第85話 人種の坩堝?
やっと、ギルド出発です。
やっとやっと、トゼの都が見れるんだ。
あのね、トゼは多くの人種が一緒に住んでる町。ドクや色々聞いた話では、人種ごとに差別ができちゃった、て、残念な情報ももらったけど、僕の生まれた国では、そもそもが僕らみたいな種族、人族って言わせてもらうと、その人族オンリーしか人間と認めていない、残念な国。
僕は、この国に来るまで人族以外っていうとドクと山の隠れ家の管理人ムーちゃん(獣人族。イエティって感じの人)だけしか知らない。一応、冒険者の中にはいるみたいなんだけどね。基本隠しているし、多分そうじゃないかな、って思っても聞かないのがルール。だから自分で人族じゃないです、って名乗ってくれた人が2人、て感じかな?
でもね。この国では、一応は平等にどの種族も生活していることになってるんだ。実際は、長命の種族ほど力を持っちゃって、差別が進んだ、なんて現実はあるけど、表向きは、皆で仲良く国をつくろう!ってのが、国是なんだって。
でね、僕たちの国には王様がいて、貴族がいる。
だけど、この国は、代表者が集まって相談して国を運営しているんだって。
評議員、ていう代表者の合議制?てことらしい。
ただ、問題は、賢い人が代表になって国を運営して上げる、みたいな形なので、年功序列っていうのかな、そういうのがまかり通っちゃう。そもそもが病気とかでお仕事がもう無理です、って言わない限り、終身任期制だそうで、そりゃ長命種が残っちゃうよね。
ただ、そういう国だから、都はきっと人種の坩堝だろうって思って楽しみにしてたんだよ。いろんな種族の人が賑やかに闊歩する町並み。ザ・ファンタジー、なんて思ってたんだ。
なのに門からギルドに超特急で連れてこられて、まったく町なんて見てない。早く見たくてうずうずするのも分かるでしょ?
と、最初は思ってました・・・・
何、これ?
えっとね、異国情緒はあります。
僕らの住んでいた国は、基本石でできた家。
でもこの町は、石と木が絶妙に組み合わされていて、外国来たなぁ、って感じはするんだ。
地面も、石畳じゃなくて、固められた土、みたいな場所もあるし、所々街路樹みたいなのもあって、緑が多く取り入れられてる。
でもね。
僕の想像と違ったよ。
歩いている人の大半は、人族だった。
人口比?
最初はそう思ったんだ。
一番多いのが人族。そして獣人族。次にドワーフで、その次がエルフ。他に、精霊種、というのもいたというけど、ほぼおとぎ話。
どうも、種族によって、出生率が違う。短命なほど出生率は高い。その点では獣人族の方が人族より出生率は高いんだけど、死亡率が高いことと、迫害等でものすごく人数を減らしたことが原因で、今の人口は人族が多いんだって。それに、人族というのはちょっとした特徴があって、他の種族とも子供を成しやすい。なんだったらエルフ同士よりエルフと人族のカップルの方が出生率は高いんだって。生まれた子はエルフ寄りの特徴を持つことが多く、子供が欲しいエルフ種はこぞってある期間は伴侶として人族を選んだりする。
実はセスの人は人族の血を受け継いでいる人も多いんだって。見た目はエルフなリッテンドの人々も、事変後生まれはほぼ人族の血が入ってるんだって。
ドクなんて、エルフもドワーフも人族も入ってるらしい。定かではないけど獣人族の血も入ってるかもしれないんだって。
こんな事情もあって、トゼの町を歩くのは、人族の血を持っていても、見た目エルフやドワーフ、獣人族も良い具合に混ざってると思ってたんだよ。
だけど、ほぼ見た目人族が7、8割?
遠慮しつつ、端っこを歩く獣人族がちょびっと。
さらにちょびっとのドワーフやエルフ。
・・・・・
想像してたのと違うよ~
これについてはアーチャも聞いた話だけど、と言いつつお話ししてくれたよ。
「この町のエルフは、まず歩かない。移動は馬車なんだ。だから道でみかけるのはよそ者か、僕らみたいなセスや政府関係で働いてる者または騎士、もしくは冒険者ぐらいだ。ドワーフは、そもそもが引きこもりが多い。だから、外に出歩くのは飲み屋が開く時間ぐらい。あと、店を開いているのは大半がドワーフなんだ。人族もたまにはいるけど、商業ギルドに行くと、ほぼドワーフ。たまに人族。雇われ者か、露天なんかは、人族が中心。だから町中で働いてる姿を見るのはほぼほぼ人族だね。獣人族は、町の外で狩りや農業をしてることが多いんだ。」
さらなる解説で、人足とかも親方はドワーフ、下っ端は人族、さらに下に獣人族って感じらしい。雇ってるのがエルフってこと?
なんか、かなり残念な国に見えてきたよぉ。
そんな話をしつつ、ギルドで教えて貰った立派な宿屋にやってきました。
本当の意味で差別はしない、良いお宿、だそうです。
うん、お金を払えばエルフも獣人族も仲良く一緒。
だけど、お値段も立派だそうです。
僕たちは、それなりに稼いでるから大丈夫だけどね。
騎士の二人が渋ってました。でもね、僕たちが一緒だから、宿代ぐらい宵の明星で全部出すよ。あ、バフマ君、君も執事関係なくちゃんと旅行者してね。
で、その日は、荷物置いて、ゆっくりして、みんなでご飯を食べに繰り出そう、ってことになりました。
初めての、レストランでのご飯です。
うん。考えてみたら、この国に入って随分だけど、ふつうに民家借りてて、しかも村や集落の人とみんなでご飯、ばっかりで、まともなお宿もレストランも初めてだったよ。地元に受け入れられての共に生活、も、楽しいけれど、お宿にレストランってのは、旅に出てるって感じで、なかなかいいもんです。
やってきたのは、この町でも老舗なレストラン。ドクでも知ってて、昔ひいじいさんも訪れたっていう、そんな歴史ある有名店です。
なんかね、このお店の特徴は油、なんだって。どうやら他にはない、素揚げの料理が名物、らしい。お野菜もお肉もお魚も、なんでも素揚げして、お塩とかハーブとか、そんなの振って食べるんだ。揚げ物ってそういや、珍しいかも。ないわけじゃないけどね。かなりの高級料理のはず。
素揚げらしい、と思ってそんなに癖のあるものを想像しなかった僕だけど、どうやら揚げ油は動物性みたい。うん、ちょっと、というか、かなり苦手でした。グスン。これの良さが分からないなんてガキだなぁ、なんてゴーダン言ってるけど、僕、5歳。分からなくったって、良いんです。
でもね。そんな風にゴーダンが言うから、他の子供たちは、モクモクと食べてる。まぁ、食料を無駄にするような生活送ってないからね。
ふふふ、僕の秘密兵器。
物騒だからってバフマが手放さないリュックに僕は手を突っ込んで、蜂蜜とナッタジ特製チーズ。これをお皿に溶いて、つけて食べれば、うん、ちょっとは食べられるようになったよ。
「ダーだけずるい!」
なんて言って、今まで拙そうな顔でおいしいおいしい言ってたのはだぁれ?
ちょっとだけ意地悪言ったけど、ちゃんと欲しい人にはお皿に入れて上げました。
チビッコズ全員と、あと、リネイもダメだったんだね。ハハハ。全然子供関係ないじゃん。
そんな感じでワイワイ楽しくお食事です。
あ、別に、自分で味替えしても怒られなかったよ。なんでもたくさんの種族や海外の人がいるから、文化の違い、で、大体のことは許されるそうです。そういうところはみんな仲良しの国なんだけどなぁ・・・
そうやって、宴もたけなわ、大人たちはほろ酔いになってきた頃・・・
「あれ、グラノフじゃないか?戻ってきてたのか?」
突然、少し離れた席で食事をしていたおじいさんが声をかけてきたよ。
?
背の高いドワーフ?といった感じの人。
「ロッシーシか?」
ドクが驚いたように立ちあがった。
誰だろう?
僕は首を傾げたよ。
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