第140話 教養所
『ダー様、ここ嫌い!』
現れるやいなや、エアはプリプリしながら、そう言ったんだ。
『どうしたの?』
『ヘンな魔力がいっぱい。人間の悲鳴、いっぱい。内緒の場所いっぱい。』
うーん・・・
エアの言葉は、色々難しいよね。
感覚的なエアの言葉をゆっくりと確認していくと、どうやら、1階にはいくつも、馬車と同じようにエアが入れない場所があって、その奥は多分、種々様々な気持ち悪い魔力が満ちている気がするんだって。中が分からないのに?て聞いたら、分からなくても、本能でこれはダメ!ってわかる、ということです。うーん。
人間の悲鳴、ってのは、どうやら心の声かもしれない。
僕らの耳に聞こえるのじゃなくて、感じる悲鳴だって。
それは誰かな?って聞いても、いっぱい、なんだそう。
そういうことなら、僕が行った方が早いかな?
エアに言って、僕もエアと同じ次元に、って言ったら、仲間が側にいないからダメだって。ドクに、失敗して僕が消えたらどうする?って脅されたみたい。ハハハ。
じゃあ、こっそり普通に忍び込む?
迷った振りしてウロウロしても、大丈夫な気がするし。
そう思ったけど、それもダメだって。
なんかね、すでにこの建物に仲間が忍び込んでいるようです。
ずっと僕の乗った馬車を追いかけてきたみたい。やっぱり曲がり角で見失ったらしいけどね。すぐにエアの誘導で、道を見つけて、ついてきたんだって。
エアが言うことだからはっきりしないけど、どうやら何人かはそこで別れたって。
ママと、ドクとカイザー、そしてゴーダンかな?多分離脱したのはそのへんっぽいです。離脱するときに、エア以外の仲間と接触するまで、おとなしく魔導師たちの言うことを聞いておけ、っゴーダンとかドクが言ってたらしいです。
ので、しばらくは、ナハトさんの言うことを聞いておとなしくするしかないのかな。
夕方になって、ナハトさんが戻ってきて、寝ているアホルと僕(僕は寝たふりだったけどね)を連れに来ました。
ご飯のもらいかたと食べるとこの指示だったよ。
で、3人でご飯食べて、シャワーにも連れてって貰って、その日は就寝。
あ、あと二人いるはずの同室の人は帰ってきませんでした。ナハトさんは、すぐにわかる、だって。うん。こればっかりだなぁ。
翌朝。
僕らはナハトさんのいう指導室っていうところに行きました。
ナハトさんはすぐにどっかに行っちゃって、僕とアホル、そして一緒に連れてこられたククルとゾエアンも一緒にしばらくその部屋で待ちます。
しばらくして大人の魔導師がやってきました。
大人の魔導師のことは『教官』って呼ぶんだって。どの人も教官。
そもそも、なんかおそろいの格好だし、フード付きのマントを目深に被ってるから、身長はともかく体型も性別もあんまり分かんない。声が一番ヒントだろうけど、声でも謎の人もいそうです。
教官が言うには、この施設は『教養所』って言うんだって。正確には国立魔導隊付属教養所。有望な子供を集めて特殊訓練を行うエリート養成施設、ということらしいです。
でね、ここ指導室は、主に座学=講義をする場所なんだって。
他に教練室が大小6部屋、習熟室がこちらは数も秘密だそうです。
んとね、教練室は魔法を実際に使う、そんな訓練用のお部屋。習熟室は秘密の特訓用のお部屋で、ここの部屋で行われたことは絶対に誰にもしゃべっちゃダメなんだって。どの習熟室を使った、とかもダメだそうです。怪しさマックスだね。
ある程度そんな説明がされた後、何かの合図をしたと思ったら3人の教官が入ってきました。
「まずは魔法の通り道を通す訓練から始めます。」
最初からいた教官がそう言ったよ。
確かみんなは7歳と8歳だよね?ちょっと早くない?もちろんさらに年下の僕が言うのも何だけどもね。
「通り道を通すには少し早いと思うかもしれない。通り道を通すことにより体が変わる。そしてそれに耐えられない場合もある。が、この時点で耐えられないようでは、エリートたり得ない。まずは、適性を見るという点からも、これから1旬から2旬にかけて、道を通す訓練を行います。」
聞いたときは無茶苦茶、と思ったけど、なんだ、のんびりと通していくってことだね。って僕は思ったんだけどね。
ハハハ、雰囲気的には、子供たち、自分たちの年が幼いことと、そのスピード感にビビってるみたい。
こういうのを見ると、今更ながらゴーダンって無茶苦茶だったんだな、って思うね。そりゃミラ姉も怒るはずだよ。
でね。
後から入ってきた3人。
どうやら僕以外の3人に専属でつくようです。
3人がフードをとって、なるほど、って思ったよ。
それぞれ担当の子供たちと似たような色合いの髪の毛をしてるの。ていうことは属性が似てるってことだよね。
ククルは緑。ゾエアンは赤。アホルは青。それぞれの担当者も同じような髪色です。僕は知らなかったけど、ひょっとしたら、属性が近い人に通して貰う方がいいって、ここの人達は考えてるのかもしれないね。たくさん魔導師がいたらそういうチョイスもあり、ってことかな?
でも、あれ?僕は?
まさか!と思って、背中に冷たいものが走ったよ。
僕はもう魔法の通り道が通ってるってバレてる?手配中の子供だってバレてて連れてこられてる?
「行商人パッデの子ダー。あなたの訓練は保留です。」
最初からいた教官がそう言ったよ。
「少し髪が伸びるのを待ちましょう。今の長さだと、正確な色合いが分かりません。研究では、同じ色合いの人間に通して貰う方が、事後の訓練の進みが違う、と分かっていますからね。髪が伸びるまでは、座学を中心に行います。字は読めますか?」
僕は、少し首を傾げたよ。だって、僕の年で完全に字が読める子は少ないと思うんだ。そもそも識字率は高くないんだよね。
僕のことは行商人の子だと思ってるから、字が多少読めてもおかしくないけど、完璧にはどうなんだろう?
僕のそんな様子を見て、まずは字を覚えましょう、って言ってきたよ。
どうやら、僕が魔法を使える、とは思ってないみたい。ちょっとホッとした。
僕の手配と、ここの施設は関係ない、のかな?
どっちにしろ、今はまだ爪とかわんないぐらいの長さしかないから、手配書とくっつかないのかもね。一応今の僕はパッデさんの子=この国の子って思われてるから余計に思いもしないってのが正解かも、です。
今の感じだったら、みんなが訓練している間、僕はフリーになるか、字のお勉強だけって感じかな?エアはだめっていってたけど、さりげなくブラブラして、人の数だとか、施設、特に習熟室の秘密とか、その辺を中心にチェックするのが良さそうです。教官に聞いたら、教練室は見学OKだって。魔法を実際に見るのはいいこと、勉強熱心でよろしい、って言われたんだ。
てことで、みんなも担当教官に連れられてどっか行ったことだし、僕は、さあ教養所の探検へレッツゴー!!
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