第82話 セスの村 そして・・・
ドクの家は樹海の中だけど、10分か15分も歩いたら、結界の外、つまりは普通の森に出る。
森の中にはセスの集落が点在している、とはいえ、フミ山の北側は人外未踏の地で、集落ももう少し南下しないとないんだって。北側は樹海の延長的な扱いなんだ。
で、僕らは俗にセスの村って言われるセスの玄関口としての集落に向かうため、南東になるのかな、まぁ、そっちめがけて移動してるんだ。
この辺りはセスですらほとんどこない。なので道もない森。魔物も結構いるよ。
襲ってくるやつと、ご飯に良い奴は狩りながら、僕らは移動する。
でね、ここにきてアーチャが一緒でよかったって思ったよ。
さすがに地元民、僕らが気づかなくても、簡単に魔物を見つけちゃう。僕らのパーティの斥候役はヨシュ兄だし、虐殺の輪舞がいたときは、あそこの斥候のダムとかに任せちゃってたから、アーチャがいなかったら、ワタワタしてたよね、きっと。
僕も索敵、とかできるはできる。人間レーダー、なんて、自慢していたときもありました。
でもね、僕の場合、魔力を薄くのばしていって、そこに魔力がかからないかな、って見る感じなんだ。だから、魔力の弱い人間相手なら大丈夫だけど、敏感な魔物には索敵してること気づかれちゃって、逃げるか逆に寄ってくるんだ。こんな魔力に満ち満ちた森では、そもそもよっぽど特殊な魔力か強力な魔力を垂れ流してくれなきゃ、いるかいないかさえ分からない。だったら、セイ兄とかゴーダンの経験からくる勘、なんて怪しい技の方がよっぽど有用なんです。ちょっと悔しいなぁ・・・
ということでアーチャのおかげもあり、楽しく森林浴&狩りをしながら、3日ほどかけて、セスの村にやってきました。あ、メイン集落って意味のね。ああややこしい。
なんと、セスの村に来たら、アーチャママのウィンミンさんが待っててくれたよ。
ウィンミンさんは、なんていうかなぁ、優しさが溢れている、ザ・聖母みたいな人。セスでも有名な人で、男女ともにファンが多そうです。
でもね。アーチャが言ってたよ。優しいは優しいけど、自分の意見は絶対曲げない人なんだって。あんまり意見は言わずにうんうん聞いてるけど、ここぞというときに発言したら、それが決定になる道しか見えない、怖い人、だそうです。
でね。こういうことをこっそりアーチャが言うと思うでしょ。
違うの。
ウィンミンさんの前で言うもんだから、こっちがあせっちゃった。
でもね、ウィンミンさんてば、そうかしらぁ、と言いながらニコニコしてる。
器が大きすぎて、計り知れない、そんなママさんなんだ。
ちなみに、アーチャが外の世界に行く、ということはリッテンド集落のみんながみんな反対してたんだって。もちろんリーダーでパパであるランドルさんも含めてね。でも、ウィンミンさんが、たかが100年ぐらい子供がいなくてもセスは困らないでしょ。見聞を広めてくる方がセスのためです、なんて、強く主張したらしい。で、結果はこの通りです。ランドルさんが思いついたように、僕の監視だなんて送りだそうとしたけど、裏にこんなやりとりがあったんだね。すごいママだなぁ、て思うよ。あ、一番はもちろん僕のママだけどね、エヘっ。
セスの村では、『長老』と呼ばれる、セス部隊の生き残りさんがいます。400年前からの生き残り。でね。僕らはウィンミンさんに連れられて彼らと面会しました。
ウィンミンさんと何人かがリッテンド集落から、まっすぐここに報告に来てたみたいで、僕のやっちゃったことは、すでに周知の事実になってました。
みなさんね、僕のことは怒らないの。
むしろ人々を癒やしたことと、樹海対策に新しい可能性を示してくれた、なんて言ってお礼を言われちゃった。
僕たちは、あ、ドクがメインで話したんだけどね、小さな再現はできたけど、あの規模はどうすればいいか分からない、って報告したんだ。そしたらね、僕に、一生をかけてちょっとずつでも研究して欲しい、って頭を下げられちゃったよ。
でね、僕は名誉セスになりました。
短い間だったけど、長老さん達とお話しして、名誉セスになって、また来るって約束して、僕たちはセスの村は1泊だけで、次へ出発です。
そう。
この国の首都、トゼの都。
雑多な種族が入り乱れる都市。
セスの村からまっすぐ東へ。
馬車もすれ違える街道がしっかり伸びているので、安全かつ快適な旅。
馬車も進められたけど、しっかり道中を楽しみたいと、徒歩で平均5日の旅をすることになったよ。
街道を行くと、ほとんど魔物は出ません。
ところどろに、森の中へとつづく道があって、そっちは整地されてない。
むしろ、人がたくさん行き来したから道になったのかな?なんてところもあるし、そもそも、道だったんだ!てビックリすることも。
たまに、アーチャに教えて貰って、美味しい獲物を獲ったりしながら、あと、焼き物に良さそうな土を採取しながらの、寄り道いっぱいの旅です。
でもね、文化の違いなのかな。
白くて尾がとっても長い、きれいで美味しい鳥がいてね、夢中で捕まえてたんだけどね、この鳥なんて言うの?って聞いたら白い鳥、だって・・・
どうやら固有名詞をつける習慣がないようで、魔物だって、でっかいくろい奴とか、早いまだらの奴、とか、分かったような分かんないような、そんな呼び名で呼んでるんだ。うーん、僕は固有名詞がある方がわかりやすくて好きだなぁ・・・
そんなこんなで、楽しい5日の旅をしていたら、独特の城壁に囲まれた町が見えてきたよ。そう、首都トゼです。
今までみてきた街を囲む塀って、石造りだったんだけどね、なんと、ここは木製なんだ。
でっかい丸太が縦にきれいに並んでる。ところどろこ、枝が出て葉までつけてる。
なんか、とってもファンタジー。
僕らは目をぱちくりしながら門へ向かう。
あのね、門はとっても小さかった。
日本のお城の門みたい。
聞いたらこっちは裏門。
本当は港から外国人は入って来る。
それと、一般的に国の移動は、海岸線に沿った街道か、海からの移動が主。
僕らが来たのは、森にひっそり住む人達だけが使う、そんな門。
セスがメインで、彼らは別格。
他に使うのはパッデの人みたいに、普通の町で住めなくなっちゃった虐げられた人達が、買い出しや細々とした収穫物を売りに町に訪れる時用の門。
そんなこともあって、門番さんは僕らを見て一瞬警戒したよ。
でもね、僕らの格好は冒険者。
もうひとつ、この門を使うのは冒険者もあるんだ。なんせ森は魔物の宝庫。森で魔物を狩って生計を立てる冒険者はそこそこ多いようです。
ゴーダンが、自分の冒険者カードを見せると、門番さんたちは目を白黒していたよ。Aランクなんて初めて見たんだって。
それにアーチャ。
なんだかんだと言ってもセスの有名人。
門番さんには顔パスです。
で、僕らもギルドカード見せる?と言ったら、とんでもない、とか言って、丁寧に全員、門の中へと案内された。
へこへことお辞儀しているのが、ちょっと滑稽だったよ。
なんだかね、頼んでないのに、詰め所からエライ人が出てきて、僕らを(ていうかゴーダンをだろうけどね)冒険者ギルドに案内しちゃった。
でね、受付さんにこそこそって耳打ちすると、慌てて中に入っていって、エルフのお兄さんを連れてきたんだ。
僕らはそのお兄さんに連れられて、奥へと入って行った。
応接室らしきところにつくと、その人は、この町のギルド長です、と名乗って、自らお茶を出してくれたよ。
ん?
トラブル、の予感?
せめて、宿屋を先にとりたかったなぁ、なんて、僕はこっそり考えてたよ。
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