第84話 ギルドあるある?

 ナスカッテ国トゼの冒険者ギルド。

 最初にお話ししたのがギルドマスターで、なんか、セスの疑惑(?)を話されたのは、僕らが、というよりゴーダンが高ランクの冒険者だから、国とかの思惑なくセスの情報をくれないかなぁ、と思ったってところだろう、ていうのが、大人たちの意見。でも、セスの民のアーチャや、何よりセス出身のドクがいたことで、ちょっとギルマスも困っちゃったんだろうって。なんたって、アンタッチャブルのSランク冒険者、だもんね、ドクは。あんまり変に怒らせたら、疑惑のセスと組んで、国を滅ぼしかねない、なんて思ったのかも、だって。フフフ。ドクってば危険人物だぁ。要チェック扱いが僕じゃなくて、ちょっと楽しかったりして。

 「そもそも、セスの疑惑の原因は、ダーだからね。」

 セイ兄にジト目で言われたけど、はい、ごもっともです・・・


 そんな馬鹿なやりとりをしている間に、ゴーダンとアーチャが受付へ行ったよ。

 一応、ここらで依頼を受けられるように、滞在の申告、なんだって。同じ領内でうろうろするなら、僕らは領都の名義のギルドカードだし、あんまり問題ないけど、領どころか国も違うから、依頼を受けたり、素材とか魔石の換金を考えると、これをやっていた方がいろいろ便利なんだそうです。僕ははじめて知りました。


 で、今はアーチャが悩んでる。

 今ここで冒険者登録したら、一応所属はここのギルドになるんだって。ギルドの所属は変えることが出来るけど、手続きは面倒。でも彼の希望としては、一刻も早く宵の明星を名乗りたい、っていうことらしい。

 ギルドカードを作れば、依頼とか受けて、成功の記録がつく。それは全世界に共通で主張できるから、ランクアップには有利。悩んだようだけど、ここで冒険者登録して、ついでにうちのパーティへの所属も届け出たみたい。パーティメンバーになってれば、ゴーダンと一緒だと、国から国の移動が楽だ、というのが決め手になったみたい。ていうか、アーチャ的には、はじめっからそのつもりだったみたいだね。


 アーチャを見て、チビッコズが、自分たちもって言ったけど、未成年だから見習いにしかなれないし、所属ギルドは師匠側と同じじゃないとダメなんだって。さすがにアーチャの見習いにはなれないよ。だってFランクなんだもん。他はみんなトレネー所属だからね。ていうことで、子供たちの登録はお預けです。



 あとは、ギルドで伝言ないか聞いてました。虐殺の輪舞と合流するか、どうしようって話。

 伝言はやっぱりあって、雪を見たいので、初雪を観測するまで、近辺で依頼を受ける、だそうです。どうやら先に帰っても良いし、雪見たら先に帰る、って感じかな?

 その話を聞いて、僕ら子供組は興味津々です。だって、見たことないよ、降ってる雪なんて。

 あのね、フミ山の頂上の方って白いんだ。

 あれは雪でできてるんだよ、ってみんなに教えてあげた。

 僕は1度積もってる雪は見たことあるよ、ってちょっぴり自慢したよ。ネイティ山てお山は、万年雪が積もってるんだ。ひいじさんの隠れ家の1つが、なんとその雪山の頂上にあるんだよ。


 でもね、雪が降る、て、なんて、神秘的!

 見たいなぁ。

 ゴーダンに子供たちみんなでお願いしました。

 騎士団の2人は嫌そうだけどね。あと、アーチャも。

 そりゃアーチャは雪なんて毎年見てるし、迷惑もかけられてるらしいので、気持ちは分かる。

 「僕、お空に向かってお口を開けて、雪をパクってやりたいんだ。」

 「何それ、スゲー。」

 「それって、お行儀悪くない?」

 「みんな子供だなぁ。俺は見るだけで満足だよ。」


 なんて、ワイワイやってたら、近くを通りかかった冒険者の一団が、怒鳴りつけてきた。

 「ここはガキの来る所じゃねぇ。とっとと失せろ。」

 うん、まぁ、騒ぎすぎた。

 だからって、言いながら、その子供に向かって蹴りをいれるのはどうかと思うんだ。

 蹴りかけた足をセイ兄が片手で掴んで、ポイって放り投げたら、その冒険者、お尻ついてひっくり返っちゃった。

 そうしたら、お仲間の人達、雄叫び上げながら殴りかかってくるんだもん。

 「ガキども、あしらってやれ。」

 それを見てゴーダンが、僕らに向かってそう言った。

 え?いいの?暴れちゃうよ?


 セイ兄も、すっと後ろに下がる。

 僕は、バフマが下げてたリュックに手を突っ込んで、木刀を4本出したよ。それをみんなに投げて渡すと、バフマの肩を借りて、一番強そうな人に向かってジャンピングアタックだ。

 その間に、みんなも1人が1人に対峙して、あ、ちょうど同じ数だね。

 僕が対峙した人は、頭に一発で倒れちゃった。

 他の皆も、すねからの胴とか、お腹からの喉、とか、まぁ、簡単に伸しちゃったよ。

 ものの、数秒。

 なんか、シーンと静まりかえるギルド。


 パチパチパチパチ

 

 その時、ギルマスが拍手をしながら現れた。


 「さすがは、弾刃撲滅のゴーダンに、魔導王グラノフが育てる子供たちです。D級の底辺を生きる冒険者では歯牙にもかかりませんか。皆さん。彼らには手を出さない方がいいということは分かったと思います。しばらくこのギルドを拠点にしていただけるようですので、学べることは学び、礼節を持って接するよう、周知してくださいね。」


 えーーーー!


 そのあと、ギルドは驚愕に包まれた、ってことにしておこう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る