第107話 ただいま!
ミモザが見える。
港付近では、普通に漁に出ている船もあって。
船着き場に、あれ?すっごくたくさんの人がいるよ。
ん?
あれは・・・・
あはっ。
不屈の美蝶のみんなとミラ姉だ!
そして、ミンクちゃんや、何度か遊んだ町の子供たちもいっぱいいるよ。
僕は、手を振るみんなに、一生懸命手をふってる。
「おかえり~!」
みんなの顔もにっこにっこで、なんか、すっごく嬉しい。
他にも大人たち。
あ、バフマのパパさんもいるよ。
あれ?
ワーレン伯爵?
横にいるの、アンと・・・
マ マ だ ! !
ママは、ニコニコこっち見てる。
そういえば雪を始めて見た時に、ママに連絡したんだった。
もうすぐ帰るってのも、その時報告したね。
ひょっとして、それで来てくれたの?
正確な日程なんて分かんないのに、さすがママだね。
僕の目はもうママに釘付けだ。
変わらない優しい笑顔。
まだちょっと距離があるのにしっかりと目線が合ってるよ。
ママの背をアンが押して、一番前に出てきたよ。
「ママ!」
僕は、叫んだ。
一言叫んだら、
?
あれ?
おかしいな。
なんか目がはっきりと見えないよ。
ママをしっかりみたいのに、なんだかにじんで・・・
「ヒッ」
あれ?
ママって言おうと思うのに、
なんだか息が吸えないの。
なんか喉の奥の方から、何かが、なんか塊みたいなのが、息の代わりにせり上がってくる。
なんだ?
ヒック、ヒック・・・
肺が痙攣してるみたいに、下から上へと、締め付けられる。
なんで?
なんで、ママが見えないの。
なんで、ママって言えないの?
ドーンって船が港に到着、碇が投げられ・・・
うっすらと、にじむ視界に、多分笑ってるママ。
僕は、言うこと聞かない声と目を無視して、思わず船から飛び降りた。
「おい!」
「キャーッ!」
船から、港から悲鳴が上がる。
ビュン
空中で、誰か、あ、ヨシュ兄だ!
が、僕をキャッチ。そのまま
パフッ。
僕は包まれた。
ママだ。
ママの匂い。
ママの柔らかいおっぱいに顔を埋めて、しっかりハグされる。
ウ、ウェーン!
あれ?
おかしいな?
まったく出なかった、僕の声。
「マ゛マ゛・・・ヒック、ヒック、ウッウッ、ウェーン!!」
あれ?
誰かが泣いてる。
って、ボ・ク・・・?
ママにしっかりハグされて、頭を優しく撫でられている。
ウェ、ウェーーー
なんか、かっこうわるい。
なのに止まらなくて・・・
ママに抱かれたまま、誰かが僕の頭を順番に撫でてるよ。
誰か?
その撫で方で分かるね。
ヨシュ兄。次はアン。そしてミラ姉。乱暴にパフパフするのはゴーダンだ。
ママが、僕の体を揺する。
ゴーダンと何か話してるけど、わかんないや。
僕の、ヒックヒック言ってるのは、随分と納まったけど、恥ずかしくってママの胸から顔を上げられない。
クスッと笑ったママが、どうやら動き出したよ。
周りにいっぱい人がいて、一緒に動いているみたい。
ヒック、ヒック・・・・
ママが優しく揺らしながら歩く。
それが心地よくて、
いつの間にか、眠っていたみたい・・・
なんだか、ザワザワしていて、
なんだか良い匂いがして、僕は目が覚めた。
ここはどこだ?
ゆっくり思い出して、
あっ!て、恥ずかしさで顔がほてってきた。
ママ見て、僕は泣いちゃった?
それでそのまま寝ちゃった?
・・・はずかしいよ・・・
どうやら僕は、どこかのおうちのソファで寝させられていたみたい。
「おはよ。」
僕が目を覚ましたのに気づいて、僕の頭の上に座ってたらしい人の声が降ってきた。
上を見ると、あ、ミラ姉?
僕は慌てて上半身を起こすと、どうやら大きなお部屋の片隅で、たくさんの人がお話ししながら、ご飯を食べてる?
立食パーティ?
「おかえり、ダー。ここ、分かる?」
僕は、周りを見回したけど、どこだろ?
「フフ。ミモザに帰ってきたのは覚えてる?」
うん、と頷き、顔を再び赤くしちゃった。はずかしいなぁ、もう。
「フフフ。ここはミモザの代官屋敷。立派に復興したでしょ?」
そういいながら、ミラ姉は僕を抱っこして、みんながいる方に歩いて行ったよ。
ちょっと待って。
あんなかっこうわるいとこみんなに見せたんだよ?心の準備が・・・
ミラ姉に抱かれた僕をみんな見て、クスクスしてる、って思うのは、被害妄想かな?
みんな、僕の行く道を、サーッて開けていく。
あれ?
ママがみんなにご飯配ってるの?
「おはよ、ダー。ママのシチュー食べる?」
お椀によそってくれたのを受け取って、僕は口に入れたよ。
うわ!ママの味だ!おいしい、ママの手料理だ!
僕は、思わずかっこんで、ケホッ、熱くてむせちゃった。
「あらあら。」
フフフ、とママが笑う。
それを見てみんなもクスクス笑ってる。
馬鹿にしてるんじゃなくて、優しい気持ちで笑ってる。
でも、やっぱり恥ずかしい。
「あーあ、やっぱりダーは赤ちゃんで泣き虫だなぁ。」
でっかい声で言ったのはナザだ。
「赤ちゃんじゃないもん。」
「そうよ。ダー君は、ずっとお母さんと離れてたんだから、ちょっとぐらい泣いても良いでしょ!あんたデリカシーないわね。」
そんなナザの肩をポンと突きながらそんな風に言ったのはミンクちゃん。
ちょっと、喧嘩はだめだよ。
僕は、慌てて、ミラ姉から飛び降りて、二人の間に割り込んだよ。
ガシッ、ガシッ
?
僕は両方の手首を交互に見たよ。
片っ方をナザが、もう一方をミンクちゃんが、しっかり握ってたんだ。
僕は二人の顔を交互に見た。
二人はニコって笑って、「行こっ!」て。
僕の手を二人で仲良く引っ張って、ごちそうが並んでるテーブルへ。
「これおいしいよ。」
「これもいいぞ!」
二人にいろいろ口に運ばれ、僕は目を白黒。
なんだか、二人はニコニコと顔を合わせて、僕をあっちへこっちへ。
なんだ。二人は仲良し?
そんな僕らの様子をみんなが見てるけど、なんだか、すごく楽しくなってきた。
ハハハハ。
三人で笑いながら、次から次へとごちそうをつまんでいたら、いつの間にか恥ずかしかったことなんて忘れてた。
アハハ
ここは笑顔がいっぱいだ。
ハハハ。
みんな楽しいって。
美味しい物食べながら、いろいろとおしゃべりして。
ああ、帰ってきたんだね。
みんないる。ママもアンもミラ姉も・・・
ただいま!僕は、心の中で大きく叫んだよ。
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