第81話 ドクのおうち
実験を終えて、歩みを再開した僕たち。
アーチャの予想通り、ちょっと中へ入ると、見たことのない魔物が出てきたよ。
魔物は、まぁ、人間にもあるけど、魔力の器官であろう魔石があって、それを使い魔力の出し入れをしているらしい。
なんでこんな基礎的なことを言い出したかというと、僕のホーリーがこれと関係ありそう、だからなんだ。
僕らは、魔物と何度か遭遇したんだけど、ちょっと気になって僕に倒させて貰ったんだ。あのね、ここの魔物は、この土地の魔力を吸収して育ったから、妙に凶暴に、また強くなってるって思ったの。
だったら、この魔力に効果があるホーリーをぶつけたら、どうかな?て・・・
許可を受けて、やってみました。
まず第一に僕のイメージ、なんだけどね。
そもそも清めるってイメージなんで、本来優しいんだね。
でもって、適当な力で清めるイメージだけ放つと、なんと、魔物の怪我が治っちゃった!
そういや、セスの人達、怪我が治った、なんて泣いてたけど、これのせい?
でもって、イメージで穢れを祓う、と思い、魔物を穢れだって思うでしょ。
そうやってホーリーを放つ。
なんと、白くなって消滅しちゃった。さっきの木と同じに、いったん魔力がない、と、思ったら白っぽくなって、形が崩れちゃったんだ。
で、次に弱い力でホーリーやってみた。
白くなるまでの魔力を注がない。
何度かやって成功したよ。
それで分かったこと。
ホーリーは魔石に作用してるみたい。
魔石を活性化させて、治癒。
魔石から魔力を吸い取って白くなる。
考えてみて。
僕の気持ち一つで治癒と破壊。
ん、ダメだね。
ていうことで、これは戦いで使用禁止、ってなりました。
危ないだけじゃなく、白くなっちゃったら魔石ごとなくなっちゃうから、魔石でお金を稼ぐ冒険者としてもNGです。
そんな風に、ちょっぴりホーリーの検証をしつつ、樹海を進むこと、2日。
やっと、到着しました、ドクのおうち。
んとね。
外見は、森の隠れ家に似たログハウス。
どうやら、複数の建物があって、きいたら実験室とか研究室。それに物置用に別に建ててるんだって。
結界からギリギリみえないぐらい、ちょっと樹海に入ったその場所は、樹海の中の安全地帯。外の結界と同じシステムの結界で、ここだけ樹海と違う。
この範囲なら、樹海を後退させられるのかな?て聞いたら、一応昔々の樹海と競り合ってた頃の技術も残ってて、ものすごく魔力がいるけど、昔は端の方なら押し戻すこともできたらしい。押し戻しては結界を張り、みたいな感じで、今のラインはギリギリ競り合って均衡が取れた所なんだって。
ドクは、はじめに集落を出て冒険者になろうと思った若いときに、実験のためつくった魔導具をここに仕込んで、樹海を後退させる実験をしたんだって。で、100年近くして、冒険者をやめることにし、ここに戻ってきたら、今ある分の樹海じゃなくなった地域が出来てたらしい。それで、外と同じ結界を張り、ここに家を建てて、研究三昧の隠居生活をしていたんだって。
ときどきふらって出かけて、別の国とか地域で、素材集めをしたりするのにお出かけしてた。そんなときに、ひいじいさんを拾った、なんて言ってる。
で、セスに興味持ったひいじいさんとはこの大陸に1回来よう、なんて言ってたんだけど、駆け出しだったひいじいさんが、結局この大陸を訪れることが出来たのは、ゴーダンと出会った後のこと。結婚して子供も出来て、でもどうしても諦められずに船を用意して、やってきたんだって。
セスの村っていうとここ、っていう街道終点にある集落で挨拶して、エルフやドワーフといったセスパーティの重鎮の生き残りと仲良くなり、その後はドクの家でアーチャ一家と出会った。その後は、再びセスの村のメイン集落を通り、トゼの都へ。そこでなんかトラブルに遭って、パッデの先祖とともに森に入り、村の基礎を築いたんだ。僕らが来たルートで、この大陸を出て、僕らの大陸へ戻ったんだけど、パッデの業績をチェックしに戻る、と言い残して、それは結局実現できなかった、ってことらしい。
そんな話をドクにポツリポツリ話して貰って、ひいじいさんでも駆け出しの頃はあったんだな、なんて不思議な気持ちになったり、みんなで押し返した樹海の浸食を放置した魔導具だけで再現するなんて、やっぱりドクはすごいなぁ、と思ったり、なんだか、人に歴史あり、で面白いね。
今日はここで一泊する。
あれ、一泊だけ?
ドク、ご用はないの?
聞いたら、
「ほれ。」
どこからか出して来たノート。
ん?日本語だ。
見ると、ひいじさんの字で、人の名前と住所、と言っても国と都市名だけだけど、が羅列している。
で、いくつかは線を引いて、これは消してるのかな?
あと、1つだけ、○がついてる。
どちらもないのが数人。
なんだろう?
僕はドクを見た。
「なんでも、同郷人候補リストだそうじゃ。違った人や亡くなっていた者は消しとると言っておった。」
「一人だけ丸がついてるんだけど。」
「カイザーって書いてねぇか?」
そういや、ナスカッテ国ジブの集落、名前はカイザー。
「うん、そうだね。」
「だったら、間違いねぇな。トゼ村からここに来る前に寄ったドワーフだ。何でも当たり、らしいぞ。」
「ホッホッホッ、カイザーか。懐かしいのぉ。アレクよ、会ってみるか。」
「え?いいの?」
「いいんじゃねえか?なぁ。」
みんなは興味深そうに見てるし、うんうん頷いてる。
「ジブは物作りがさかんな町じゃ。面白いもんもあるじゃろうから、トゼの後、帰り道にでも寄るかのぉ。」
「やったぁ。」
「多分、そのノートはじじいが同郷人に会えればなぁ、とつくってたもんだろ。ここにあったのか。」
「エッセルに頼まれてのぉ。自分が死んだ後、同郷人が現れたら、これを渡してくれと言われとったんじゃ。次に来たときにチェックを補充する、と、言っとったが、生憎、のう。」
「ああ、結局じじいも完全じゃなかったってことさ。ダー、リストを読んでみろ。俺が知る限り、会った奴、死んでた奴、教えてやる。」
僕は、そのリストを読み上げた。
といってもチェックのないのは7人。
3人が削除、1人は当たり。3人はまだ未確認、だって。
当たりの人。
あ、ザドヴァ国かぁ。ガーネオの国だよね。残念。
未確認が、タクテリア2人にセマンターレ1人か。帰国したら探してみようかな。
僕は、にやにやと、そのリストを見ながらそんな風に皮算用中。
「でも、ひいじいさんも、同郷人に会いたいなんて思ってたんだね。」
「あぁ、まぁ、会いたがってたのは事実なんだけどな、多分お前の思ってるような郷愁とかとは違うぞ。ま、カイザーに会えば分かるか。」
ニヤニヤとするゴーダン。
?
何かあるのかな?
でも、僕はやっぱり楽しみです。
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