第74話 リッテンドの守人
リッテンド。
それが、ランドルさんが長を勤める集落の名前です。
ランドルさんは、ドクの兄貴分的存在。
ランドルさんは、セスと呼ばれる人々の中でもかなり有名人だそうです。ちなみに別の意味でドクも有名人みたいだけどね。
セス、と呼ばれる人々。とっても混血が多いのは、この世界ではとっても珍しい。それは大昔に遡る、この大陸の歴史に関係があるんだって。
大昔、エルフ、ドワーフ、人種、獣人族、そして精霊と呼ばれる種族がこの大陸を中心に暮らしていたんだって。
生きる時間も、様々な身体的魔力的特性の違うそれら種族は、時に助け合いながらも牽制し、微妙なバランスの元、相互不可侵で暮らしていたんだって。
ところがあるとき、フミ山を中心に大きな魔力溜りが出来てしまった。原因とかは不明。魔力溜りは、時折できるし、ダンジョンなんかのできる原因にされる、そう珍しくない現象なんだ。
でも、その時の規模はすごかったんだって。
で、そのおかげで魔力を強く帯びて、強くなった魔物たちが誕生し、人の住む地域に押し寄せた。また、魔力の強い魔力溜りも何故かふくれあがって、どんどんと人の住む地へも広がってしまったんだって。これを「大災事変」て言うらしい。
魔力溜りは人にももちろん影響を及ぼした。狂ってしまう人。死んでしまう人。そして、魔力が大きくなった人も出た。
人々は、種族関係なく、この災厄に対応すべく協力して、魔物を狩ったりなんとか魔力溜りの進出を阻止しようと頑張ったんだって。
約300年。
人々は、種族関係なく仲良く手を組んで、強大な敵と戦ったんだ。
多くの犠牲を出しながらも、その最前線で戦う人々にある計画が持ち上がった。今の浸食部分を外周に大きな結界を作り、そこから先へと浸食が起こらないように結界を維持しよう、っていう計画だ。当時は長い魔力溜りの影響で、巨大な魔力を持つ人々が種族関係なくたくさんいて、そういった人々が前戦を支えてたらしい。その人達の大変な犠牲の下、結界は張られた。それが400年ほど前の話。
そして、その最前線にいた人の部隊が、大将の名を取ってセス。彼らは、結界の維持と、中から強い魔物が結界の外に出ないように間引くことを使命として、この地に留まった。セスの一族。それが彼らの始まりなんだって。
そして、その時代の生き残りが、実はこの国にはたくさんいる。エルフが中心だけどね。400年の歴史の中で、いつの間にかこの国にも種族間差別はできてるし、セスを知らない人々も増えた。そもそもシークレット部隊だったみたいで、認知は低かったってこともあるんだけどね。
ただ戦力としては、ものすごくて、セス部隊をこの地に封じ込めることで、エライ人達は安心して好き勝手してるんだよ、ってのがドクの考え。普通のセスの民は正義感やら使命感に燃えてるみたいだけどね。
で、一応結界が出来て、大災事変は終了ってことになって、初めて産まれた子がランドルさん、てことのようです。ランドルさんが産まれてセス部隊はセスの一族と呼ばれるようになったんだって。これがランドルさんがセスでは有名な理由。
事変終了のシンボル、ってとこだね。
セスの一族は、人が増えるに従い、結界の周辺に点々と集落を作るようになっていった。役割ごとに集落を作るんだって。だから、生粋の集落生まれは意外と少ない。この集落では今は二人だって。そのうちの一人がアーチャっていうんだ。見た目はセイ兄ぐらい。だいたい200年くらい前に産まれた若者、らしい。ランドルさんとウィンミンさんの子供だそう。ちなみにエルフには夫婦っていう感覚はないんだって。家族っていう感じも薄いのかな?なんかね、一族とか、集落とか、そういう単位で守る対象を考えるってことみたい。その時好きな人と、たまたま子供が出来たら幸せなこと、生まれた子は集落みんなの子として育てましょう。そういう感じ。
で、アーチャは200年経った今でも子供扱いでされることがあるようで、大変みたいだね。30年ぐらい前に中央から来た人が、この集落では珍しいドワーフメインの女の子と仲良くなって、ここに住み着いたんだって。先日、この中央から来た人は亡くなってしまったそうだけど、この二人に赤ちゃんが出来た。それでやっと、ちょっとは子供扱いがなくなったらしいよ。
そんなだから、僕たち子供は大歓迎だそうです。ちなみに僕たち以前見た子供は20年ほど前のゴーダンだって。25年ぐらい前じゃないかな、それって?ん?このぐらいは誤差?なんとものんびりしたお話しだね。
ゴーダンとはドクのおうちで会ったけど、全然かわいげが無かったから、僕らはとっても良い!だってさ。フフ。
アーチャ以外のこの集落生まれが、その人種のハーフ、テッダットさん。アーチャと並ぶとどう見てもお兄さんだよね。見た目虐殺の輪舞のダムかジムニぐらい?
もうすぐ、この集落をお母さんと出るんだって。中央で官僚っぽいお仕事をするそうです。
セスの村って、あちこちに点々とあるってのは話したけど、そんなこともあって、以前ゴーダンが来たのは、この集落じゃないらしい。トゼの都からフミ山に向かったから、そもそもルートが違ってこの集落とはかち合わなかったんだね。
各集落は、それぞれに目的があって、以前ゴーダンが行ったのは、セスの村でもメジャーな場所だったらしい。都と人材交流するのが目的の、そんな集落だったから、家だって、普通に立派なのが地面に建ってたらしいよ。一般にこの国でセスの村って言われれば、ゴーダンが以前たずねた集落を指すらしいです。
ちなみに、このリッテンド集落の目的は、そもそも外の人々が危険な樹海に入らないようにっていう門番的なものらしい。だから、フミギュ川と樹海が接する辺りは、重大警戒地域で、すぐに見つかっちゃったんだね。
ドクはリッテンドっていう、人がフミ山に近づくのを防止するための集落があってそこを200年も前から、ランドルさんが責任者として赴任してるのは知ってたらしい。だけど正確な位置は知らなかったし警戒地域も知らなかったから、まさかの遭遇で、気まずい思いをしたみたい。
ドク的には、川から近づく人の警戒、ってなしだと思ってたんだって。僕らみたいに船の出し入れとか出来ないでしょ?川と森の出入りできる場所ってかなり少ないから、補給も難しい。僕らにはリュックっていう秘密兵器があるからこのルートを考えたけど、森を突っ切る距離を考えたって、補給ルートを考えたって、どこかで街道を外れるにしろ、以前ゴーダンたちが使ったルート以外は考えにくいから、こんなところに、最大戦力と言ってもいいリッテンドが展開するとは予想しなかったらしい。
「それはね、グラノフ達が以前、獣人族を引き連れて集落を築き、この国を脱出したルートがフミギュ川だったからだよ。本当に樹海に入る能力を持つ者はこのルートを通るだろう、そう考えた我々は、ここに拠点を移し、警戒地域の一つにあそこも加えたんだ。」
にこやかに笑ってそう言うランドルさん。ああやっぱりこの人はドクの兄貴分なんだな、ってその時実感したよ。
それにしても、警戒ルートつくったの、ドクやひいじいさんの行動のせいだったとは・・・ハハハ・・・
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