第99話 クッデ村への航海
無事みんなと合流。壮観だね。
この国に入ったときより2人(?)増えて、森の中なのにとっても賑やかです。
右手にギリギリ塀の姿を見つつ、森を北上。
この辺りは魔獣さん、おとなしい子が多いらしい。
でね、冬支度で、栄養蓄えてるからおいしいんだよ、って、アーチャに教えてもらいつ、僕らチビッコズ中心に狩りをしながら、北上です。
んとね、セスあるあるで、名前がないの。
いくつかは、僕らの大陸にもいるのがいて、そんなのはゴーダンとか虐殺の輪舞のみんなが、名前教えてくれるんだけどね。
で、僕らは、バレーボール大の黄色っぽいふわふわしたリスみたいなのをメインに狩りました。最初かわいいからちょっとかわいそうって思ったけど、ね。なんか、いがいがの木の実投げてくるんだ。この木の実、食べれないけど、人間だって投擲の武器にするぐらい、いがいがもきつくて硬い。名前は、ま、セスだしね、いがいがの実、だって、ハハハ。
初め見た時、僕とナザがね、かわいいな、って手を伸ばしたら、突然いがいがの実を投げたから、もうびっくり。アーチャとダムがそれぞれ避けてくれました。
でね、この時期のは特に食べると甘くておいしい、ってアーチャが言うもんだから、もう、しっかり敵討ちです。
黄色い毛皮は、軽くて丈夫なので、帽子とか手袋の素材にいいんだって。いっぱい捕まえて、みんなでおそろい、いいと思わない?
歩いていると、正面には森がなくなって、街道と海が見えてきたよ。
北へ行く街道が海岸線沿いに続いていて、塀にはもちろん門があります。
あんまり門の近くで出るのも拙い、てことで、僕らは今度は街道を右手にギリギリ見える範囲で森を歩きます。
15分くらいかな。そのまま北上。街道沿いに馬車も徒歩もないことを確認して、森から出たよ。そのまま海を覗くと、意外にもそんなに切り立った崖じゃなくて、歩いて海まで出れそうな感じの岩場がずっと続いてます。
降りやすいのはいいけど、こういう地形だと船が出せないかな?
とりあえず、海岸まで行く?
てことで、海岸までやってきました。
どうやら今は干潮なのかな?
岩についた水の線、満潮はこのあたりか、なんて、大人たちがいろいろ考えてます。
どうやら小さな洞窟があって、そこまでは満潮時、水がきそうなんだって。
てことで、この洞窟で満潮近くまで休憩し、船が出せそうになったら海に浮かべて出港しよう、てことになりました。
岩場にはね、貝や小さなカニがいます。
フフ、ミモザで潮干狩りやったよね。
て、ことで、バフマがご飯を作る間、僕たち子供は潮干狩りしてもいいよ、ってOKもらったよ。
僕たち経験者。岩にこびりついてる貝もちゃんと見分けられるよ。
ちょっとした砂場は掘るといいんだ。
誰も採らないからか、いっぱい採取完了。
それとね、なんかわかめみたいな海藻もあったので、僕はこっそり回収したよ。食べられるか、誰か知ってるかなぁ?
満潮は、かなり夜遅くなってから。
僕、ちょっと寝ちゃってたけど、みんなに起こされて、ちゃんとお船を出しました。
さぁ、出港です。
真っ暗な中、少し沖へ出て、左手に岸を見つつ北上。
他に船はないみたいだね。
そういや、危険だから今は船を出してない、って言ってたもんね。
僕らの船の明かりに寄ってくるそこそこ大きな魚やいかもどき。
びっくりしたけど、明かりめがけて、食人魚が飛んできます。
あのね、今夜飛んできてるのは、ほとんど剣みたいな魚。一般に剣魚って言われてるものだそう。細長くて薄っぺらくてキラキラ。獲物を見たら体の半分ぐらいまでパカッて開くんだ。上下にギザギザの歯が生えていて、それでパクッていくんだそう。シューバとかでもがぶり、ってかみ切っちゃうって、びっくりだよ。
でね、明かりに向かって飛んでくる習性があるにはあるんだけど、ただ、別に羽があるとか、ヒレを羽がわりに飛ぶとか、そこまでの能力は無いんだ。ただ、力任せに海上に飛ぶだけ。ほとんどは、船の高さまで飛べないんだけど、時折でっかいのが船縁を超えて飛んでくる。
退治方法は簡単。
口をパクって開いてるところに向かって、良く切れる剣を当てるだけ。
自分の飛んだ勢いで、勝手に2枚降ろし(ただし上下に、だけど)です。
味は、特にこの時期、脂がのって美味しいです。
僕らには簡単食材ゲット、だけど、もし歯に当たっちゃったら即死級。しかも、普通の木の船だと、穴が開いちゃう。おいしくっても漁師泣かせの魚なんだって。釣り竿も網もかみ切っちゃうし、ってことだそうです。
だけどね、おいしいのはおいしい。てことで、超高級魚、なんだって。
昼頃になると、何かを見つけたダム。
うわぁ、これは大変だ。
海の中にある船の部分が、なんか紫です。
よくよく見るとゼリー状の何かがべったりとくっついてる。
幸いまだスクリューの辺りにはいないから推進力とかには影響なくて気づかなかったけど、なんだろあれ?
「貝の一種だね。」
とトッチィ。
「けっこうあちこちの海にいるんだ。獲物が自分の上を通りかかったら、ゼリー状の体液を出して、くっつく。そのまま獲物に海の中を運ばれて繁殖するんだけど、あのゼリー状の物質は魔力を吸うんだ。おそらく、魔力に惹かれて体液を出してるんじゃないか、って習ったよ。」
え?
この船、魔力でコーティングしてるようなもんだしなぁ。
て思ってたら、ゴーダンに呼ばれました。
この船は、魔力で直接動いてるんだ。
操舵室には魔力を送る装置もあるし、そこに魔力を貯めておける。
「リミッター外すから、ダーは魔力を徐々に込めろ。ゆっくり増やすんだぞ。壊すなよ。」
だって。
魔力を食べるなら、もういらない、ってぐらい魔力をあげよう作戦だね。
僕は、やる気満々、で、でもちゃんとゆっくりと量を増やしつつ魔力を流していったよ。
しばらくして、甲板の方から「うぉー!」とか「やったー!」とかの声。
慌てて走ってくと、紫だったゼリーがなんだか黒っぽく硬くなってぷかぷか浮いてたよ。
「ねぇ、これって食べられる?」
ネリアがトッチィに聞いてる。トッチィが首を横に振ると、なぁんだ、とか言って、急に短い暗誦を行うと、バシってネリアの杖から炎の矢が!
あっぶないなぁ。
海の中をよく見ると黒くなっちゃった元ゼリー状の体液にくっついてブラブラしてる貝殻?を矢は貫きそのままジュッて、海に消えたよ。
お姉さんてば、いくら食べられないからって、死体にむち打つ行為はどうかと思うな、って思ったら、どうやらまだ生きてたみたいで、瀕死の状態になると毒を海に垂れ流すんだって。その前に、完全に殺しちゃうのが正解、だったらしい。
ネリア、疑ってごめんね。
こんな感じで航海は続きます。
ひょっとして普通なら危ないのかなぁ、なんて局面も、どうやら僕らには杞憂だったみたい。
そんな感じで、目的地クッデ近くの船着き場へと、僕らは無事到着したよ。
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