第120話 道、完成!
3日目!
ついに、ついに到着しました!
いや、考えてみたらものすごいスピードなんだけどね。
歩いて10分か15分かかる密林に切り倒しただけの切り株の道とはいえ、道を通しちゃったんだから。
はい、ゴールです!
いやぁ、大変だったよ。
何がって、ハハ、ミラ姉がねぇ。
いや。悪いのは僕たち、って分かってるんだけどね。
単純作業だからこそ、なんか途中から妙なテンションになっちゃって、楽しくってさ。時間、忘れちゃいました。
僕ら、あ、僕とカイザーね、夢中になってカーンカーンドシュッ、ほいって、流れ作業で木を切って、リュックに放り込んでたんだ。特に初日ね。
お昼は、バフマにお弁当を作ってもらってリュックに入れてました。
でもね、お馬鹿な男二人組が夢中になっちゃったらね、そりゃ忘れるよね。ご飯なんて。
それどころかさ、暗くなったことにも気づかず・・・・
おやって、思ったときには、僕、腰をつかまれ宙に浮いてて、お尻パンパンと叩かれてました。グスン。
カイザーなんて、それでも気づかず、どんどん切ってるんだもん。
この状態、やっと気づいてくれたのは3本も木を切って、僕がキャッチできてなかったのにおやって振り返って、って時でした。
カイザーが平身低頭で謝って。やっと僕も救出されて。
そのまま隠れ家に連行されて。
その後、僕だけミラ姉の大説教大会。
なんで、僕だけ?
カイザーを見て分かったよ。
同じことして、僕だけが怒られてるって、想像以上に、下手したら僕以上にカイザーにダメージ、でかかったみたいです。おそるべし、ミラ姉。
カイザー、ミラ姉に謝り倒して、僕もなんとか解放して貰ったよ。
教訓!ご飯は大事。約束はちゃんと守りましょう。時間は正確に。
とまぁ、初日に大失敗があったので2日目は慎重に。
でも自信がなかったので、バフマにお願いして、お弁当は届けて貰う形でお昼の時間をゲットして。
そしたら、なんだかお茶の時間です、なんていって、おやつまでデリバリー。
ありがたいけど、時間中断しちゃって、前日の惨劇再び、なんてなっても困るので、おやつのあとは、ちょっとした狩りをしつつ、おうちに帰ったよ。
で、やっと3日目。
バフマのお昼デリバリーはきたけど、ちょっと粘って、到着!です。
それにしても、ザ・小屋!
あのね、なんていうか、フェアリーテール。おとぎ話の丸太小屋。しかも鍛冶屋さんバージョン!
それが森の中にあるんだもん。
突然開けた森のスポット。
やっぱり、ドクの仕業だね。セスの森で見た、ドクの隠れ家と同じ、だけど、ちょっと小ぶりの結界発生装置が設定してあって、小屋の周りだけ、きれいなもんでした。
バフマも一緒に、そのちょっぴり開けた空間で、お昼にしよう!
でも、って、その時思い出した。
だって、この島にはもう一人いるじゃん。
僕はダッシュで、おうちに戻って、ミラ姉をつれてきたよ。
楽しいことはみんなで、ね。
ミラ姉は、このところ難しい顔で書類とにらめっこ。ちょっと心配してたんだ。やっぱりお外に出なくちゃね。
バフマは、昨日狩った小型の魔物のお肉でかつサンド作ってくれてました。
この島、今のところシューバ前後のサイズまでしか魔物、いません。
今日食べてるのは、ピノのお肉。
あ、ピノって、僕らの町の近くにもいる中型犬サイズの兎もどきね。普通は空色なんだけど、この辺のはちょっと色が濃いかな?誤差程度だけど。ちょっと普通のピノよりも臭いが強い気がする。けど、かつにしてくれてるから、あんまり気にならないよ。
お外で食べるごはんは最高です。
ついでに体を動かした後なら、尚、良し、です。
ちょっと遅めのお昼を食べ終わって、バフマとミラ姉は、おうちへ帰るみたい。
僕とカイザーは、待ってました!の、小屋の中へ。
入ってみると、ハハハ、想像の通りの鍛冶小屋だ!
レンガで作られた炉、その前には金床にバケツ。鎚は壁に掛けられてて・・・
どうやら奥には、ちょっとした倉庫、そして、居住スペース?
まぁ、居住スペースっていっても、机かベッドかをチョイスしなきゃならないぐらいの空間しかないけどね。
倉庫は、以外と整理されてる。っていうか、立つ鳥跡を濁さず、的な?お出かけするからきれいにしておきましょう、と片付けたんだろうね、きっと。
で、倉庫。
材料と、道具、完成品に、スペースは分けられているようです。
完成品のところに弓?なんで?
聞くと、武器や防具なら木でも皮でもなんでも作るのがプロ、だそうです。それどころか、木の机や椅子といった生活道具でも何でも作る。
それって、もう鍛冶師、じゃないよね?
あ、そうか。船も作ってるんだった。
船って、船大工っていうぐらいだから、もう大工さんだよね?
うん。前世では趣味でログハウス自分で建てた、らしいです。ハハハ。
「じゃあ、サイズを測るぞ。」
ん?何の?
どうやら、僕?
身長と、手の長さを測られました。
何するの?
その後、僕はリュック持参で、小屋の裏に連れて行かれて、1本切り倒した木を出すようにって言われたんだ。
そこには、どうやら薪置き場と、薪を作る道具、といっても台座だけなんだけどね、が置かれてました。
カイザーは手持ちの斧を上手に使ってあっという間に薪型にしちゃったよ。
でもね、薪ってすぐには使えないんだって。だから薪じゃなくて薪型の木。
どうやら普通はこれを1年ほど乾かすらしいよ。
「魔法で乾かせるじゃろ?」
えー、無茶ぶり、すごくない?
僕は、悩んじゃったよ。
ミラ姉、呼んでくる?
勝手に魔法使ったら、怒られちゃうし・・・
って、カイザー、無視ですか・・・
うーん、カイザーが嬉しそうにもう1本、木を薪にしている間、考えたけど、乾かすって水分飛ばすってことだよね。水魔法で水分抜いちゃう?うーん、出来る気はしない。じゃあ火?燃えちゃ拙いよね?風は?
んー、それってドライヤーみたいな感じで、ってドライヤー?そもそも乾かす物って意味じゃん!
ホットモードのドライヤー。風に火魔法でいける?
これはやったことがあるんだ。ママやミラ姉にも好評なドライヤー魔法。髪の毛を乾かして上げたら、大好評なんだもん。
だから割とコントロールも平気。
まずは1本。
あ、楽勝だ!
で、まとめてドーン!
「おお、さすがじゃのう。じゃあ、早速、火を熾そうかのう。」
そうして、久しぶりに炉に火が入ったんだ。
鍛冶が始まると、できるまで、カイザーは人を寄らせません。
僕も知ってるから、ちょっぴり離れてしばらく様子を見てたんだ。
どうやら、完成品が積んである中からツルハシを数本取りだして、それをいじるらしい。
うーん、もう今日はここから離れないな。
僕は、そうっと小屋を後にしたよ。
おや?何かが違う。
僕は一人、違和感を感じながら道を歩いていたんだ。
そして、ふと気づいたよ。
なんだか、とっても歩きやすい。
足下を見ると、びっくりです。
なんかね、切っただけでガタガタ、ギザギザだった丸太の表面。
きれいにまっすぐになってるの。
僕はあわてて走って帰ったよ。
うん。簡単に走れるぐらいのまっすぐな切り株になってる。
あのね、犯人?はミラ姉でした。
ギザギザで転けたら危ないからって、ウィンドカッターを水平に飛ばしたらしいです。さすがの威力とコントロール。脱帽です。
あ、そうそう。僕の話を聞いて、バフマがカイザーのためにって夕食を配達してたけど、作業終わるまで食べないんだろうなぁ。
その日は、ミラ姉に、お隣の国ザドヴァについていっぱい教えて貰ったよ。きっと、いろいろ知っておいた方がいいんだろうしね?
僕は、隠されるようにしてエッセル島に閉じ込められた、なんて、最初は思ってたけど、何がどうして、やることも楽しみも盛りだくさんです。冒険はどこだってできる。自分の気の持ちよう、ってのも間違いじゃないんだな、って思ったよ。
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