第169話 王都の親戚ん家へ
久々の王都。
王様に呼ばれてやってきて、お宿に泊まろうとしてたら、ひいばあちゃんの実家に確保されちゃった。さすがに王都でも有力な商人さんは、諸々、情報量が違うね。どうやったか知らないけど、門を入ったその広場で、トーマさん直々にお迎えしてくれたよ。うんトーマさん。現リッチアーダ商会会頭にして、ひいおばあちゃんのお兄さん。
アハハ、今思い出してもちょっと笑っちゃうんだけどね。
トーマさんがあのリッチアーダ商会の会頭って知ったときのパッデの顔!
のほほんな感じで慌てるのも珍しいのに、あのあわてっぷりったら!!
広場でね、「ダー!」て、大きな声でトーマさんが呼んだんだ。
振り返ってすぐトーマのおじいちゃんだって分かったからね、両手を僕に広げているトーマさんに走って行って、腕の中に飛び込んだんだ。「トーマじいちゃん!」ってね。
そこへ、パッデってばニコニコと、ダー君の知り合いかい?ていうから、
「うん。ひいばあちゃんのお兄ちゃん!」
て、本当のことを言っただけなんだけどね。
「へぇ、そうなんですか。お元気そうで何よりです。私はこのたびダー君のところでお世話になることになった商人のパッデといいます。いやぁ、ひぃおばあさんの・・・それにしては若々しいおじいさんですねぇ。」
と、ご機嫌。
「これはこれはご丁寧に。うちのアレクサンダーがお世話になっております。私はリッチアーダ商会のトーマ・リッチアーダと申す者。お見知りおきを。」
言いながら、丁寧に頭をさげるけど・・・じいちゃん、さすがにそれはかわいそうだよ。だって・・・
「へ?リッチアーダ?リッチアーダ商会?えと、あの・・・あの有名なタクテリア聖王国でも1、2を争うっていう、へ?いや、あの・・・へ?坊ちゃまのひいおばあさまの、その・・・ひぇ?ひょっとして、リッチアーダ商会の関係者?え、えー?」
「一応、リッチアーダ商会の会頭をしております。」
「い、いぇーーーー?!ひゃっ、しっ、失礼しました!」
百面相を一人でしているパッデ。もうね、今にも逃げ出すか、土下座でもするのかと、面白っ、て・・・ちがうちがう、びっくりしちゃった。ハハハ。
そのあとは、なんとかみんなになだめられて、御者席に戻ったパッデ。
僕は、トーマさんの腕から逃げられず、ずっと抱っこでおうちまで連行、って感じでした。あ、おうちに着いたらついたで、女性陣の抱き枕にされちゃって、その日は、ほとんど床とこんにちわできなくて疲れたよぉ。
後で、パッデにはだいぶ文句言われちゃったけどね、なんで教えてくれなかったんだって。でね、どうしてもお屋敷を出てふつうにお宿でお泊まりするって。まぁ、リッチアーダの面々に、そんなに我が家が居心地悪いのかって悲しい顔されて、恐縮しつつ、結局はお屋敷でお泊まりすることになりました。
でもさ、パッデもパッデだって思わない?
ママがさ、この王都でリッチアーダ商会の見習いから、超出世してC級に駆け上がったリッチアーダ商会の隠し球、みたいな話って有名だよ?トレネーのギルドでだって、商人ならだれでも知ってるし、ナッタジ商会っていえば、後ろ盾にリッチアーダ商会がある、っていうのも常識。それを商人のパッデが知らないってのは、ねぇ。
外国の行商人風情が、そこまで知らないよ!って逆ギレされたけど、そこはどうかと思うんだ。だって、ナッタジ商会の商人なんだから、ナッタジ商会のデータぐらいちゃんと手に入れておこうよ。
リッチアーダのみんなとご飯食べてて聞いたんだけどね、てか、むしろ聞かれたんだけどね、ロゴの話。
以前、ロゴっていうか商標的な話は相談してたんだけど、ほら馬車につけたり船につけたりしたいと思ってたし。
聞かれたのは、お持ち帰り用の草の籠の話でね。
ぼちぼちと首都でもトレネーで流行っている、あのマーク付の草の籠が話題になってきてるんだって。おしゃれさんは結構持って歩いてるらしいです。首都でってビックリしちゃったよ。
でね、やっぱり偽造的な話、そろそろ出てるんだって。
まぁ、まだ中身より籠の方が話題らしくて、中古での売買もあるみたい。いや、もともと使い捨てレベルの草の籠なんだけどなぁ。
でね、ちゃんと本物なら、線に見えるこの焼き印、{ナッタジ商会}って繋げて書いてるんだよって見せたの。このあたりはまだ知られてないらしくて、みんなその精巧さにビックリしてたよ。フフフ、うちのカイザーはすごいでしょ。
これなら偽造なんてできないから、周知してくれるって。持つべきものは有力者の親戚だね。
みんなには、僕のナッタジ商会の製品のブランド化っていう戦略をお話ししたの。ロゴを入れることによって、これはナッタジ製です、って売るって言ったら、庶民の発想だけどすごいって。
なんで庶民の発想?
なんでもね、上流階級の人はね、直接見て触って、これは誰が作ったかって分かるっていうのが、まぁ、ステータスっていうの?私は目利きですって自慢できる、的な?
あとは、「すばらしいですわね、それはどこの商品で?」「これは、わざわざ○○より取り寄せた××作の新商品で・・・」なんて会話がサロンではきっかけになるっていうか、話題作りが上手な人ほど尊敬されるので、その余地が欲しいっていうことだそうです。
でもね、庶民っていうか中流以下ならいいものを持ってるかどうか、なんて、そんなに分からないでしょ?だからそこにロゴってのは、新発想で商売人としてはすばらしいってべた褒めしてくれました。
どうやら、これがナッタジの発想だって、ちゃんと発信して、ブランド力をアップしてってくれるみたいです。ちなみに、可能な限りリッチアーダ商会に卸すようにだって。ちゃっかりしてるなぁ。
商業ギルド経由だろうけど、僕らのザドヴァでの話も、大体知ってたみたい。僕の手配書は、ちゃんとなくなってるって。
良かったねぇ。
でね、ザドヴァの政権移行もつつがなく行われてはいる、ということです。
でも心配事が1つ。
どうもね、前の総統派が魔導師中心にそれなりに残っててね、僕らがいなくなった後、城への襲撃事件があったみたい。そのときに、捕まってた人達がだいぶ逃げた、と聞いたよ。
ひょっとしてリヴァルドも?て聞いたら、そこまでは分からないって。魔導師も兵士もだいぶ逃げられたんだって。まぁ、政権に返り咲くことはないだろうけど、まだまだあの国は安定しないだろうってことです。
パッデは心配だよね、そう聞いたら、上はともかく一般市民は大丈夫だって。ギルドの信頼、半端ないみたいです。
そんな感じで、お互いの情報交換をしてたんだけど、王城からお使いの人がやってきたよ。僕らがここにいることは、しっかりバレてるみたいで、3日後登城するように、だって。
パッデがまた青い顔してるけど、大丈夫だよ?
王様もふつうの優しいおじいちゃんだからね?
そう教えて上げると、まるで僕が非常識みたいにいろいろ言われちゃったよ。
いや、実際会えば、普通に孫に気に入られたくてオロオロしてるおじいちゃんだって、絶対に分かるから、ね?
だから僕のこと、困ったちゃん見るみたいに見ないで欲しいなぁ。
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