第130話 ギルドで情報収集
ザガの町並みは作られた感がすごい。
きれいに縦横に大きな道路が走ってる。
港からまっすぐ南へ向かうメインの道路なんて、馬車が5台は余裕で並べるね。
そして人の歩くところ、主にシューバだけど、家畜を連れて歩くところ、馬車の走るところ、と決まっているみたい。渡るとき以外で、他の道を行ったら、憲兵さんがやってくるんだって。
モノトーンの服じゃない人は、外国人。そういう発想もあるから、道を歩いていたら、ことあるごとにルールを教えてくれる。割と僕らみたいな外国人も多いんだけどね。地元民、とっても親切です。
そう思っていたら、
「目の前のルール違反を見逃したら、それも罪になる。外国人が知らずに破ったら、近くにいる人も憲兵に連れて行かれる。」
ということらしいです。
これは、ミラ姉の情報。
なんかね、僕らがナスカッテ国へ行っている間に、何度か、ミモザからここへと貿易する商人の護衛をやったんだって。
海は危険だけど、一応同じ大陸。沿岸沿いなら、危険度も下がる。てことで、ミモザの復興支援で、ミモザに滞在していたミラ姉だとか不屈の美蝶の面々は、何度かこことの交易船に乗ったらしいです。まぁ、普通の貿易船でも5日もあれば十分着くもんね。時間だけで言ったらトレネー・ミモザ間より早いかも。
ということで、ザガの町は何度か目のミラ姉がガイド役です。
といっても、知ってるのは、さっきのルールの説明と、泊まったらいいお宿、そして各ギルドの位置ぐらいだけどね。
お仕事で来ただけだし、雇用主たち、あんまり長期滞在をやりたがらないので、ほぼとんぼ返りに近い日程なんだって。
それでも知らないよりはマシです。
てことで、おすすめ宿屋で、今日の宿泊先をゲットします。
外国人が安心できるお宿ってことで、ミラ姉いわく、港の近くがいいんだって。
町の中央部には、このでっかい道路を行けばいいし、そのあたりでも立派な宿はあるんだけどね。そういうところはこの国のお偉いさんが泊まるからトラブルが起きやすいんだって。で、お偉いさん方は、外国人が嫌いだから、港付近の外国人御用達のお宿には、ほぼ来ない。無用なトラブル回避には、こういうお宿で泊まるべし、だそうです。
あ、それにね、外国人はほとんどが貿易をしている商人。まぁ、基本お金持ちで情報通。どこのお宿が良いよ、っていう情報は共有されてるそうで、悪い評判が立っちゃったら、取り返しがつかないことになります。
ていう観点からも、港付近の外国人大歓迎のお宿が正解、てことのようです。
港から中央付近に歩いて行く途中、ミラ姉おすすめのお宿を確保。
そのあと、ママとアン、ヨシュ兄、カイザー、バフマは商業ギルドへ。
残りの、ゴーダン、ドク、ミラ姉、セイ兄、アーチャそして僕は冒険者ギルドへ。
なんかね、町ごとにギルドもルールが違うし、無用のトラブルを避けるためには、新しい町へ着いたら、ギルドへ行って、しばらくここらでお仕事します、の報告をした方がいいんだって。やらなくてもいいんだけど、情報もいろいろ仕入れられるし、活動の補助もしてくれる。
もちろん人のつくる組織のこと。
土地のエライ人と癒着、なんてこともいっぱいあります。
でも、基本的には、冒険者も商人も、ギルドっていうのは国を超越した独立組織。
どこかのギルド長が悪さしてるよ、て分かれば、新しい人に替えるシステムだってある。
名目上は、ギルドはギルド員のための組織で、国の意向に左右されない、ってことになってるんだ。まぁ、あくまで理念であって、実際には、土地の有力者とある程度良好な関係を保たなきゃ、仕事にならないから、その辺りのさじ加減が、支部によって様々、てところだね。
情報ではザガ、というのは、唯一の外との接点ある町。
商人が自由を求めて、我が国に逃げてきたとはいえ、それはもう随分昔の話。
今では、交易の重要性から、ある程度の自由が商人にも認められているし、その唯一の拠点がここザガ、といえばいいか。
で、商人にとっては、その身辺警護は冒険者にかかってる、てことで、この町では商人と冒険者が多いんだって。
あと多いのは、職人さん。
東側の山脈は、踏破できるような山じゃないけど、そこそこの資源はある。
そこで資源を採掘し、加工するような集落が、山肌の下方には点々と存在している。大げさに言えば工場地帯を、その東側に内包するのがザガの町なんだ。
職人さんは、作った製品をこの町に持ち込む。
商人ギルドに加盟している者も多く、販売委託や自分で販売できる許可、を得て、この町で売りさばくんだ。
露天商で、武器や防具、その他、各種道具を販売しているのは、この商売できる許可を得て、店開きをしているんだって。
ザガは、この国で唯一、外国人を受け入れ、自由に商売の出来る町。
てことで、ナッタジ商会としてママたちが商業ギルドへ行き、貿易をする調査をしにきた、と、活動許可をゲットする。そのほかにも、この国の商業の現状から治安、禁足地、その他諸々の情報を得るつもりのようです。
一方、僕ら。
受付にはゴーダンが一人、パーティ宵の明星が、しばらくこの国で活動する、と報告。魔物分布や、この国の特殊事情を書いたリーフレットを購入する。
残りの僕らは待合いスペースでくつろいでいたんだけど、ゴーダンに呼ばれて近づいていった。
何かあったのかな?
「ダー、お前のカードを見せてやれ。」
ゴーダンが、ギルドカードの提示を要求。僕は、胸元からカードを出して、ゴーダンに渡した。
ゴーダンは、それをそのまま受付のおじさんに見せる。
「うーん、間違いはないようだが・・・」
「何かあったんですか?」
ミラ姉が言う。
「あー、その子の年齢だと、見習いでも早いんじゃないか、とね。」
おじさんが、そんな風にいう。
「違うだろ!まぁ、こっちもこの国の常識とか分かってなかったのは申しわけないがな。この野郎、俺たちがダーを誘拐して連れ回してないか、本当に俺の見習いなのか、って疑っててな。」
「あー、まぁ、仕方がないのぉ。ダーは見習いにしても、ちと若すぎるからのぉ。」
「いや、疑ったのは悪かった。この国では10歳までは強制的にどこかの学び舎にいかなきゃならねぇんだよ。5歳ぐらいで、才能をチェックされて、そのまま学び舎が決められるんだ。だから子供がこんなところでうろうろしているのは、異様に思えてな。しかし、何のためかしらんが、こんな小さな子に冒険者は危険すぎるだろう。」
「いや、十分戦力だぞ。」
僕らの話に聞き耳を立てていたらしい、冒険者たちがそのゴーダンの言葉を聞いて、笑った。
「おいおい、外の国じゃあ、おままごとでも通用するのかねぇ。」
「冒険者じゃなくて、子守の集団じゃねえのか?」
「いや、じじいもいるし、なんだか舐めまくったパーティだなぁ。」
「金持ちの道楽じゃねぇ?ああやだやだ、金に飽かせて、結構な武器まで持たせて貰ってるぜ。」
冒険者たちが口々に言ってくる。
「うるせぇ!べちゃくちゃと人の噂ばかりで、昼間っから飲んだくれてる奴なんかに、うちの見習いが負ける要素、ねぇな。」
ゴーダンが無駄に煽る。
いや、多分面倒ごとを一気に片付けるには、力を示すのがてっとり早いんだけどね。見る限り、剣だけでも半分以上に勝てそう。自分の剣を役立たずにしたくなくて、ずっとエッセル島では剣のお稽古に力を入れていたからね、随分上手になったと思うんだ。
「ハッハッハッ、その子、お嬢ちゃんか?かわいい顔に傷をつけたくなかったら、さっさとあやまんな。」
有力者っぽいでっかいおっさんが、そんな風に言ってきた。
「僕、男だよ。おじちゃん、勝負してあげようか?」
うーん、魔法なしじゃ、ちょっとしんどいかなぁ。
トラブル避けるために、一応魔法の使用は禁止されてるんだ。僕の年齢で普通はまだ使えないからね。
「これはすまなかったな、坊主。だがさすがに気張りすぎだ。おい、イッサ。お前、相手してやんな。」
どうやらパーティメンバーらしい若者に声をかける。
成人したてぐらい?
おっさんよりは随分弱そう。
「こいつは、こう見えて、Dランクだぞ。坊主、今なら、謝れば許してやるぞ。」
D?だったら大丈夫かな?
魔法、使いそうにないし。
槍、かぁ。
どっちにしろリーチが違うから、関係ない。
「ちょっと、あんたら。平然としてるが、イッサは強いぞ。こんな子に危ないことさせるなよ。」
受付けが、焦った感じでみんなに言ってくる。
「おい、聞いてるのか?あいつは子供だからって容赦するような奴じゃないんだ。危ないからやめさせろ。」
ハハ、なんか新鮮。いつもはギルド側から僕に模擬戦しろって言ってくるのに、今回は止めてきたよ。
「僕大丈夫だよ。で、どこでするの?」
「地下の訓練施設だ。安心しな。刃は潰した訓練用武器を使う。」
えー、僕の剣使わないの?
ちょっと不利でしょ?重さとか長さとか、いろいろと・・・
「大丈夫だよ。前といっしょで、ダーは短剣を剣替わりに使えばいいさ。ちょうどいいハンデじゃないかなぁ?剣だけなら、思いっきりやっていいから。」
訓練所まで行くと、無造作に箱につめられた各種の武器から、セイ兄が短剣を見繕ってくれて、そうアドバイスをくれたよ。
思いっきりやっていいんだよね?
はじめ!の合図で、向かい合った僕とイッサは同時に土を蹴ってかけ出した。
って、遅っ!
僕は、そのまま剣を平行にしてすれ違いざまスネに一撃入れる。まぁ、これは身長差で仕方ないよね。
相手は躓くように、たたらをふむ。
僕は振り返りざま、イッサに向かってジャンプ。
思いっきり振りかぶって、背中に剣を叩きつけた。
うっ!
と、イッサは声を出し、地面に叩きつけられる。
僕はそのまま、イッサの背中に着地、首筋に剣を当てた。
うん10秒もかからなかったね。
これ実戦だと、とっくに死んでるよ。
はじまるまでは、いろんなヤジを飛ばしていた見学者たちも、シーンとしている。
立ち会いのギルドの人、そこまで!て言ってくれないけど・・・
どうする、コレ?
もっとやった方が良いの?
僕は、立ち会いに目線を送る。
「スゲー」
誰かがささやくように言った。それをかわきりにウォー!って雄叫び。
そのおかげで立ち会いの人が我に返って、「そこまで!」て言ったよ。
ていうか、D級弱すぎない?
なんか、足下で伸びてるよ。
ま、こういう場合は、放置でいいよね?
僕は背中から飛び降りて仲間の元へ。
突進してくる冒険者を避けて、ゴーダンによじ登る。
「でだ。うちのパーティ、最弱の剣士がこれだが、なんか問題あるか?」
僕を指さしながら、ゴーダンが受付けの人に言う。
受付けのおじさん、プルプルと首を振り、そのあとは、こちらの言うまま、いろんな情報をくれました。
まぁ、おおむね、順調、てことですね。
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