第142話 仲間との再会
今、僕は、森の中。
ヨシュ兄の腕に抱かれて、ちょっぴり寝ちゃってました。
んとね、教練室3の奥に習熟室3の扉を見つけて、開こうとした僕を見つけたヨシュ兄が接触してきたんだけど、そのまま、拉致?、へへ、教養所の外の仲間が隠れているとこに連れてこられました。
そこにはね、アーチャとバフマがお留守番してた。
でね、後はミラ姉とセイ兄がいるんだけど、教養所の中で捜索中、なんだって。
ヨシュ兄、僕が教練室に入るところを見て、慌ててそこを張ってたらしい。でね、生徒とか教官がゾロゾロ出てきたのに全然僕が出てこなくって心配になったから、思い切って部屋に忍び込んだんだって。そしたら僕が1人で部屋にいて、ドアに向かって歩いて行ったけど、斥候の感、ていうのかな?まぁ、扉に触れちゃダメって思って慌てて僕の手を掴んだんだって。
「肝を冷やしましたよ。」
この隠れ家についてヨシュ兄の一言目が、それでした。
僕も肝を冷やしたよ。
誰かに見つかって捕まったと思ったから。
で、僕を捕まえたのがヨシュ兄で、目の前にヨシュ兄のちょっと怒ったような顔があったけど、もうその顔を見たら我慢できなくて、思わず顔をハグしちゃった。
大声出しちゃダメってのはさすがに頭にあったから、声を頑張って押し殺したけど、頭に捕まって声を殺して泣きじゃくる僕を、ヨシュ兄ったら、しっかり抱き直して、僕の頭を自分の胸にしっかり押しつけるようにして、ビュン、て走ってくれたの。で、気がついたら、僕はここにいて、アーチャとバフマの顔を見たら気が抜けちゃったみたい。「もう。肝を冷やしましたよ。」っていうヨシュ兄の声を聞きながら、どうやら僕は夢の中、だったみたいで・・・
ヨシュ兄の腕の中でぼんやり目を覚ましたよ。
起きると、セイ兄もミラ姉もいたんだ。
ずっとみんなの顔が見れてなくて、僕はエアの連絡もあったし、全然大丈夫って思ってたけど、本当は全然大丈夫じゃなかったみたい。二人に順番にハグみたいな抱っこみたいな挨拶されて、頭を撫でられて、セイ兄からはヨシュ兄の告げ口にゲンコ貰って、バフマのお茶を飲んで・・・僕は、ずっと笑ったり泣いたり、心の中がほっこりしてることに、今気付いちゃったよ。
「このまま、ここにいる?」
ミラ姉が聞いてくる。
「そうだよな。この場所が特定できただけでも御の字だし、探るだけなら、どうとでもなる。」
セイ兄も頷いている。
「さすがに、魔導具が多くて簡単にはいきませんが、最悪戦闘になっても警備は薄いですし、ダーが捕まることの面倒を考えると、合流して作戦遂行の方が安心ですね。」
と、ヨシュ兄。
「あぁ。目を離すとちっとも言うこと聞かないってことが分かったしな。」
セイ兄ってば、睨むけど、違うよ?教練室の見学はOKって言われたから、堂々と見学しただけだからね?
「習熟室、でしたか。あそこは別枠で結界なりが施されているようでしたよ。ダーがあのままドアノブに触れていたら、今頃どういう騒ぎが起こっていたことか・・・」
・・・そこは、反省してます・・・
「まぁ、基本的には、あの最初の結界で安心しきってるんだと思うよ。中からダーが教えてくれたから超えられたけど、僕やエアでも気づけなかったし。」
僕がヨシュ兄たちにうだうだと言われているのを見かねてか、単なる時間がもったいないと思ったのか、アーチャがそう言って、僕を二人から取り上げるように抱き上げたよ。
「こうやって、無事目的の施設も発見できたし、ダーのお手柄でしょ。だからもうここまでで、ダーの潜入は終わり、いいよね。」
「うー・・・ヤダ。」
アーチャが言うのも分かるけど、みんなももういいて言ってるんだけど・・・
なんか中途半端だし・・・
一緒に連れ込まれた子たちも気になるし・・・
ナハトやその他の子供たち、ううん、ここで出会う教官たちだって、なんか、ヘン。みんな感情がないんじゃないか、って思うぐらい関心とかそんなのなくって、言われたことを淡々とやってるっていうか・・・
まだそんなに来てから経ってないし、全員に会ったわけじゃないし、でもね、なんか放っておけないっていうか、間違ってるっていうか・・・
うーん。
そう。
全然幸せっぽくなくて。
僕はママと幸せになることが夢だけど、それは周りにいる人が幸せじゃないと成り立たないって最近思うの。でね、ここでこんな風に無関心に淡々としている人達がいるのを知ってしまって、もしかしたら僕らでここをぶっつぶすかもしれないけど、そうしたらこの人達はどうなるのかな?って思っちゃったら、僕・・・そうだ、僕が嫌なんだ。
「ヤダ。」
僕はもう一度そう言った。
そんな僕を見て、やれやれって顔してる。やれやれって顔をしながらもなんか笑顔だ。
アーチャだけじゃなくって、ミラ姉もヨシュ兄もセイ兄も。フフフ、バフマはいつもどおりのアルカイックスマイル。
「ヤダじゃないよ。ダーはどうしたいんだ。」
セイ兄がアーチャの腕の中の僕の頭をガシッと掴んで自分の顔を見るように向けると、そう言った。ちょっと怒ったような睨むような怖い顔してる。けどね、僕は知ってるよ。全然怖くない。ちゃんと僕で決めたらつきあうぞ、って顔だもんね。
「僕は戻って中から様子を探るよ。習熟室ってところが多分問題。本当は僕がそこに連れて行かれるのがいいかもしれない、って思ってる。ほら中からだと簡単でしょ?」
「危険だ。」
「うん。でもセイ兄たちが来てくれるでしょ?」
僕はニコッてしたよ。
セイ兄は僕の頭を掴んでいた手を離して、自分の頭をガシガシ掻きだした。フフフ、僕の勝ち~!
「はいはい。じゃあダーは潜入を続けるとして、今の状況、情報を確認しますよ。」
そんな僕らのやりとりを見て、パンパンって手を叩いたヨシュ兄が言う。
僕は、アーチャから飛び降りて、はぁい!って力強く挙手したよ。
「はぁ、まったくあなたって子は。・・・まぁいいでしょ。まず、ここのことから。ダーはどう聞いてます?」
「んとね。正式名称は国立魔導隊付属教養所。単に教養所って呼ばれてる。連れてこられた子どもたちは男女別に5,6人ずつ部屋を与えられてるの。服もご飯も勉強も全部決められてて、まず連れてこられた子たちは魔力の道を通されるみたい。一人ずつ同じような髪の教官がついて、通すって言ってた。」
「ダーはどうして一人だったんですか?」
「僕の髪が短かったから、かな?ちょっと伸びてきたけど、この長さじゃはっきり分からないから、もうちょっと伸びるまで待つって言われた。」
「ずっと放置なのか?」
「ううん。午後から座学だって。午前中は僕は好きにして良いって言われた。教練室の見学は自由だって言われたから、あそこに入ったんだ。」
「一人残ったのは?」
「えっとねぇ。一人倒れたの。でね、教官の一人が奥の部屋へ連れて行った。誰もそのことは気にしてなくってそのまま訓練は終わったんだ。そしたら玉を回収してみんな出ていったの。僕は連れてかれた子が気になって、それであのドアのところに見に行ったんだ。」
「玉、ですか?」
「あ、そうだ!そう。玉だよ!なんかね、ガーネオたちが持ってたやつの簡易版みたいな魔法陣が埋め込まれたやつ。そこに魔力を込めるのが訓練だったんだ!」
僕の話を聞いたみんなは、なんか頷き合っていたよ。
どうやら、僕らを転移させた魔導師も同じようなものを持っていたけど、ドクがずっと色々調べてたから、ある程度分かったこともあるんだって。基本的には強引に魔力を吸い上げ、その魔力で別の強力な魔法を発動するってものみたいで、魔法発動に必要な魔力を強引に発動させた魔導師から奪うから、その魔導師は良くて失神、基本死亡っていう物騒なもんみたい。
人によって魔力量って違うでしょ?その人の魔力量をちゃんと知って、死ぬまで搾り取ったら使える魔法を組み込んだペンダントだったりの魔法陣を渡してるんじゃないかってドクは推測してるみたいです。
死んだら終わりじゃんって思うでしょ?
ちまちまと魔法を使い続ける兵器も必要なら、ここぞというときにどでかい一発用っていう兵器も必要、そう考えるのがザドヴァという国、ていうか、筆頭魔導師リヴァルドの考え方、のようです。うん。魔導師は兵器扱い、って、・・・僕、絶対お友達になれない人だよ。
「ここは、主にそのでっかい一発用の人材を作る研究所って感じね。」
ミラ姉が言ったよ。
ミラ姉も忍び込んで、事務所的な部屋で、ここにいる子の名簿みたいなのを見つけたみたい。でね、基本、平民の子だって。あとは下っ端軍人の子もちょっといるみたい。他には外国から掠ってきた子、とかね。
一応、名誉な魔導師として魔法庁へ登用された形だね。で、でっかい一発がどの程度のものに耐えられるかも見極められつつの、それを使うまでのお仕事もできるように、っていう教育が施されるところ、らしい。
セイ兄が教官の部屋を物色したところ、そんな感じ。
ここの教官たちも同じようなルートで、でっかい一発の前のお仕事として教官をあてがわれてる、みたいな感じのようです。
うーん。
聞けば聞くほど気に入らない、よね?
こんな、人を人とも思わないシステム、外国だからって放っておきたくないよなぁ、って思う。
ダメかなぁ?
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