第163話 クーデターのあとは・・・
ザドヴァの首都ザドヴァーヤ。
いっぱい魔力使って、僕は1日寝てたんだって。
その間に、いろいろあったようです。
まずは、クーデター。
一応成功?
総統が一人で逃げちゃって、しかも秘密の抜け穴で捕まっちゃったことから、評価ダウン。なんだかんだで、軍人の強い国だから、一人で逃げるなんて行動は大ブーイングものなんだって。
本当の意味での黒幕リヴァルド。
ドクとガチンコやってたんだけど、ドクは周りに気を遣って、結界張ったり、ピンポイントの攻撃してたり、そんな感じ。それに対して、リヴァルドってば、お得意の土と風の魔法を組み合わせて、でっかい岩をトルネードみたいにところ構わずぶちまけたそうです。
で、ドクはものすごい数のそのでっかい岩をものすごいスピードで1つずつ小石から砂ぐらいに小さくして、アーチャとママで、冒険者がこの国の兵士とか一般魔導師が戦っているところに、壁を作って防いだんだって。
それに気がついた相手の人たちが、そんな様子を見て、次々に武器を捨てたらしいです。
味方の攻撃から敵に守って貰うなんて情けない、なんて、号泣してた人もいたとかいないとか。ちょうどそのタイミングで、例の甥っ子ってのが、部隊引き連れてこの部屋に入ってきたっていうのも大きかったって言ってたよ。
リヴァルドってば、狂ったようにそんな魔法を撃ちまくって、防がれまくって、そのせいで余計に怒り狂って・・・なんていう悪循環。最後は魔力切れで魔法がほぼ途切れた所に、同じ石を風で飛ばす方法でドクが魔法を真似て、手と太ももを打ち抜いたらしいです。それでジ・エンド。
後は、甥っ子殿が総統とリヴァルドを拘束し、留置。
その場には、リヴァルド派ともいうべき人達もいたけど、そもそも正当な指揮系統として総統の命令をきいていただけって人の方が多くて、甥っ子殿の、現総統こそ簒奪者なり、っていう宣言?ていうか雄叫びに、頭を垂れたんだって。
そんなかんじで、ただいまは、一応総統代理の甥っ子どのの指揮の下、お城の中をもろもろ再編中。ちなみに、病気で寝ているらしい甥っ子どのの父、すなわち、あの総統のお兄さんこそが正式な総統だっていう主張みたい。
で、正規に甥っ子殿が父から引き継ぐ形で総統になることが決まってる、らしいです。うーん、なんでそんなまどろっこしいことをするんだろうね?甥っ子殿が素直に総統やればいいのになぁ。僕にはよく分かりません。
まぁ、そんな感じで、お城はごちゃごちゃ継続中です。
で、その余波で、首都はざわついてる。
ギルドがズブズブで関係してるってのもあって、ギルドをのぞくのもちょっとなぁ、って感じだし・・・
まぁ、後始末のお手伝いっての?お城はドク、冒険者ギルドはゴーダン、商業ギルドはママが中心に連れ去られちゃったんで、僕はちょっぴり暇なんです。
だってさ、お外にいってもごたごたしてて、一般の人はおうちから出ないように言われてるから、お店とかも開いてないし。
「あー。退屈~。」
3日もこの状態でお宿に缶詰だと、ほんと、つまんなくて死にそう。
「アレクも堪え性がないのう。」
同じく居残り組のカイザーが、ウホウホって笑ってるけど、カイザーは楽しそうで良いね。
カイザーの元にはひっきりなしにドワーフを中心とした鍛冶師がやってきて、何か組み立てたり分解したりして、楽しそう。
この国には、ドワーフの鍛冶師は多い。魔導具とか、武器とかの需要が多いからね。この大陸にやってきたとき、ドワーフとかエルフや獣人も少なからずいたらしい。ただ、人数が圧倒的に僕たちみたいな人間が多くって、迫害とか奴隷化とか、そんな感じで、今はほとんどいなくなっちゃったんだって。
獣人は、主に軍事利用(!言い方!まったく嫌になるよね)。エルフは不明。時折冒険者にいる。で、ドワーフは、技術部門にかかせないってことで指定の場所に住んで鍛冶をする分には、人間並み(!これも嫌な言い方だね)の扱いを受けてるんだそうです。
ドワーフの技術者ってのは、そもそも物作りが大好きな人が多い。新しいものも好きだし、人を驚かせるのも好き。てことで、好きな仕事をさせて貰ってるってのもあって、あんまり総統が云々とかも気にしてないみたいです。
ドワーフってね、すごい技術を持つ人に対してのリスペクトがすごい。とまぁ、そんな気質も相まって、カイザーってば、実は有名人でドワーフにとっての自慢でもあるんだって。
てことで、現状。
噂を聞きつけた技術者さん達、次々に自分のご自慢の作品を持ってきてカイザーに見せてるんだ。だもんでカイザーは忙しくも楽しそうです。
「ねぇ、バンミ・・・」
「だめだから。」
「まだ何も言ってないでしょ。」
「どうせ外に行こうとか言うんだろ?ゴーダンさんたちにダメって言われてるじゃないか。」
「保護者なしじゃダメって言われてるだけだもん。」
「言っとくけど、俺はまだ未成年だから保護者になれないからな。」
「・・・・うー。あ、バフマ!買い出し行かない?おいしいもん作るのに必要でしょ。新しいレシピ教えるからさぁ。」
「ダー様。手持ちの食材で十分間に合いますよね。レシピは嬉しいですが、もうすぐ国に帰りますし、そのときにお願いします。」
「いや、だからね?」
「ダー様。私も保護者というには成人したばかりです。ゴーダン様の言う保護者には当てはまらないのは、分かってますよね?」
「・・・でもさ・・・」
はぁ。みんな平気なのかな、ずっと閉じこもってて。
僕はちょっぴりふてくされて、窓の外を眺めたんだ。
「おーい、アレク、ちょっと来い!」
その時、カイザーが僕を呼んだ。
お客さんとワイワイやってたけど、なんだろう?
「ほぉ、この子がカイザー様のご自慢の子供かい?自慢したいのも分かるな。ほんにかわいいのぉ。ハッハッハッ。」
「えっと・・・」
「アレク、これをどう思う?」
カイザーが僕に何かを渡して来たよ。
ちょっとギザギザした鉄の棒?
「何に使うと思う?」
「えー。殴ったりとか?いやでも小さいよね。なんかキャンプ用品みたい。」
「だとしたら?」
「え?火起こしの道具?」
なんかこんなギザギザした金属の棒こすって火を熾しているのを見たことがあるような・・・
「おおーっ!」
「な、何?」
そこにいた、ドワーフの人達が、なんか僕の答えを聞いてざわめいたよ。ちょっと怖いんですけど。
カイザーを見るとニヤニヤしている。
「な、こいつはすごいじゃろ?」
「本当です。いやぁ、儂らのいろんな道具見せてみたいなぁ。これを見ただけで火起こし、なんて思いつくんなら、他にもいろいろ思いつくんでしょうな。」
いや、僕のひらめきとかじゃないし・・・
「坊、どうやって使うかわかるかい?」
「え?火がつきやすい金属かなんかの粉に火花散らすんでしょ?」
「そうなのか?」
「え?」
「え?」
・・・・・
「ハッハッハッハッ・・・。どうじゃ。おまえさんらとは違う知識をうちの坊主はもっとるだろ?ベースは儂と同じ、いや、こいつの方がよっぽどすすんどる。」
「こりゃおったまげた。」
「カイザー様、是非彼を!」
「まぁ、いいじゃろ。のうアレク。ザガに遊びにいかんか?」
「ザガ?」
「ほれ、港の近くに工場地帯があったしゃろ。彼らはその辺りの鍛冶師じゃ。魔法じゃない技術に大層興味があるそうじゃて。おまえさんも見てみたくないかのぉ?」
「え?いいの?」
「保護者がいれば、ゴーダンもなんも言わんじゃろ。」
「マジ?行く!行きたい!」
「よしよし。じゃあ行くか。」
善は急げ。
伝言はバンミとバフマ。
リュックの中から、必要そうなものをバフマにいっぱい渡して、さぁ、出発だ!
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