第122話 初めてのオリジナル道具
カーーーン、カーーン!カン、カン、カン・・・
ザシュッ、ザシュッ!
反響音もなんだか楽しい。
カン、カーン!
僕は、今、岩を砕いてます。
そして、ジャーン!
生まれて初めての、僕のオリジナル武器!
思わず、ニマニマ、頬ずりしたくなるね。
はい。
カイザーが、作ってくれました。
僕、専用のツルハシ!
えっとね、細長い三角形の真ん中に棒をぶっさしたやつ。
三角形の頂点側は尖ってて、鋭く削ります。
反対側は、線でマイナスドライバーをでっかくしたみたいな感じ。
殴りつつ削ります。
あのね、鍛冶小屋がなんであんな場所にあるかというと、山側の麓だからです。
でね、山って言っても、海側から見たら分かるとおりに、岩場なんだ。そう。木は生えてるけど、岩にうっすら生えてる感じ。
で、この岩場、鉄を初めとしたいろんな金属が含まれてます。
山、とか、岩、とかってね、大地の魔力が満ち満ちてるでしょ?だから大地自体が魔力を帯びる。大地に含まれている金属も魔力を帯びてて、土地によってその魔力って独特なんだって。鍛冶師ってね、そんな金属を生成して武器や道具を作るの。だから、どんな性質の魔力を帯びた金属を使うかってのが、腕の見せ所の一つなんだって。
鍛冶師がいっぱいいて、名物になってるようなところってのは、すごい見極めの人が、いい魔力を帯びた土地を見つけて、そこの金属を使い始めたところから始まる。そんな場所は秘密にしたり、一族を呼び寄せて一族の縄張りにしたり、その土地からその一族が発展したり。
まぁ、そんな感じで鍛冶ってのは発展してきたんだって。
カイザーがいたナスカッテ国のジブの集落なんてのも、そんな風に凄腕の鍛冶師がいい土地を見つけて、腰を落ち着けたところからはじまった、らしい。
ちなみに、その見つけた人ってのがジブさんというドワーフ族のヒーロー。カイザーのご先祖様。
鍛冶師には生き方が大きく分けて2つある。
鍛冶師の集まる集落で、伝統を引き継ぐこと。まぁ、土地に根付いて鍛冶師をやるってことだね。
もう1つは、自分で世界を巡って、いい土地を見つけること。
一生を流浪の鍛冶師として過ごす人も少なくないんだって。
で、カイザーは、有名な人の子孫で、凄腕、しかもアイデアマン(まぁ、前世の知識もあるしね)ってことで、周りからは前者のトップを求められてきた。けど、本人の夢は後者だった、ってことみたい。
そんなとき、同じ地球の前世を持つひいじいさんと出会い、ちょっとの間、一緒に夢を追いかけたくなった、ってことみたい。ちょうど、カエサルさん=カイザーの息子さんが、首領を任せられるだけの腕を持ってきた、ってことも大きかったみたいだけどね。
ひいじいさんが、自分の商会がでかくなっちゃって、遊び歩いてもいられない、ってなったとき、パーティは解散、カイザーも地元に戻ったらしい。で、そのまま僕が行くまで、好き勝手に物作りをやっていたんだけど、ワクワクが足りなかった、らしいです。
カイザーの今の夢。
とりあえず、僕を一人前にするんだって。
そのために、戦闘やら、社会勉強?やら、もろもろを伝えつつ、武器なんかも作ってくれるらしい。
あとは、それに関連するそうだけど、ひいじいさんとの途切れた夢も僕と叶えられたら嬉しいって。
それは、地球、じゃなくて、今のこの大地。星だと信じてるけど、その証明。すなわち世界一周!そのための船の強化、だって。
ははは。強くなるだけじゃなくて、いっぱい稼がなきゃ、だね。
それはそうとして、今!
僕は、はじめてのマイオリジナル道具ツルハシ君で、岩を削って、金属を掘り出してます。
どうオリジナルかって?
ツルハシってさ、この世界じゃだいたい似たようなサイズ。
でも、僕が持つと、でかすぎて、上手く力は伝わらないんだ。
僕は、年齢にしては力持ちで、普通のツルハシだって、十分持ち上げられるけどね。ツルハシってのは、自分も含めたテコの原理で掘るんだよ。効率で考えると、全然だめ。僕は大人と違って、まだ5歳。しかも悔しいことに、周りの同い年の中でもダントツのチビ・・・よく抱っこされてることもあるけど、4歳ぐらい?とか思われちゃう。間もなく6歳なんだけど、村の子供で一番でかい3歳の子に、抜かれたと知ったときには、ちょー泣いた・・・
まぁ、いいさ。
急に背が伸びることもある。まだまだ子供で伸びしろはいっぱい、のはず・・・
そんな僕だけど、先日、カイザーが身長と手の長さを測っていた答えが、コレです。フフフ。マイツルハシ。僕がもうちょっと大きくなっても使えるように先っぽの△部分は大きめ。持ち手の木製棒はピッタリサイズ。これはこまめに差し替え予定。
これはね、僕が振りかぶって、床や壁に当てたとき、一番力点が来るようにと作ってくれたの。もともとあったたくさんのツルハシを削って、ちょっぴり薄く軽くした上で、大人用よりは△部分も短くて。
薄くしたけど、丈夫さはカイザー印。焼き入れでアップしてます。しかも、切れ味抜群。鍛えてない成人=15歳レベルの腕力はある(と思いたい)僕の腕力でも、結構えぐることができるんだ。
で、この島。
鍛冶小屋をつくるだけあって、大地はしっかり魔力を帯びてるし、金属の鉱床がいくつか見つかってる。
鉄、は少ないって。鉄ってのを、磁気が帯びやすい金属、って定義すればだけど、ってカイザーは言ってました。
そもそもが金属の組成が多分地球とは違う。だから、僕らが勝手に鉄だ金だ白金だ、なんて言ってるだけで、微妙に違う、ようです。鍛冶師としてのカイザーの勘だけど、比べようがないからね。
で、この世界、鍛冶とかの製鉄技術ってのは地球より簡単に発展したようだ、だって。なんせ、高温は簡単に作れる。うん。魔法だね。
すごい魔導師なんてのは大昔から定期的に出現してるわけで、でっかい火で、土を焼いたら、偶然金属が精錬できたり、石がガラスになったり、なんてのは現象として知るのが容易だったってことだね。で、熱せられて溶けた金属が固まったら硬くなって、これは使える!てなるのも想像出来る。
ま、そういうわけで、鍛冶は発展。
溶かして冷やすと硬くなる=金属、として、様々なこの世界特有の金属が武器として発展した、ということみたいだね。それを担うのが鍛冶師。
幸い、この島にもとっても硬い金属があったんだ。
なんかね、精錬すると黒っぽいの。で、特徴が魔力との親和性。
魔力との親和性があればあるほど良い金属というのが、常識だからね、とっても良い金属が取れるってことだね。
エッセル号の外構だったり、は、主にここの金属が使われてます。
魔力との親和性がいいってことは魔法陣の反応も素晴らしいってこと。
天才魔導師=ドクの魔法陣で、ほとんど魔導具と化してる我らがエッセル号だけど、カイザーの見つけたこの地の金属と、彼のとびっきりの製錬技術があってのたまもの、ってことだね。
硬度やしなやかさのレベルを決定するのは鍛冶師の腕。
同じ金属でも、硬度や魔力との親和性を変えるのも鍛冶師の腕の見せ所。
硬い、とか、魔力との親和性がある、ってのはマックスの話で、この幅が大きいほど、良い金属。その素材の能力を、0からマックスまでのどの時点に設定するとニーズに合うか、を設計するのは鍛冶師の腕の見せ所。
魔力との親和性を低くすれば、魔法の攻撃を弾くし、しなやかさを優先すれば、弓のたわみをつくれる、でしょ?
僕のツルハシは、まぁ、ここの土地産金属製じゃない一般的な金属。
鉄、って言われるやつだね。
魔法との親和性はほとんどないから、これに魔力を纏わすのは無理かな。
でも、今の用途にはそれでいいんだ。
ここの金属は魔力に反応するから、採掘の段階では魔力と触れないのがベターです。
ということで、僕はマイツルハシで、他の面々、つまりカイザーとミラ姉、バフマもいっしょに採掘中。僕以外は、しっかりメンテして使いやすくなった、小屋に放置のツルハシをそのまま使ってます。
なんかちょっぴり優越感。
さぁ、武器に道具に船。
金属だっていっぱいいるぞ、頑張ろう、オーッ!!
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