第129話 ザガの町
グレー。
ザガの町の第一印象は、そんな感じ。
白と黒とグレー。
いろんなグレーがあったけどね。
道も建物も、グレーの石を切り出して使ってるみたいで、重厚っていうのかな?
町の北側は、うん、港だね。
港町っていえば、僕の知ってるのは、まずミモザ。
明るく陽気なイメージ、かな。ちょっぴり荒くれ者っぽい人がガハハハって笑ってる感じ。他の町よりもなんかたくさんの色が溢れてる。
あとはトゼの町。
ほとんど隠れてた感じで、港はほぼ知らないけどね。
あっちは、木が多い。
だから色で言えば茶色っぽい?
そしてここザガ港。うんグレー。黒寄りのモノトーン。
町ゆく人も、ダークな色合いが多い。
だって、今は夏だよ?
なのに着崩した人とか薄着の人はほぼいない。
でっかい船から荷の積み卸しをしている人でさえ、ちゃんと服、しかも長袖長ズボン。よく見ると制服、なのかな?船ごとに同じような服を着てる。
町中でも、制服かもしれない、って人が多い。
単に流行かもしれないけど。
基本は長袖長ズボンにベスト。
上が生成りからグレーで、下がグレーから黒といったモノトーンコーデ。
男も女もそんな感じ。
グレーの色合いでおしゃれだか制服だかの差が出てるかな?
あとは、ポッケ。
ポッケがいろんなところについてるんだ。
でっかいの、ちっさいの。
前、うしろ、横。
ちょっと面白い。
助かるのが、帽子率が高い。
僕は緑色の帽子を被ってたんだけど、港に入ってすぐにあった雑貨を売る露天商で、こっち風の帽子をゲットして被ってる。
外国人あるあるみたいで、この国の人じゃないよなっていう商人とか冒険者も帽子をゲットして被ったり、お土産にしてるみたい。
お店のおじちゃんに
「どうしたんだい、その頭?怪我かい、病気かい?可愛い顔してるのにかわいそうに。」
って言われた。
かわいそう、なんだ・・・
みんなの顔を見ると、笑いを隠してのしたり顔。
この国の人じゃなくて、この世界の人の感想らしいです。
反骨精神旺盛な若者か、病気か怪我。あとは剣や魔法のお稽古で斬られちゃったり燃やされたりしてってこともあるらしい。下手同士の模擬戦だったり、先輩がペーペーをいじめたりする手段。・・・・あっ!
一度、そういやギルマスだけじゃなくて受付のお姉さんとかスタッフいっぱいに囲まれて怒られたこと、あったよ。いつもの簡単なお仕事=調子に乗った新人教育のために、最年少の僕がこてんぱんにする、ってやつ。
僕は一応、3歳になる前から剣技も習ってたし、お遊びの素振りなら、それこそ1歳からやってたしね。力は劣っても、成人なりたてのお兄さんお姉さんになら、技やスピードを使って勝つことは出来たんだよね。
ちょっと村で強かった、なんてレベルの剣を持ちたての人に負ける要素はない程度には鍛えられてました。1対1で、4歳の子に15歳が剣で負けるの、けっこう来るらしいです。
まぁ、ふつうは剣で相手をするように言われてたんだけど、パーティ相手とか、本当に剣ができる相手だと、魔法も許可されました。弱いやつだけ、だけどね。
であるとき、4人組のパーティ相手で、向こうにも魔法を使えるのがいたり、リーダーが17歳だったかな?そこそこの腕の剣士。どこかの村からやってきた幼なじみのパーティだったんだけどね、下のランクは採集とかが良いよって受付が言ったのに、自分たちは狩りが出来るって、ごねたところに僕が現れたって感じかな?
「ここはガキの来るところじゃねぇ!」
なじみのお姉さん冒険者に捕まってむりやりお菓子を口に入れられそうになって騒いでたところに、いらついたそのパーティの人達から怒鳴られたんだ。うん、ギルドあるあるだね。
「そうだ!もしあなたたちパーティが、あの子と模擬戦して勝ったら、こっちの討伐クエスト許可しましょう。」
わざとらしく、ポンと手を打ち合わせて、さま今思いついたかのように言う受付のお姉さん。
「はぁ?なんでこんなガキと・・・」
「その子、そこそこ有名な見習い冒険者よ。まさかパーティで4歳の子に勝てない、とか?そんなパーティに狩猟なんて任せられるとでも?」
「はぁ?んなわけないだろ?4歳だ?そんなガキ相手に真面目にやれるか、ってことだよ。怪我とかさせたら後味悪いわ!」
「大丈夫よ。ちゃんと回復できるし。」
「そういう問題じゃねぇ!」
「ふうん。ねぇダー君、君はどう?このパーティ相手にちょっと模擬戦してみない?」
「えー、面倒くさい。弱い人とやってもお稽古になんないよ。」
あ、本心じゃないよ。僕にこんな感じでやってね、って目が訴えてるんだもん。前にも、おいたしそうな人がいたら煽ってねっ、てお願いされたし。
「はぁ?誰が弱いって?」
ほら、こういう人って沸点低すぎ。普通、こんな子供がこんな場所でこんなセリフ、怪しいって思わないのかな?
そのリーダーの人が僕に掴みかかろうとしてきたけど、僕に絡んでいたお姉様方に軽くいなされ、頭にきたみたい。
「やってやろうじゃないか。俺一人で充分だけどな。」
「いえ、パーティでお願いします。パーティで受けられるかどうかの審査ですから。ダー君いいよね?」
「魔法使っていい?」
「いいわ。」
「分かったよ。」
「じゃあいつもどおりの報酬で。」
僕と受付のお姉さんは小声でそんなやりとり。
で、はじめ剣だけ、と思ってたけど、魔法を使うのが2人と剣を使うのが1人、斧と盾でブロックするでっかいお兄さん、ていうなかなか連携の取れたパーティで、魔法は防御だけのつもりが、小さな火を撃っちゃった。怪我しないように、ボッて、小さな火。
そしたらね、斧のお兄さんの頭に燃え移っちゃって、毛がチリチリ。すっかり焼け落ちて丸坊主に。それ見て魔導師2人は戦意喪失。リーダーの剣士は無茶苦茶に切り込んできて、そうなれば簡単にいなせちゃった。てことで、僕の圧勝でした。
そのときね、でっかいお兄さんだし、スキンヘッドも格好良いじゃん、て、僕は気にしなかったの。怪我がなくて良かったって、ホッとしたんだ。
でもなんだかめちゃくちゃ怒られた。
その理由が、やっと今、分かった気がする・・・
「どうしたんだい、その頭?怪我かい、病気かい?可愛い顔してるのにかわいそうに。」
「うーん、どっちでもないかな?えっと、暑いから?」
夏だし、ね。
おじさん、え?ていう顔をしてメンバーを見たよ。
「その、なんだ、ちょっとおつむが、な?」
ゴーダンが僕の頭に手をおいて、左右に振らしながら、おじさんに、察してくれ、という風に言う。
え?ひょっとして、僕、頭の弱い子扱い?ひどいなぁ。
「まぁ、嬢ちゃん、それとも坊主か?もう髪をいじっちゃだめだぞ。ほら、これ、俺からのプレゼントだ。毛が生えるまで、それで保護するんだぞ。」
どうも、最高級品っぽい帽子を僕に被せてくれた。
なんか、ちょっと納得できないけど、他のメンバーもなんかおじさんと話しながら帽子買ってるし・・・
でも、この帽子、独特だね。
被っても暑くない。むしろ涼しい?
しかも、ちょっと不織布っぽい。冷感接触の効いた不織布素材?今まで見たことのない素材だよ。
ママとヨシュ兄の目が、あっ!商人の目になった。
根掘り葉掘りおじさんに尋ねて、なんかいっぱい買っちゃったよ。
まぁ、おじさんも大量に売れてにっこにこ。
どうやら僕らみたいな外国人が大量買いするのは珍しくないんだって。
「この国の商品は素晴らしいもんがいっぱいあるからな。まぁ、しっかり目利きして、お国に持ち帰るんだな。」
おじさん、ちょっと自慢げにそう言うと、店じまいを始めたよ。
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