第170話 王様とのお話(上)

 王都タクテリアーナ。

 外側から農業地、工業地、商業地、そして、その頂に王城をいただく小高い丘。

 この丘はまるでソフトクリームの頭のように螺旋を描いて流れる川があって、その水路を主な交通手段としている。

 てっぺんには王城があるんだけど、その丘の山肌っていうのかな、その水路によって区切られる中腹辺りには、理事長が国王っていう、一応王立とは名乗っていない、エリート養成校がある。

 その上には騎士団関連の建物や、さらに上には官庁がらみの建物なんかがあって、まぁ、国の核が丘に集められている、といっても過言ではないかな。


 何度も言うように、てっぺんには王城があって、その周りは湖になってる。

 これにはいろんな伝説があるんだけどね、この王城がかつて現れ、勇者が討伐したドラゴンを封印するものとして存在してる、というのがそのおとぎ話。王様の一族はその勇者の末裔とされてる。


 ドラゴン。


 この世界でもドラゴンってのは伝説の生き物だ。

 かつて勇者が討伐したとされているし、ドラゴンの遺物なんかもあって、それが重要な国の道具になってたりもするんだけどね。

 かつていたんじゃないか、とか、ひょっとしたら人間のいない未知のエリアで生息してるんじゃないか、とかいろいろ言われてる。


 冒険者ギルドでね、かつて『夢の傀儡』が、遭遇または討伐したってのは本当か、って、何度か聞かれたんだけどね?あ、夢の傀儡って、かつてゴーダンとかが、ひいじいさんたちとやってたパーティね、僕が聞いても、みんなはぐらかすんだよね。

 このはぐらかしは、①話が事実だけど誰か(もしくはドラゴン自身)に口止めされてる。②ナッタジダンジョンのドラゴンのことなので言えない③夢の傀儡が強いっていう噂に尾ひれがついたもの、のどれかだと僕は思うんだ。


 ナッタジダンジョン。久しぶりに行ってみたいなぁ。

 あ、ナッタジダンジョンってね、もともと夢の傀儡で踏破して、ひいじいさんがダンジョンコアを手に入れ、そのダンジョンのダンジョンマスターになっちゃったっていう、ビレディオ領の砂漠にあるダンジョンなんだ。

 ダンジョンって、知られているだけでも大小それなりにあるらしい。

 でも、ナッタジダンジョンだけは趣が違う。

 なんせ、ひいじいさんが魔改造しちゃってて、夢のダンジョンを作り上げちゃったんだ。

 あのね、日本でゲームとか物語とかに出てくるベタなダンジョン、っての?スライムからはじまり、ゴブリンとかオーガとか、こうもりにマミー、それに宝箱。謎かけやらパズル、転位陣に中ボス、ラスボス。

 この世界のダンジョンってちょっとこういうものとは違うらしい。普通にその辺にいる魔物がちょっぴり変異体で出てくるんだって。ちなみに僕はナッタジ以外のダンジョンって行ったことないなぁ。一度行ってみたいとは思うけどね。


 まぁ、ナッタジダンジョンっていうのは、ひいじいさんが潜ってみたかったダンジョンをリアル再現しちゃいました、ってとこなんだ。うんダンジョンマスターの権限で作っちゃった。で、ダンジョンのラスボスはやっぱ、ドラゴンでしょ、ってことで、ドラゴン、あそこにはいます、はい。



 まぁ、そんな話はいいのです。

 というか、ちょっとばかり現実逃避で思考を飛ばしちゃってました。


 今、僕はこっちに来てるメンバー全員で、王城の小さめの応接室にいます。

 いっしょにいるのは、ティオ・ジネミアス・レ・マジダシオ・タクテリア陛下、うん国王様だね、と、ロディッシィ・マカラニオ宰相閣下。

 お茶の用意を済ませたメイドさんとかは、すぐに出て行っちゃった。

 ちなみに僕はどこにいるかというと、ソファの上・・・・の、王様のお膝の上、です。はぁ。


 この王様、ひいじいさんとはとっても仲よしだった、って主張してます。だから僕は孫みたいなもんだ、とか。

 うん、違うよね。孫ならママだし。てか、ひいじいさんの方は、ふつうの知り合いっていうか、ちょっと仲よしで一緒に旅したことあるよね、レベルの感じだったって、宰相閣下が言ってるよ。なんかね、ひいじいさんに側近になるの断られたんだって。


 それにしても、なんでそんなに気に入ってくれてるのかしらないけど、この王様、すぐに僕を抱っこしようとするんだ。もう僕6歳だよ、って言ったけど、じゃあもうすぐ抱っこできなくなるから抱かせろ、だって。もうアウトだと思うけど?

 髪の毛が短くなってることも随分嘆かれちゃった。

 僕からしたら、めちゃくちゃ伸びたなぁ、と思うんだけどね。

 この年でいうのもなんだけど、童顔で女の子にも間違われちゃうし、いっそのこと、ずっとスキンヘッドにしたいなぁ、て、言ったら、周りが無茶苦茶怒ったので、とりあえず伸ばしてます。

 この世界、魔力を少しでも上げる、とかいって、髪の毛長い人多いんだよね。短い人は素性を隠したい人も多いから、不良っぽく思われちゃう、っていうのもあるんだけどね。


 とりあえず、外聞を気にしなくちゃいけない人がこの部屋にいないってことで、普通の孫とデレデレおじいちゃんみたいなやりとりが、そこそこの時間かけてあったあと、王様は僕をお膝に乗せて、今はちょっぴり難しいお話しに突入中です。


 内容はザドヴァ国のこと。

 ことの顛末とか、現状とか、僕らの体験とか・・・ね。

 ことはそれだけで済むはずもなく・・・

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