第80話 白い大地と樹海と
白い大地を(僕は抱っこされてだけど)、2時間ぐらい歩いたよ。奥へ、ていうより斜め横断って形かな。
樹海自体は結界のあったところからでも見えていたからそうでもない、と思ってたけど、意外と深くやっちゃってたんだねぇ。
白い大地で、魔力とかが吸われるかと心配したけど、大丈夫だったみたい。
まぁ、僕が触れると吸い込むみたいだから、僕の場合を除く、だけどね。
でもちょっと疲れやすくはなるのかなぁ。
なんかね、人間、だけでもないな、生きとし生けるものはすべて動物も植物も魔力を持っていて、それも使って行動してるんだって。でね。空気中や大地、というような自然界からの魔力を吸収し、逆に与えるといった循環が起こるんだって。一口に魔力って言っても質が違う色々なのがあるから、そうだなぁ、人が酸素吸って二酸化炭素を出し、植物がその二酸化炭素を吸って酸素を出す、あの循環に似たものが魔力でも起きている、って考えれば良いかも。
でも。この白い大地の上では魔力がスッカラカン。どうやら土だけじゃなくて空気中の魔力もスッカラカンみたい。だから、呼吸と同じようにやっている魔力の循環が行われず、歩いていると、自己生成する分より消費する方が多くなって、結果、疲れちゃう、てことみたい。
ということで、移動距離もそんなに稼げてないってのも、魔力不足が原因でもあるんだけどね。
ちなみにちょくちょく休憩を挟みつつ、僕の魔力をみんなにちょっとずつあげてるよ。道を通した人は、僕がいいよって思ってたら勝手に持っていけるみたいで、僕は順番に抱き枕にされてる。で、通ってない二人は、ドクが間に入って供給したよ。本当は僕がみんなにちょっとずつ分ければ良いんだけど、魔力を多く流しすぎると人も壊れちゃうから、ちょっと難しい。自分でいるだけ持ってって貰うのが正解みたいだね。
こんな風に休憩しつつ北西うーん、北北西ぐらい?に向かい約2時間。
ついに白いのが途切れた所に来たよ。
接しているのは樹海。
よく見ると樹海の方からゆっくりと煙みたいに魔力が流れてる。白ければ、演劇とかのモクモクってさせるドライアイスみたい。
魔力は流れてきてるけど、白い大地に到着すると急激に薄くなって、そのうち消滅してしまう。
でもきっと、ゆっくりゆっくり大地を浸食してくんだろうなぁ、て、思う。
ドクとかも僕と同じ感想みたい。といっても1年や2年でどうこうなりそうもないかも。
見ていると、ギリギリ樹海として残った境界線になってるみたいな大きな木の何本かに、ドクがなにやら魔力で書き込んでる。どうやら魔法陣みたいだけど、聞いたら、目印用なんだって。
どっちにしろ僕がパッデの村と貿易をしたがってるから、数年内にはこの辺りに来ることになる。そのときに、どのくらい白い大地が後退するかチェックするために印を付けている、だそうです。
何本かの木にドクが印をつけて、こんどは樹海を進むことになりました。
やっと大地だ!
僕も、魔力気にせず、歩いて行きます。
魔物は、白い大地には全然いなかったけど、この辺りにもいないみたい。
アーチャいわく、普段はここまで入ると、何匹か遭遇するんだって。でも、あの白い大地にビックリして奥に逃げたんじゃないかってことでした。
だったらってことで、ちょっとだけ実験してみよう、ということになったよ。
何がって?
僕の魔法で、樹海の濃い魔力を消せるかってこと。
「属性的には、ミミの治癒と同じ系統だとおもうんじゃが。」
だけど、魔力を吸い尽くすような、そんな治癒なんてきいたことがない、そうです。治癒はむしろ魔力を与えるものみたい。与えられれば吸うことも出来るから、ドレインっていうのかな、魔力を吸っちゃう魔法もあるにはある。超レアだけどね。魔物にはそこそここの魔法を持ってるのもいるみたい。
でもさ、さっき休憩のとき、みんなに分けた魔力、あれって与えるっていうより、僕から吸ったっていったほうがよくない?
そんなことを言ったら、そういえば・・・みたいな感じで納得するんだ。いや、そこの感性わかんないよ。吸うって発想なかったとは思わなかった。
だったら、僕は普通って思ってること、意外といける?
あのね、僕の中にある謎ゲーム知識にね、こっちではない属性があるんだ。それは光と闇の属性。今回のことでちょっと思ったのは、今遭遇している現象って、この相反する属性で解決するんじゃないかな?
治癒魔法を光とする。この樹海を浸食している魔力を闇とする。これはお互いがお互いによく効く属性だとしたら、力勝負になる。
えっとね、この説明が難しいのは、光と闇の力ってとこ。前世だと光=正義とか生、闇=悪とか死、みたいな図式があったんだけど、こっちでは、そういう意味づけっていうのかな?光と闇が対みたいな発想がないんだよな。うーん、昼と夜で説明する?だとしたら昼=治癒の説明が難しい。
僕がうんうんとどう説明しようかって悩んでたら、
「別に難しいことは良いからさ、やってみようよ、実験。ダーの魔法が樹海の魔力と反対で、力勝負ってことだろ?」
て、ナザが言ったよ。
うん、そうだね、やってみて、できたら正解。シンプルでいい。
「アレクの中にはなにやら答えがあるのじゃな。それを信じてやってみればよかろう。」
と、ドクのOK。
ならば、と。
僕のイメージでは、聖魔法はアンデッドに効くんだ。
なんとなく樹海の魔力は、そういう闇の力のイメージ。
僕、ママと違っていたいのいたいのとんでけー、で、治癒はできないんだけどね、ほとんどの魔法は某ゲームから呪文貰ってます。なぜなら、頭の中に動画でイメージあるから。しかもその呪文たちね、強弱が付けやすいの。基本の言葉に「ラ」を付けてちょっと強め。「ガ」を付けてもっと強め。そんな感じ。
で、僕はそれを頂戴して、
「ケ○ルガ!!」
中に向かって、治癒最大のイメージでぶっ放してみた。
結論。
効かない・・・・
うん、これは、治すイメージだもんね。効かないよね。
だったら、どうしよう。
むしろ浄化とか、そっちのイメージ?
穢れが消えちゃうようなそんなイメージは別のところから持ってこなきゃ、かな。
うん、ないね、この世界に、浄化ってなかったわ。
これはマンガかゲームかそれともどこで見たのかな?
そもそもちゃんと記憶があるわけじゃない。
でも、僕は白く清浄な力で、黒い邪気をはらうようなイメージが、なんとなく出来てきた。聖なる祝福。ホーリーとでも言おうか。
僕は、この世界にない邪気をはらう、という祈りを、魔力に込めた。
「ホーリー!」
!!
みんなの息を呑む気配がする。
「成功だ。」
誰かがつぶやいた。
一拍おいて、子供たちがうわぁ!って僕に抱きついてぴょんぴょん始めたよ。
それはたった1本の木だけだったけど、魔力がスッカラカンになっていて、その付近1メートルほどがぼんやり白くなっていた。
木は、見る間に崩壊していって、白い砂に同化した。
「どうやったか説明できるかの?」
「あのね、浄化をしようと思ったんだ。」
「ジョーカ?」
「多分前世の考え方だと思う。穢れ、ていうなんだろう?悪い魔力を良い魔力で消すこと?」
「魔力に善悪など聞いたことないが。」
ゴーダンが言う。
そうなんだ。
魔物と戦ってるけど、それは前世で普通に獣と戦う感じ。
悪いやつって思ってなくて、被害を出すやつって感じ。食べられるものを狩り、害獣を狩る、そんな感じで、前世でいう悪魔とかなんていうかなぁ、そういう、ただ悪い、なんてものが概念にないんだ。
だから穢れも浄化もない。
僕がこういう風に思って放った魔力が、たまたま僕が設定した邪を払う的な発想ではまって、成功した、としか言えない。
この「穢れと祓う」の感覚を分かってもらえないと、魔法のイメージが出来ないから、重力魔法と同じで、僕の固有魔法になっちゃう。
しかも、そこそこ魔力を込めて、木1本じゃ、焼け石に水、だよねぇ。
「昨日のの再現は再現。一歩前進だよ。すごいなぁ、ダーは。この調子で焦らずゆっくり考えていこうね。」
頭を撫でながら、アーチャはそう言うけど、ハハハ、エルフのゆっくりだと、僕、すぐおじいちゃんだよ?
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