第180話 パパラギ村

 今夜のお宿はパパラギ村です。

 ナナカ村から2日。

 途中で野営を1泊したよ。


 あのね、ここにくるまでいくつかの村を通りました。

 うーん、村というより集落?


 僕の感覚ではナナカ村も大きいとは思えなかったんだけどね、50軒程度だし。

 けど、実は大きめの村だったんだって、今なら分かります。

 他の村は10軒も無いところがいっぱいでした。

 集落、っていうのかな?そんな感じ。

 1つなんて、1軒1家族5人の村?あったよ。


 そこは、シューバを育てて売るのがお仕事のようで、お預かり、もやっているんだって。質の良いシューバを育てるので有名な一家のようでした。

 赤ちゃんもいて、とても可愛かったよ。

 僕の特技?魔獣たちと仲良くなったらお話しできる、は、家畜だと、ほぼほぼ有効だから、ちょっとだけお役に立ったんだ。


 なんかね、井戸のお水がおかしい、って、シューバたちが言うんだよ。

 でね、お水大丈夫?て聞いたら、変な魔石が入れられてるのが見つかったんだ。

 「きっとあいつだ。見たことのない商人が来て、シューバを全部売れ、って言うから断ったんだ。なんか、シューバも嫌がってたし、態度が気に入らなかったしね。それに、もう行き先が決まってる子や預かってる子まで無理矢理連れて行こうとするから、追い返したんだ。」

 そう、仲良くなったその家の子が言ってたんだ。


 力尽くで連れて行こうとしたらしいけど、たった1軒で、おうちを構えていることもあって、お父さんとおじいちゃんは、すっごく強いんだって。その子も日々鍛えてるんだ、って言ってた。

 その子は、最近、おうちの人が他人に対してピリピリしてるって言ってたけど、僕たちには親切に休憩の場所くれたよね?って言ったら、

 「シューバが初めっから、ダーのこと気に入ってたからな。悪い奴のわけがないさ。」

だって。ちょっぴり嬉しかった。



 大人たちは大人たちでいろいろ情報収集。僕たち子供は子供から。


 立ち寄った村によっては、牧場のところで聞いたみたいな話がたまにあったんだ。

 なめし革の加工が強い村とか、弓矢の矢を作る村とか、ね。

 そんなところに謎の商人が現れたみたい。

 売った人もいれば断った人もいるし、断って暴力で持って行かれたってところもあるみたい。

 そんな情報を小さい村々で集めつつ、このパパラギへと到着したんだ。



 パパラギ村。

 ここは、この領では『交叉都市』と呼ばれる村の1つなんだ。

 交叉都市って言うのは、いろんな村から物資が集まって、集まった商品が出発する町。


 トレシュクって、商人が多いんだ。

 えっとね、商人っておおざっぱに言ってるけど、この世界では物を売る人は全部商人ギルドの管轄なんだ。だから、職人っていうのかな?物を創る人も大きく言えば商人。だって作ったものを売るでしょ?

 そういえばザドヴァの鍛冶師たちも商人ギルド所属だったね?


 まぁ、そんなわけで、物を作ったり売ったりする人が多いのがトレシュク領ってことなんだけど、今まで見てきた村々でも分かるとおり、小さく分かれて家族ごとっていうか商会ごとに村を形成してる。そんなわけで、直接取引するのは1種類の商品だけになっちゃうんだ。そうなると売る方も買う方も不便でしょ?

 だから村々の商品を持ち寄り、そこにくればいろんな商品がある、ていう場所が自然発生的にできたんだって。


 そういうところは、当然交通の要所だし、人が人を呼ぶ。

 こういったところでいろんな商品を効率良く仕入れて、他の都市に売り歩く行商人もやってくるし、行商人同士の物の売買も活発になる。

 で、あちこちから人が集まるから、情報も集まる。

 そんな感じでこのパパラギ村、僕たちの第一目的地、だったんだ。

 ちなみに、虐殺の輪舞や不屈の美蝶パーティも、どこかの交叉都市を経由して情報収集をしてるはず。



 フフフ、パッデが目を輝かせてるよ。

 ザドヴァの行商をしているけど、本家はトレシュク領に移ってるって言ってたからね。パッデの家族はザドヴァに残った分家、なんだって。

 でね、トレシュクのこと聞いてて、一度、交叉都市のどこかを訪れたい、できたら交叉都市を巡回する行商人もしてみたい、ってのが夢だったんだそうです。

 そんなに興奮しなくても、数日ここに滞在するらしいよ?って、パッデに言ったけれど、お宿に荷物を置くか置かないかの間に、ママを連れて出かけちゃいました。

 もう!僕もママとお散歩したかったのに!


 パパラギ村は、大きめの村、というより、もう都市って言っても良いと思う。

 でもね、何がすごいって、塀がないんだ。

 小さな村でも、一応柵や塀があって、人や魔物から守ってるもんなんだけどね。

 今までけっこうな数の町を訪れたけど、柵すらないのってセスの村ぐらいかも。あそこはそもそもが特殊な村だし、ツリーハウスだし、ね。


 だけど、交叉都市はほとんどこんな感じで、柵とか塀とかはないんだって。

 なんでもね、みんなが自由に出入りできてこそ商取引だって活発になるし、商売ってのは時間との勝負だって考え方もあるらしくて、門でチェックなんかしてたら商機を逃す、ってことで、門も境界もないんだそうです。


 危なくない?って聞いたらね、その分冒険者が多いんだそうです。

 村として冒険者を雇って、魔物対策や盗賊対策をしてるんだって。


 それにね、悪いことをすると信用を損ねるでしょ?商人は信用第一、って考え方が根底にあって、一度でも悪い噂が立っちゃうと、この町でやっていけないそうです。

 なんかね、連帯責任みたいな考え方があって、自分の家族とか雇ってる人が悪いことをするとね、その商会や商人自体の責任と思われるんだって。だから、自分ちのことにしっかり目を光らせてて、それでもダメな子供とかは勘当を宣言して村から出ていかせたり、雇ってる人も商人の責任で追い出した上、ギルドで公表する、なんてことをしてるから、なかなか小悪党も産まれにくいシステムのようです。


 まぁ、それでも、たまぁに悪党が組んで悪の組織、みたいなのもできるけど、そういう場合は、領主や冒険者ギルドの出番、となってるらしいです。

 てことで、自由でそこそこ安全な交叉都市、というのは活気に溢れた、雑多な感じが、なんか素敵、です。



 荷物を置いて、僕とナザ、クジ、バンミといった未成年組は、ミラ姉の引率の元、村の中心にある広場へと向かいます。

 あのね、交叉都市ってのは最初は自然発生的にできたもんだから、中心に広場があってね、そこに露天を出して売買するところから始まったから、ほとんどはその大元の広場があるんだって。

 で、発展するに従って、露天じゃなくて、住んでお商売する人も出来てきて、人の住む家も出来て、って感じで外へ外へと勝手に広がっちゃったんだ。だから、結構、道は複雑。狭い路地や行き止まりの道もいっぱいある。

 で、ここは一番でかい広場だけど、ちょっと道が広いと勝手(?許可はいるけどね)に露天商やっちゃう人もいるしね、面白いけど迷子が危険。


 そんな風に聞きながら、この中央の広場にやってきました。

 迷ったら、中央広場集合!

 ここなら、誰かに聞けば戻ってこれるからね。


 ちなみに露天をやるには商業ギルドで登録して、今日やりたいです!て言えばいいんだ。場所代を払わなきゃなんないけどね。場所によって場所代は違う。で、早い者勝ち。開いてれば当日もOKだし、何日分、って確保も出来る。先払いだから、露天をやるような人は、なかなか買い占めできないしね。お金がないから。

 連日でないかぎり3日前からしか予約できないんだって。この何日前、とかいうルールは地方ルールだから、交叉都市によっては違うそうです。

 あとね、広そうな道の一角を見つけて、ここでやりたい、って言うと、職員さんがチェックしにきてくれるんだって。で、こんな感じで商品広げます、って見せて、職員さんがOKを出してくれたら、そこで露天してもいいんだそうです。

 変なところで露天やってるっていう文句はギルドに言いに行くと、許可を本当にしたかどうかわかるし、無許可なら逮捕、許可してて問題ありならギルドの責任でなんとかする、のだそう。

 ほんとうに商売第一の町、ってことみたいだね。勉強になります。


 てかんじの町だけど、まずは情報収集だ!

 さてと、商品はどんなのがあるかなぁ、ってウィンドウショッピング!

 遊んでるって?

 ちゃんと、調査だよ。

 露天商は、固定の人じゃないでしょ?

 どんな物が売られてるか、と、、僕らは、商人さんに聞き込みしながら、町の様子を体感するんだ。

 ウフ、腕が鳴るなぁ。

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