第73話 見つかっちゃった?

 フラグ、というのかな?

 いやぁ、あっという間だったよ。

 僕たちが、船から下りて、船を収納し、樹海を視界に捉えながらも、普通の森の中を行くこと1時間、もしてないかな。

 ドクの話では、樹海の周辺にはセスと呼ばれる一族が、点々と集落を築いているんだって。実はこのセスと呼ばれる一族はドクの出身部族だったりする。一族って言ってるけど、ものすごくいろんな種族が混ざって生活しているらしい。だからドクのように自分が何族かよくわからないぐらいエルフもドワーフも人種も混ざったような、人々もいる、ということです。なんだか、とっても平和な感じでいいよね。ビバ人類皆兄弟!

 といいつつも、集落は同じような種族が集まっちゃってはいるらしい。エルフ中心とか、ドワーフ中心とか、っていった感じかな。



 そして、今現在、僕らの前に警戒心あらわにしている人達、間違いなくエルフ中心、なんだよね。

 といっても、僕が産まれた大陸は、人種以外はものすごく少ないんだ。

 初めての人種以外って、誰だろう。やっぱり山の隠れ家を管理してくれてるムーちゃんかな。冒険者にはごく希にいるらしいけどね。僕の生まれた国がそもそも別の種族を否定している。

 ただ、ドクは魔導師として別格で、見た目も人種のおじいちゃんで、まだ種族間交流がそこそこあった時代の噂話として存在した伝説の人物で、ひいじいさんが表舞台に再び引っ張り出して、王様とも親交を結んだもんだから、なんとなく別の種族が混ざってるけど、そこは気づかないふり?で、王国に取り込まれちゃったって感じかな。人種の血もそこそこ濃いらしいし。

 取り込まれたっていっても、ひいじいさんと出会って、いっぱいやりたいことができたから、その場所やら物やら提供して貰うことと引き替えに、校長先生をやってて、貴族でも上の方の人と同じような権力を貰ってる。まぁ、特殊な立場だね。


 ということで、エルフです。

 エルフ、なんだろう僕を突き動かすこの感じ・・・

 でもね、なんかみんな怖い顔してるよ。

 まぁ、僕らが神聖なお山に近づかないように威嚇してる、ともいうけどね。

 さて、どうしよう、ということも考えるほどではなくて、ドクが僕らの一歩前へ出たよ。


 「勇敢なるセスの民よ。我らはフミも樹海も荒らす者にあらず。ただ敬虔なる祈りをもって、北を志す者なり。」


 うーん、何言ってるか、あんまり分かりません。

 けど、多分女の人?が一歩前へ出て、ドクに対峙したよ。


 「我らセスを知る者のようですね。我はセスの民リッテンドの守人カルネラと申します。あなた方は何者でしょうか?」


 うーん、一応丁寧なお姉さん?後ろにいる人達は結構怖いけど、なんだろう、僕、見られてる?


 「儂の名は、ワージッポ・グラノフ。セスにその身をはぐくまれし者なり。」


 ざわついたよ。


 なんか、後ろのエルフの人達が、ザワザワとしている。僕に注目してた人たちも

なんだか、不思議な感じでざわついた。


 「これはこれは。かのグラノフとはあなたのことでしたか。疑うわけではありませんが、我が長の名をご存じで。」

 「けいランドルであろう。ウィンミンとの子はアーチャといったか。」


 お姉さん、カルネラさん?は、大きく頷いたよ。そして大きく手を広げて、

 「おかえりなさい、同胞よ。」

 そう、ドクに言ったんだ。



 で、カルネラさんや他のエルフの人々が僕たちにもついてくるように言った。

 で、なぜか、僕とナザ、ニーはは、エルフの人に抱かれている。

 初めはクジも抱かれそうになったけど、最近背が伸びて、ちょっぴり大人っぽくなったクジは、お断りすると、優しく微笑まれて、抱っこから免れたよ。


 なんでも、エルフっていうのは子供がとても少ないらしい。

 そしてみんなで子供を大事に大事に育てるんだって。

 特に魔力が豊富な子供は、ホントに大切にするらしい。

 で、僕が魔力が豊富なのはすぐに分かった(ドク特製のベルトでも、魔法が上手なエルフの人達にはごまかしきれなかったみたい)ので、僕にロックオンしてたんだけど、こんな大事に大事にしなきゃならない子供を、危ない森で歩かせてる、ってことで、みんなとっても怖い顔してたみたい。僕を誰が抱っこするかで、ちょっともめたけど、リーダー特権で、今はカルネラさんに抱かれてるよ。


 あのね、こっそりドクに聞いた話。

 ゴーダンも昔ここに来たときに、抱っこされたんだって。

 外見はちょうどクジくらいだったらしい。そこで大暴れして、大人ぶりたい年頃の子供には抱っこは嫌われる、ってエルフたち、学習しました。いや、僕でも恥ずかしいんですけど?ナザもニーも真っ赤になってるし。

 どうやら、ドクぐらいの身長を抜いてるか抜いてないか、っていうのが抱っこを免れるボーダーラインっぽいです。うわぁ。

 クジが免れてるの、ゴーダンのおかげみたいだよ。よかったね。



 こんな感じで、やってきましたエルフの集落。

 といっても、どうやら僕らと同じ人種もいるし、ドワーフもいるみたい。うん、見た目はね。聞くと、ドクと同じく、ハーフとかクオーターとかばっかりで、純粋な人種は3人だけなんだって。

 ちなみに、ここで生まれた人種はいない。今いる3人は人的交流のためにやってきている、この国の要人子息。将来は中央に帰って重要なお仕事に就くことが約束された人達。たまには帰るのをいやがって住み着いちゃう人もいるらしく、それはそれで歓迎されるんだって。

 どうやら、セスってとっても特殊な一族のようです。


 僕らは、たくさんのツリーハウスで作られた集落のちょうど中央当たりにある家に連れてこられたよ。

 エルフだからツリーハウスだね、なんて思ってたけど、それは違うみたい。たまたまこの辺りの土地は、伐採しても木の成長速度が速すぎておうちが作れないんだって。建ててもすぐに、木に浸食されちゃう。そこで、ある程度樹齢の高い、大きな木を選んで、そこにツリーハウスを作ることで、なんとか居住可能な家を作れる、ってことらしい。樹齢が高いほど、成長速度が低くなる。だからなんとか何十年かは持つ家が作れる、らしいです。


 僕らが連れられた家は、この家の長老さんのおうちだそうです。

 で、その長老さん見た目は、ゴーダンぐらい?

 ランドルさんというそうです。で、なんとドクの兄貴的存在、なんだって。びっくりだよね。ドクの子供っていうなら分かるけど。

 なんかね、ランドルさんってドクより50歳くらい上なんだって。

 エルフの血が濃いけど、人種も混じってる、ってことです。

 言い伝えだけどね、『エルフ1000歳、ドワーフ500、人種が100で獣人50』て言うんだって。大体の寿命だそうです。いやいや100歳の人間、僕はこの世界で見たことないよ。ドクは別として、ね。まぁ、魔導師で100歳だ200歳だってのは聞くけどね。有名なのがドクでは、ちょっと、ねぇ・・・


 ま、この集落は、最前線的なことを担う集落ってことで、全体的に若い人が多いそうです。長老ランドルさんがほぼ400歳。それより上の人は数名。大体が300歳前後働き盛り?のお年頃。ちなみにカルネラさんも300歳ぐらいだそうです。

 ぐらい、っていうのは、長寿のエルフとかってあんまり細かく1年とか2年はカウントしないみたい。さすがに産まれて10年ぐらいはカウントするけど、誰々より10歳ぐらい上、とか、そんな感じでアバウトにカウントするだけなんだって。どうやら400年ぐらい前に何か重要なことがあって、その後このセスの民たちに一大ベビーブームが100年ちょっと続いたらしい。だから250歳くらいから400歳くらいの人口は多いそうです。ドクはそのちょうどど真ん中だね。


 (エルフ感覚で)ちょっと前に出ていったドクに関しては、旅人的な感覚で捉えられているらしい。人種の中では伝説として語られていた冒険者としての時代が1回目。一度戻ってきて、隠居生活を100年以上していたにもかかわらず、ひいじいさんと出会った2回目。再び、外から人をいっぱい連れて里帰りのドクはなんとなくヒーローっぽく扱われてる。

 あれ?

 いつも聞いてるドクの話とは、随分違う気がする?どうしてかな?

 ドクは古いしきたりに縛られた面倒なところ、みたいな感じで、浮いてた感たっぷりに話してたけど、とっても歓迎されてて、・・・いいんだけど、ちょっぴり腑に落ちないなぁ、って考えちゃったよ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る