第94話 続・情報交換
「リネイ、トッチィ?」
だよね?
いっつも、軽装の騎士姿だからびっくりしちゃったよ。二人ともどこからどうみても、冒険者。
「よかった。アレクも無事だったのね。」
「昨日、見当たらなかったから、探したんだよ。」
二人が口々に言う。
あらら、入れ違っちゃった?
「昼過ぎに、穏やかじゃないのが複数現れてね、身を隠したんだ。」
と、セイ兄。
「だってね。ダムに聞いたよ。」
「ああ。で、その格好は?」
「ゴーダンの指示でね。あの夜なんだが、しばらくレストランで話したあと、ロッシーシの屋敷に招かれたんだが・・・。」
「私たちは聖王国の騎士団の格好だったでしょ。どうやら聞かせたくない話だったらしくて、いったん屋敷で団らんしたものの、一室をあてがわれて、下がらされたの。そのあとは、ゴーダンとも博士とも会えてないわ。」
「アーチャがうまくやったみたいで、ロッシーシに張り付いてた。朝に僕らだけ、屋敷から出されてね、その時、アーチャからゴーダンからの伝言を受け取ったんだ。」
トッチィが、セイ兄に手紙を渡したよ。
うん、この汚い字は間違いなくゴーダンだ。
僕も、横から顔を出してその手紙を読んだよ。
どうやら、僕らとの合流を目的とするように、って書かれてるみたい。それと、騎士団の格好は目立つから、冒険者を装うように、ってこと。
あとは、ロッシーシがドクとゴーダンにセスのために力を貸せ、と言ってるようだけど、セスのため、ってのがどうやらアーチャと違うみたい。でもアーチャはロッシーシに侍る作戦ってところかな?最後に僕の力をこの国の人に知られるな、とでかい字で書いてる。といっても、僕って名指しじゃないけどね。
「宝石はきちんと保管するように。特に至宝は奥にしまっておけ。」だって。
国じゃ、僕のこと王様が言ったから「至宝」なんてふざけて言われちゃう。さすがにこの国でそんなこと言ったってわかんないだろうけど、少なくともトレネーの冒険者が見たら、誰でも僕をしまっとけって読むと思うんだ。
どっちにしても、内容的にはそんな感じ。仮にロッシーシ側の誰かにチェックされても、二人がお手伝い頼まれてるけど今考え中で、アーチャはあこがれの長老について勉強中。二人が帰るなら、先に帰ったヤツらといっしょに、宝石とか保管よろしく。としか読めないだろうね。あとは、町ブラするなら騎士団の服目立ちすぎ、て書いてるぐらいかな?
二人によると、昨日の朝、屋敷を出て、まず服を手に入れたんだって。そして僕らと合流前に二人で話し合いながら、計画練ろうと、宿に入らず、近くのカフェで話し合ってたんだって。
二人も王国の騎士。てことで、政治的匂いをかぎ取った、ってところかな?子供たちをそんなのに巻き込むわけにはいかないし、かといって、ゴーダンたちを放置もできないし、と、今後の対策を立ててから僕らの所に戻ろうと思ったみたい。
そしたら、たまたま、宿での喧噪を目撃。
どうもその騎士ってのが、見覚えあったらしくて、たぶんロッシーシの息がかかってるんじゃないか、ってことだった。
野次馬に紛れて様子を見てると、もう一方は冒険者っぽかったって。エルフ中心の冒険者たちで、ゴーダンを強引にギルドに連れて行こうとして、騎士とかち合った、ってとこだろうって。
宿のスタッフはね、ゴーダンは帰ってきていないから、って断ったんだって。冒険者は、確かめさせろ、と中に行こうとし、騎士は中に行くなら、こっちに権利がある。自分たちはゴーダンの連れが目的だ、なんて、言い争いになったみたい。
でもね、いいお宿だね。
たくさんの従業員さんが出てきて、客の許可が無い限り、何人たりとも中に入れない!て、彼らを阻止したんだって。これには野次馬たちも大喜び。
さすがに拙いと思ったのか、二組とも帰ったんだって。
で、二人がそれぞれのグループを手分けして追跡したらね、案の定、騎士たちはロッシーシの屋敷へ入っていったらしい。冒険者の方はギルドに入っていって、しかも、「タウロスはいるか。」とかいいながら、奥に入って行ったんだって。タウロスってたしかギルド長の名前だよね。
二人は、このお宿なら安心、と、夕方になって戻ったんだけど、僕らはいないし、帰ってこない。さっきの騒ぎで逃げたのか、それとも捕まったのか、って今日は朝から僕らの足跡を探していたらしい。
「ダーたちの言ってた隣の部屋に、夕べ人の気配があったからもしかして、とは思ってたんだけどな、下で気づいて良かったよ。」
とは、ダムの弁です。
僕だったら、こんなに様子が違う二人に気づけなかったかもね。服で印象ってほんと変わるんだね。
でもさ、セイ兄が合図を残してたのに気づかなかったんだね、と僕が言うと、気づかないも何もなかったって言うんだ。よくよく考えたら、お互い違う部屋の鍵を持ってた。だから、宿側にお願いしてチェックでもしない限り、気づかないよねぇ。うん。セイ兄ってば、やっぱり詰めが甘いです。
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