第98話 僕らは冒険者
花園で、くつろぎながら、今までの情報交換する僕たち。
花園で考えた遊びとか、セイ兄の服が似合ってたとか、ロッシーシも悪い人じゃないんだが、とか、三者三様、いっぱい話すこと、あったよ。
ちょっとの間だったけど、やっぱり仲間がどうしてるかわかんない、ってなると不安になるって、笑顔が減っちゃうって、実感でした。みんなの全開の笑顔と、心からの馬鹿騒ぎ。これが幸せなんだ、って、僕が欲しいのはこれなんだって、改めて思ったんだ。
ゆったりとした、楽しい時間を過ごしていたら、お昼過ぎにセイ兄が一人で帰ってきたよ。
最初はね、みんなで来ようと誘ったんだって。
そしたら魔導師ズの二人のお姉様方に、目をつり上げて怒られたんだって。
なんでも、精霊と会った、妖精を連れてる、ってだけでもとんでもないのに、その住処へとほいほい人を連れてくもんじゃないってことらしいです。
精霊は神聖で、ただただ崇めるべき存在、なんだって。
この世界、神様ってないけど、精霊の存在がそれに近いみたいだね。でもって、神様のとこで休憩しようぜって誘われて、行こう行こう!てならないでしょ、ってことみたい。
なんでも、魔法って精霊のおこぼれで使わせて貰ってるんだよ、って、学校で習うみたいです。
ドクに聞いたら、まぁ、そんなもんじゃ、てこと。
魔素、てのは、人でも別の生物でも無生物でもそれこそ大地にもあって、強弱がある。奇跡的に魔素が固まって産まれるのが精霊で、精霊は魔力そのもの。だから多くの魔法は精霊に祈って力を借りる、ていう呪文になってる、らしい。
少なくとも魔導師にとっては、そういう理解で、僕が聞いた精霊とは違うけど、とにかく魔法を使うには精霊に祈るしかない、ってのが常識なんだそうです。
ハハハ、僕みたいに前世のゲームから借りてる呪文じゃないんだよね。
魔法ってのは、理屈を知らなくてもイメージで使える。学校で覚えたんじゃないゴーダンみたいな魔導師ってのは、誰かに呪文とイメージを教わるだけだから、あんまり精霊とか意識しないらしいけどね。
ちゃんと魔導師としての教育を受けた人、ってのは、まず精霊と親しくなりなさいってお勉強するんだって。実際に精霊と会えるわけじゃない。でも、感じるんだ、そうです。そうすると、今まで使ってた魔法より強く正確に魔法が使えるようになる。そういう経験をした人が、魔導師として大成するってことみたい。
そこでいう精霊って本当の精霊じゃなくて単なる魔素の把握じゃないかな?て思ったのは、内緒だよ。
ドク曰く、魔法はイメージじゃから、間に精霊という存在をかませることで、イメージ力が上がって魔法の練度が上がるんじゃろ、だそうです。実際に精霊自体は存在するから、伝説で知ってるだけでも、イメージしやすいんだろうね。
そんなわけで、帰ってきたのはセイ兄だけでした。
セイ兄は騎士組にも虐殺の輪舞にも会えて、ちゃんとお話しをしたそうです。
虐殺の輪舞によると、やっぱりギルド長はうさんくさそう。
結果から言うと、どうやら虐殺の輪舞とか宵の明星とか、他にも何組か、力のあるパーティを引き連れて、北の魔物を駆逐、境界線を押しのけよう、と、考えてるみたい。
で、その成果を持って議員になる、というのが計画だろう、ということです。
虐殺の輪舞は、どうやらクッデで仕入れた情報を精査するのに昨夜はがんばったみたいだね。
あっちから帰ってきてた知り合いもいたみたいで、「ここのギルドは討伐派とずぶずぶだ」って内容の裏取りすると、さっき言ったみたいなことになった、らしいです。
虐殺の輪舞はね、できればクッデに行きたい、というか、僕らにも行って欲しい、そうです。
なんでもクッデでは、退却派とか維持派の議員が優勢ってことだけど、それは実際に戦ってる騎士や冒険者が苦戦してるから支持が取りやすいってことみたい。町の人だって、戦ってくれてる人を間近で見て、これ以上戦線を押し上げろ!なんて言えない、て思ってくれてるんだって。
で、この町の小さなギルド。そこのギルド長は、虐殺の輪舞がいうには、「良い奴過ぎて馬鹿」だそう。
何でも冒険者ファーストって言うのかな?とにかく冒険者にむちゃぶりをさせないように、トゼからの突き上げも、議員からの文句も、全部引き受けて、戦ってくれるような、そんな人なんだって。冒険者からの信頼は厚い、けど、トゼのマスターとは犬猿の仲。一応地位的にはトゼのギルド長が上。そんな人が有力冒険者パーティを引き連れてやってきたら、それこそ放逐されかねない、てことみたい。
虐殺の輪舞としては、このクッデのギルド長に力を貸したいんだろうね。
セイ兄の話を聞いて、ゴーダンは渋い顔。
「政治に関わると碌なことは無い。」
たしかにそうだよね。
でもさ、冒険者思いのギルド長って素敵じゃない?
僕らは冒険者。
そんな冒険者を大事にしてくれるギルド長なら力になりたい、て、変かな?
「僕は、最近あんまり戦って無くて、なんだか暴れたい気分だなぁ。」
ハハハ、セイ兄ってば、その援護射撃は、お馬鹿すぎるよ。
「この国にいる間に、ちょっとランク上げたいんですよね。」
アーチャってば、まだ冒険者なりたてだから、ランク最下位だもんね。それにお互いの戦い方ってのかな、連携とか、ちょっと見ときたいよね。
「ああ、分かった分かった。お前らがみんな大馬鹿だって分かったよ。そのクッデのギルド長と同じ馬鹿さ加減だが、まぁ、似たもんどうし良い出会いななるかもしれん。となれば、さっさと出発するぞ。ラッセイ、やつらと連絡は?」
「例の場所から森には入ってます。おそらくそこで待機中です。」
「よし、だったら、彼らを回収して、森伝いに町の北側に出る。船が出せそうな所で海へ出て、そこから、北上、クッデに向かう。」
「でも、海、危ないんでしょ?」
僕は、ちゃんと覚えてるよ?
「このメンツで少々魔物が出たところでどうってことないさ。むしろそれでダメなら引き返す。クッデ行きはチャラだ。」
ハハハ、ゴーダンらしいや。
僕らは、精霊さんにお別れして、エアを連れて、花園を後にした。
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