第124話 探検&狩猟に採取は楽しいな

 この前、反対側まで出ようとして、タイムリミットになったから、本当は行きたかったんだけど、バフマとの探検は日帰りコースってお約束になっちゃいました。


 バフマはね、僕とは違い、都会っ子。実は虫とかあんまり得意じゃなかったりします。本人は、「平気です。」なんて言って澄ましてるけどね。僕知ってるんだ。虫と遭遇したとき、一瞬、体がこわばるの。気づいてても、黙っていてあげてるけどね。フフフ、武士の情けってやつです。


 僕は、虫の中に寝かされてたみたいなもんだしね。

 産まれてすぐ、目が見えるようになった頃って、なんどもヒィーッてなったよ。思わず泣いて、ママが飛んできたりもした。

 家畜小屋も、畑の近くの地面も、それはそれはたくさんの虫。いっぱい食われたし、刺された。かゆいのも痛いのもいっぱい体験した。

 でね、赤ちゃんの時はそれが原因で死んじゃう子もいる。でもある程度すれば抗体が出来て、あまり腫れたりもしないし、かゆいとか痛いとかも小さくなる。うん、これは実体験。おかげで、虫だらけの密林も、僕たちは意外と平気。


 僕らは常に腹ぺこで、ご主人様から与えられる食事は、本当に少なかった。

 だから、ちょっと大きくなると、そのへんの草とか、きのことか、小さな虫とか、結構食べてたみたい。僕はまだおっぱいの頃に奴隷小屋から脱出したからその経験はないんだけどね。でも、他の子供たちはそういうことをして生き延びたって。

 でね、村で僕と連んでるナザたちは、食べられる草とかきのことか虫とか詳しいんだ。村にいるときは、色々教えて貰って食べたりしたから、僕は、実は宵の明星一、そういった食材に詳しいと思うよ。

 あ、ヨシュ兄とは、はるかな?

 ヨシュ兄もあまり裕福でない村の出身だって聞いた。子供の頃は虫をとっておやつにしたとかも。だから詳しい。それだけじゃなくてお勉強が好きだから、大人になってからも、サバイバルのために食べられる食材の研究なんかもしてるみたいで、ダンシュタにないもので言えば、ヨシュ兄の圧勝です。


 ここの森はちょっぴり生態系は違うとはいえ、そんなに離れていないので、きのことか、草なんかは、同じものもたくさんあります。

 一口目は苦いけど、咀嚼してると甘くなる草とか、香りが良くて、指でこすると柑橘っぽい香りがするのとか。あとは、僕は苦手だけど、前世で言うよもぎの葉みたいなのもあるよ。


 きのこはね、危険なの。

 同じに見えても毒がある場合があるんだ。

 ナザたちはトライアンドエラーで覚えるみたいです。うん食べてダメなやつは、舌にのせれば大体分かる、らしい。僕には・・・ハハハ、無理、かな?

 でもね、ヨシュ兄考案の方法でならチェックできるよ。

 あのね、ちょっぴりかわいそうなんだけど、土を掘るとミミズに細かい足が生えたみたいなベージュ色の虫が、大体どこにでもいます。でね、採ったキノコをあぶるとね、お水が出るの。そのお水の中にこの虫を入れる。虫の色が変わらないか、茶色に変わるならOK。赤とか青とか紫や緑に変化したらアウト、です。虫はね、即死に近い場合もあってごめんなさい、だけど、きれいなお水に入れて上げれば、元に戻るんだ。このこたち、弱い毒なら、平気な感じで生きています。たまに掘り出したときに色がついてる場合があるから、普段から毒を浄化しつつ、っていう生態系なんじゃないかなって僕は思ってます。



 僕らは、バフマの要望で、草とかきのこを中心に集めつつ探検してます。

 お肉はね、けっこういっぱいあるんだ。腐らないしって、リュックに放り込んでたら、何年分だろう?て、ぐらいあるよ。

 ナスカッテ国から帰ってからこっち、忙しくって、まともに売ってないから、ってのもあります。ミモザのギルドで売ったのなんて、たかがしれてるしね。領都でも、ゆっくりしてないから、まだ売ってません。ギルドとか、食肉を扱ってるところへ行けば、高価買い取り物件、山のようにあるんだけどね、へへ。



 我らがバフマ君、シェフとして、日々新規メニューを開発中、なんだって。

 僕が提案する前世の料理に地味にショックを受けてたらしいです。

 香辛料を料理に使うのは、ある程度お金がある人なら普通なんだけどね。

 貴族の家で、執事見習いしつつ、料理も含めた家事全般をお勉強していたバフマだから、塩やこしょう、ちょっとしたパセリみたいなハーブなら、使ったことがあるらしい。

 でもね、僕が、果物とか蜂蜜とかを使ったソースだったり、ハーブミックス的なものの提案したら、驚いてた。あと、お酒を使う、とかね。

 ハーブといえば、カイザーもいるしね。あの人、前世でドイツ人。腸詰めにハーブやら色々入れたの、自分で作ってたみたいです。

 以前僕が燻製機を作ってて、ナッタジで燻製を扱ってるって知ったときの彼は、ちょっと見物でした。おかげで、燻製のレパートリー、無茶苦茶増えたよ。



 ということで、新しいハーブやらソースやらの開発のために、たくさんの草やキノコ、果物がご所望のようです。

 僕としては、ご飯がおいしくなるのは大歓迎。いくらでもお手伝いするよ。



 動物もまったく狩らないわけじゃなくて、主に襲ってきたやつを中心に捕獲。

 そうそう。岩場にはまだ行ってないけど、鳥の巣をみつけて、卵もいただいちゃいました。ふつうに木の枝に巣を作ってる、鳩ぐらいの大きさの鳥。ケーッて甲高い声で鳴く緑の濃淡の鳥でした。この鳥、いっぱいいるけど、ちょっと筋っぽいのであんまり美味しくないです。やっつけちゃった分は、僕の提案で鶏ガラスープ、作っちゃおうってことになってるんだ。うん。こういう、スープの使い方も、バフマにとっては未知の世界。でも僕にとっても・・・多分、未知?

 まぁ、お湯でコトコト煮込んで、アクをとってれば、ぽいもんはできるんじゃないかな?



 そんなこんなで、結構な日数、探検に費やしました。

 採掘と違って飽きないのは、やっぱり、僕、こういうのが好きなのかなぁ?



 そして、昨日。

 ママから連絡があって、明日、お船でお迎えに来て、だって。

 どうやらママもこっちに来るみたい。

 なんだろう?って思ったけど、会えるならなんでもいいや。

 今日は、ううん、連絡貰った昨夜から、僕はウキウキです。


 今日は探検は休んで、鶏ガラスープづくりの実験中。

 明日はごちそう作る、だそうです。

 出発前に、リュックから食材出さなきゃ、だね。


 明日は、ミラ姉とお船を出して、ミモザ近くの崖までおでかけ。

 久しぶりの、島、脱出です。

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