第166話 新しい仲間
なんだかんだで、季節が移るくらいの時間、僕とカイザーはザガでドワーフたちと親交を深めていて・・・
あ、ドワーフたちって言ってもね、本当はほかの種族もいるんだよ。
僕らみたいな人間族もいるし、獣人族も少ないながらいる。まぁ、メインがドワーフってだけだね。
物作りが好きで鍛冶をやりたいっていう人や獣人も、弟子入りするし、その中での婚姻とかもあるから、混血も進んでるんだって。
まぁ、獣人の人達は力仕事がたくさんあるから労働力として需要があるし、人間が商売相手になるから、人間もいたほうがニーズに応えやすい、っていうので、良い感じにいろんな人が住んでる感じ。
僕たちは行商人のパッデさんに送ってきて貰って、パッデさんもドワーフの物作りを楽しそうに見ていたから、この人たちと商売の話でもするのかな、って思ってたんだけどね、どうも2,3日で、首都に戻ったようです。
何か思うところがあるから、あちらへ戻って交渉する、って言ってたよ。
とってもお世話になったし、まぁ、なんちゃってパパになってもらったし、で、ちゃんと挨拶したかったけど、ヤーノンさんにパッデさんが行っちゃったこと聞いてびっくりしちゃった。僕たちがいない間に出てったみたいです。グスン。
僕らはいろんなアイデアを出したり聞いたり、でね、僕が考えるいろんな道具の開発を受けてもらっちゃった。
あのね、びっくりしたんだけど、長さの単位とかね、重さの単位とかね、一応あるけどとってもアバウトなの。なんかね、長さなんて、単位が日本語で意味を言えば、指、腕、歩なんだもんね。もちろん僕もそのことは知ってた。でも、ちゃんと同じ長さだって思うじゃない?なのにね、本当に人間の部位で計るんだって!
なんでも、成人男性の指だったり腕(手首から肘のこと)だったり歩幅って意味で、人によって違うの、分かるでしょ?
で、規格を作って、みんなで正確に単位を揃えたら工業化できるでしょ?その大もとの単位を作っちゃおうって思ったの。まずはこの集落だけでも揃えたら工業化も夢じゃない。それが全世界に広がったら、工業って一度に発展するはず。
てことで、単位の元をつくことに。
まぁ、ベースは普通の単位なんだけどね。
1指、1腕、1歩の基準となる棒を作っちゃおう!
てことで、カイザーが普通考えるよりも1.5倍くらい大きさの棒を作りました。
カイザーが言うには、僕の重力魔法で出来た金属をぎゅって圧縮したら、固い金属になるのでは?ということです。
物を浮かべたり、敵を地面に押しつけたり、ぐらいにしか使ったことがなかったけど、なるほど、理屈は分かる。最後にはブラックホールになる、のかな?ハハハ。
で、やってみました。
おおっ難しいね。ギュッ、はできるけど、均等に力が入らないからか、割れたり折れたりしちゃう。かなり強い金属棒になってるから、均等にかけれればうまく行きそうなんだけど・・・
何回も何回も、何個も何個もやってみたよ。
カイザーも何回も金属棒を作り直した。
たまに奇跡的にうまく固い棒になるようになるまで、何日もかかったんだ。
初めて出来た後は10回に1回ぐらいとはいえ成功しはじめた。
で、最終的にすべて同じ長さの、指用、腕用、歩用の棒が5つずつ完成。
本当はもっとできたんだけど、ピッタリ同じ長さにしないと意味がないでしょ?でぴったりになったのが5つになった時点で完成ってしたんだ。
これを長さの計りの元として、置いておく。
で、これを利用して定規を作って貰う。
すると、アバウトじゃない長さの指定ができるってわけ。
離れた土地でも、これを中心にサイズを決めたら、同じ規格で製品ができる。特に何かの部品を作るなら、大きな進歩だよね。
とりあえず、5組のうち1つ、ここの集落に置いておく。
これでサイズを決めるんだよって言ったら、最初はみんな?が飛んでたよ。
だから、ちょうどいいやってことで、復興に使うレンガを複数の工房に作って貰うことにしたんだ。実際そういう発注があったからね、その単位に、この棒からできた単位で作って貰うことにしたの。
今回発注は一般的なサイズのレンガって2指×2指×1腕なんだ。
それを、この棒を使って計って、作って貰ったの。
一応ね、工房ごとでは親方がチェックするからほぼほぼサイズは揃ってる。でもね、違う工房とだと微妙な誤差。まぁ、間にモルタルっぽいのでのり付けするから多少違っててもあまり気にされなかったみたいでね。
でも、規格どおりに作ると、当然ピッタリ同じサイズのレンガができる。
別の工房の物と一緒に使った時の見た目も強度も段違いに良くなってるのは、プロならわかるよね?
みんなが納得してくれたところで、発注先の大工さんができあがった壁が均等であまりにも美しくて驚いたってのは、また別のお話かな?
まぁ、こんな感じで、僕らがこの規格棒の単位で発注できるって環境が整いました。作った5組の棒は、1つはここに置いておくとして、1つは僕らが持っておくでしょ?後は、ジブにも欲しいってカイザーが言ってる。そのうち他でも欲しいってとこが出てくるかもね。少なくともうちの商会と取引するなら必須になるかもしれないな、なんて、ニマニマしちゃったよ。
とか、やってると、首都からみんなが戻ってきました。
あれ?パッデさんの馬車?
またお世話になったんだね。帰る前に会えて良かったよ。
そう思って向かえた僕だったんだけど・・・
「わざわざお迎えありがとうございます、坊ちゃま。」
「え?」
「ご報告が遅れました。私、このたびナッタジ商会にて勤めさせていただくことになりました。」
「へ?」
みんなを見ると、苦笑してる人、嬉しそうにしている人・・・
ん、ママは嬉しそう。だから、別にいいと思います。だけど・・・
「ねぇ、パッデさん、坊ちゃまはやめて。」
「坊ちゃまこそ、どうぞパッデ、と呼び捨てにしてください。」
「いや、だから、ね。」
「おいおい、お互い呼び捨てで良いだろう。ナッタジ商会は代々そんなもんだろうが。」
ゴーダンが、割り込んでそう言ったよ。
「私も、その方がいいよ。お外で必要な時だけ、ちゃんとすればいいと思うの。」
ママの鶴の一声で、パッデ、ダー君呼びになっちゃった。君も別にいらないんだけど・・・
そして・・・
「俺も、よろしく。」
そう言って後ろから覗いてきたのはバンミ?
「あ、タクテリアに帰るんだ?」
「いや、どうせ親はいないんだ。で、ナッタジってか、宵の明星で世話になることになりました。」
「え?」
「こいつは俺とアーチャで鍛えようと思う。筋は良いし、お前の兄貴分になれるだろ。それに、人の魔力を操作する訓練を受けてるみたいだしな。コントロールが上手いから、ダーのコーチにも持って来いだ。」
「ゴーダンさんの言うとおり。見習いとしてはダーの後輩だけど、先生でもあるって、微妙な立ち位置だけどな。よろしく。」
「よろしく?」
「なんで、疑問形だよ?」
「いや。ハハハ。もちろん歓迎するよ。てかコーチって?」
「ゴーダンさんとかダーの魔力を貰って魔法を撃つことがあるって聞いたからさ、ダーは魔法の融通ができるんなら、僕があそこでやった訓練が役立つんじゃないかと思ってね。ダーの魔力を直接触ってコントロールの仕方教えられるって、立候補したんだ。下手だろ、おまえ?」
うわぁ。
僕バンミの前でコントロール苦手なとこ見せたっけ?
「あの・・・鞭はなしで・・・」
「ハハハ。分かってるって。一緒に強くなろうな。」
「うん!」
こうして、新しい仲間が加わって、僕らはこの国をあとにしたんだ。
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