第108話 ギルドカードは高スペック?

 僕らが、無事タクテリア聖王国のミモザに帰って来た日は、パーティで、子供たちは日暮れまで、大人は夜通し、なんだかんだと大騒ぎだったよ。

 僕は、バフマに案内されて、この代官屋敷に泊めて貰いました。

 ママは大人だけど、僕と一緒にお部屋に戻ってきて、いっぱいお話しできたんだ。


 あのね、今日のパーティは、ワーレン伯爵が主催して、ミンクちゃんのパパさんでここミモザの大店パパラテ商会筆頭のトッドさんが仕切ったんだって。一応代官代理から正式に代官になったらしいバフマのママ=セジさんが総責任者らしいけどね。 

 で、お料理も、トッドさんが手配した料理人の人達が作ったんだけどね、飛び入りでママもシチューを作ってくれたんだって。泣き疲れた僕が寝ちゃって(キャッはずい!このことはみんな忘れてくれるといいなぁ。)、他のメンバーでお話ししてたときに、セイ兄が「ダーは、ママのご飯が食べたいって言ってたなぁ。」って言ったらしくて、ママ飛び出しちゃった、らしいです。うん。ごちそういっぱい食べたけど、ママのシチューがナンバーワンのおいしさだったよ。



 で、翌朝。

 僕は、ママとみんなが泊まっている宿へ行ったよ。

 帰国組以外は、前に泊まったお宿にいるんだって。

 で、僕たちも、代官屋敷を出てそちらに移ります。

 あ、騎士組は別ね。屋敷に残ったよ。

 それと、虐殺の輪舞は別のお宿。


 ドクとゴーダン以外は、みんなで出発したけど、途中でいったん別れます。

 バフマは代官屋敷に残れば?って言ったんだけど、僕の執事になるから離れない、ってついてきちゃいました。セジさんとサダムさんも連れてけって言うから、まぁ、ね。


 ドクとゴーダンは後で合流するけど、残ったのはワーレン伯爵の要請です。わざわざここに来てたのは、こっちが主目的みたいです。なんだか、王様からのお話を伝えるんだって。騎士組もそんなこんなで、伯爵とずっとお話ししてるみたい。エライ人は大変だね。なんたってドクは魔導師養成校校長で高位貴族扱い。ゴーダンは数少ないA級ライセンス持ちの冒険者でこれまた、そこそこの貴族扱い。こんな風に外国から帰ったとたん、伯爵級のえらい人に待ち伏せされて王様のお話し聞かなきゃならないんなら、偉くなるのは面倒かもね。僕、見習いで良かったよ。



 いったん、お宿で落ち着くと、ミラ姉とアン、ヨシュ兄もいて、まずは新しい仲間のご紹介です。

 まずは正式にメンバーになったアーチャ。見た目セイ兄ぐらいだけど、考えたらドクの次に長生き?200歳ぐらいって、言ってたもんね。

 そして、妖精のエア。

 さらにドワーフのカイザー。あ、おじいちゃんっぽいけど、まだ150歳ぐらいだって。


 「これはまた、懐かしいね。」

 「アンか。久しいのぉ。これからまたよろしく頼む。」

 そういや、ひいじいさんと組んでたんなら、当然知り合いだったね。

 「にしても、うちもまた賑やかになったもんだ。この大陸じゃこんだけいろんな人種がいるのも珍しいよ。ハハハ。ダーといると本当に飽きないね。」

 え?僕?

 まぁ、そりゃみんな僕がらみかもしれないけど・・・

 「ダーは良い子だからみんなが大好きになるんです。」

 ママがアンに言ったよ。

 ちなみに僕はママのお膝の上。だから、ママの顔は見えないけど、なんかママの様子を見てみんなクスクスしてるよ。なんだろう?

 「やっぱりミミはダーがいると違いますね。」

 と、ヨシュ兄。僕が首を傾げると、

 「ダーがいないと、立派な会頭、なんですけどね。」

 だって。うーん。よく分かんないや。


 「ところでアレクよ。虐殺の輪舞の荷物はいいのか?」

 ゴーダン達はいつになるか分からないから、と、お昼を食べに出ることにした僕たち。さて出発、と思ったら、カイザーがそう言ってきたよ。

 そうだったね。みんなの荷物、預かってたんだった。騎士組はそんなになかったし、これからも代官屋敷で泊まってから王都に戻るらしいから、全部出して来たんだけどね。素材とかもいらないって言うし。任務だからもらっちゃだめ、なんだって。 

 だもんで、狩ったもろもろ食材でおいしいものを食べて貰う形で還元することにしたよ。手配はどうやら優秀執事バフマ君、出動です。何がどのくらいあるかも、また、どんな風に料理すればおいしいかも頭に入ってるって言われてちょっとびっくり。今夜は、僕たち主催でパーティだね。


 そんなこんなで、バフマを除いたみんなでゾロゾロ、虐殺の輪舞がお泊まり予定の宿へきたよ。

 どうやら、冒険者ギルドへ報告がてらお昼食べに行こうって、出発するところだったようで、入れ違わなくて良かったよ。

 さてと、まずは私物でしょ。

 僕は、セイ兄が持っててくれたリュックから、個人別の荷物を取りだして渡したよ。竹でつくった各々の食器もちゃんと誰のかわかるしね。

 で、狩りの分は、半分こするのかな?ここに出していい?って聞いたら、

 「あんた馬鹿?こんなところに血まみれの魔物出すの?」

 って、ネリアが怒っちゃった。そりゃそうか。

 「それに、半分、は、おかしいぞ。」

 ジムニが言う。なんで?

 「討伐数が違うだろ。」

 ?

 そんなの数えてられないよね?

 「・・・おい。」

 なんだか怖い顔をして、バンがセイ兄に言ったよ。

 「まさかと思うが、こいつの機能、教えてない、とか言うなよ。」

 そう言いながらギルドカードをひらひらさせてる、けど・・・

 「あ、いや、教えてないわけじゃない、んだけど・・・」

 珍しく、セイ兄が言いよどむ。ん?ギルドカードって確かいろいろ記録されるって聞いたことはあるけど・・・


 「けどって何?」

 ネリア、相変わらず沸点低い?

 「いや、まだこの子見習いだし、さ。」

 「ああ、見習いの開示はボスの特権か。」

 ダムがふむふむと頷いてるよ。

 何?

 「だからって、教えてない、とかありえない。ダー、カード出しなさい。」

 へ?僕はメンバーにヘルプを出すつもりで見たら、なんだかみんな気まずそう。

 「いいから出してやんな。」

 しばらくしてアンが言うから、僕はギルドカードを出したよ。


 カードには、僕の名前とゴーダンの名前、そして発行したギルドであるトレネー支部、さらには所属である宵の明星、それらが書かれてある。裏にはでっかい冒険者ギルドのマークだ。あ、ひょっとしたらこっちが表かな?情報って裏?ちなみにランクによって素材が違うから、何級ってのはない。僕のは見習いだから、軽くて丈夫な木でできていて、特殊加工だから、傷はつかない。


 「じゃあ、ギルドマークに魔力を流してみて。ほんのちょっとよ。あんたの場合、どうなるかわかんないから。」

 え?

 「ちょっと待って。ダーあなたは流さなくていいわ。こうするのよ。」

 僕が手をかざしかけたら、ミラ姉が慌てて、自分のカードを出して、手をかざしたよ。そうしたら、うわっびっくり。

 なんか浮かび上がってきた。よく見ると文字、かな?伏せ字っぽくなってるけど、その一つを触れたミラ姉。

 72っていう数字と、●、そして、不屈の美蝶の文字。

 何もこれ?

 「72っていうのは、倒した魔物の強さ、らしい。どうやって計ってるのか分からないけど、だいたいCランクで倒すレベルかな?横にあるのは、共闘者。自分のパーティ以外で戦った者がいれば表記される。ダメージを入れた者のギルドカードが互いに反応して記録されるらしい。自分のパーティはカウントされないが、この●は、周りに自分のパーティがいない場合につく。ソロならこれだけが記される。」

 「まぁ、そういうこった。ダーに教えてなかったのは、教えたら見ようとするだろ?この子は魔力量がすごいからね、壊さないとは限らない。特に木の場合は、ちょくちょくそういう事故もあるからね、それで教えてなかったのさ。知ってたら、ダメだと言っても見ちまうだろ?」

 アン、てば、ひどいなぁ。でも、・・・そうかもしれない。そんな機能あったら、絶対見ない、って自信ないです、はい。

 「ダーは良い子です。見ちゃダメって言われたらがまんできます。ねぇ、ダー?」

 ママがかばってくれて嬉しい。

 うん、僕、見ない・・・ように、がんばります。


 「はぁ、わかったわよ。確かにこの子が魔力通したらどうなるかわかんないか。まぁそれはいいわ。でね、そういうことだから、ダメージ入れたのがどっちのパーティか両方か、魔物ごとに分かるわけ。ちなみにもう一つお勉強。パーティ登録してる者同士のギルドカードは近くにいれば共闘とみなされて、記録される。直接ダメージを入れなくても、パーティの誰かが入れれば、OKって仕組み。わかった?」

 ハイ分かりました、ネリア先生!


 しかし、なるほどねぇ、そんな仕組みがあったんだ。

 「てことで、まだ、私たちの分計算してないから、ギルド行くわよ。」

 へ?

 「ギルドの道具でチェックできるのよ。ナスカッテで一緒にいたときの共闘の取り分、ギルドで計算して貰うわ。ちなみに別れてたときの分は、あんたがいなかったから、あっちで精算済み。」

 へぇ、なんか身分証明書としか思ってなかったけど、ものすごい高スペックなしろものだったようです。

 ギルドカード自体に記録されてるとは思わなかったよ。

 だって、みんな報告の時に、ギルドカードをギルドで出してるのは知ってたけど、なんか、ギルドの人がチャチャッてやってたから、ギルドの人がその道具に書いてるだけで、カードはそのデータを呼び出すために使ってるって思ってたんだもの。

 でも、みんなに目線送ってるけど、このちゃんとした使い方、教えてくれる気配がありません。そんなに信用ないのかなぁ、グスン。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る