって、自分でも思ってた。
けど・・・・
みんなを守るはずの僕の力が、大切な人を危険にさらすなんて・・・
「ダー。そういうのも含めてダーを守りたいって、そう思ってみんないるんだ。やぁい、泣き虫ダー!そんなんだから、お兄ちゃんの僕が守ってやんなきゃな。ハハハ。」
たった1個しか違わないのに、ナザってば、本当に生意気。
でも、乱暴に僕の頭を撫でる兄貴に、ごめん、じゃなくて、ありがとうって言ったんだ。
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