第64話 はちもどきの巣へ行こう
でもさぁ、なんで、はちじゃなくてはちもどきなんだろう?
僕が疑問に思ってたら、はちもどきの栽培所にいきたいか、と尋ねられた。
ワコ君とワコ君のお姉さんでネコさん、ていう人が、希望者に見せてくれるっていうんだ。
もちろん、僕をはじめ子供達は喜んで、見に行くことに・・・
「ああ、リネイはやめておいた方が良い。」
好奇心旺盛な魔導師のリネイやネリア、それにアルとセイ兄も行こうとしたんだけど、ゴーダンは、それを止めた。
もちろん、ゴーダンとドクははちもどきの命名シーンにもいたから、それがどんなものか知ってるんだって。で、その姿を見たら、リネイは卒倒するかもしれない、なんていうんだよ。
え?どういうこと?
ちょっと不安になってきた。
「ダーたちは大丈夫だ。行ってこい。」
僕ら子供達が不安そうにしていると、こっちにはそんな風に言ってきたよ。
「ああ、心配すんな。リネイはガキの頃から、虫系統がだめなんだ。特に今から見るようなやつはな。」
「あー、そういうこと。私も随分大丈夫にはなったけど、わざわざ虫を見るのもねぇ。後で報告だけ聞くから、ダーはしっかり教えてくださいね。」
リネイにそんな風に言われて送り出されたけど、ちょっと不安になっちゃったよ。
大丈夫、ってのは振りなのかな?実は全然大丈夫じゃないとか?それとも本当にリネイだけが苦手な、そんなものなんだろうか?
僕たちは、そんなことを言いながら、ワイワイと二人に引き連れられて、見学に出かけたよ。
ついたのは、生け垣と生け垣の間の広場だった。
なんか、この辺、気になってたんだよね。
「その柵の中には勝手に入らないでくださいね。地面がなくなっちゃうかもですから。」
ネコさんがそんな風に注意する。
て、地面がなくなるの?それ、怖い。
「では、こっちへ来てくださ~い。」
片手を上げて呼ぶその姿は、まるで旅行ガイドさんだね。
ネコさんについて、柵をグルッと避けて行く。生け垣に小さな板の扉が取り付けてあるところがあって、それを押して出ていくと、もう森の中だ。
なんか、探検隊みたいでわくわくするね。
少し行くと、目印なのか、大きめの岩があった。
岩の裏っかわには、草が生えてるけど、どうやら踏みしめられたみたいな筋がある。
その筋をたどると、ぽっかり開いた穴。
僕たちは入れるけど、ゴーダンとかだとどうだろ?今いるので一番大きいのはセイ兄だけど、大丈夫かな?うん、なんとか大丈夫みたいだね。
中は斜めに道があったよ。
獣人族の人達って目がいいから、この土の道でも見えるんだって。でも僕たちは無理かな?先頭に入ったセイ兄はうっすらとした光源を出す。あまり得意じゃないから、こんなうっすらとしたのしかセイ兄は出せない。
僕が変わろうか?て言ったら、ネリアに睨まれたよ。
こんだけ光源だせて得意じゃない、は、非常識らしい。じゃあ、ネリアは?て言ったら、思いっきり殴られちゃった。うん、できないのが常識、なんだね。一つ覚えたよ。グスン。
仕方ないから、豆球レベルのセイ兄の明かりを頼りに、前へと、進む。
と、なんか影が!
身構えるけど、
「こちらから攻撃しなきゃおとなしいから、みんな壁に張り付いて。あれがはちもどき、だよ。」
ワコ君が、するどく言ったよ。
えっと、あれですか?
えっと、見た目は蟻、だね?
そういや蜂と蟻って似てる気がする。
羽があれば蜂だ!てなる、かな?
んとね、出会ったときは真正面からだったから、蟻、みたいに見えたんだ。
でもね、顔は蟻だけど、体は・・・・
確か前世では、虫の中でも昆虫って頭・胸・胴って3分割だっけ。蟻や蜂は胸部分が小さくて、腹の部分がデカかったって記憶してる。足は胸だったっけ?胴にもついてたかな?あんまり記憶ないや。でも、確か6本ってのが虫の特徴だったように思う。
で、今目の前にいるはちもどき。
昆虫みたいにいくつかのパーツになってるところは、よく似ている。
でも、違うのはその数。
一番デカい頭部分。これはまんま蟻。
で、ほぼこれをひと周り小さくした同じようなサイズのパーツが1、2、3、4つだ!全部で5カ所に分かれていて、その頭以外の各パーツに1対の足がついている。
ハハハ、八本足は蜘蛛だよね。
ちょっと、好きじゃない、かな?
僕たちは、ワコ君達に先導されながら、その蟻の巣のような(て、本当に蟻の巣なのかもね)道を、はちもどきを壁に張り付いて避けながら進む。
蟻の巣のように、ところどころ、広そうな場所につながっているのがちら見えするけれど、目的地を目指して、ただ道を歩いたよ。
途中からは、登り道。
最初は、延々下ってたけど、今はほぼ登りかな。
「ここです!」
そろそろ飽きが来たよなぁ、なんて、ちょっと思っちゃった頃、突如でっかい洞窟みたいなところに到着したよ。
洞窟の中には、天井からつながっているように見える畳2畳ぶんぐらいの枠みたいなのがあった。うっすらと白い膜の張った、それはよく見ると、ハニカム構造だ。正六角形の蜂の巣型。
この洞窟。奥に向かって、この同じような構造の枠が天井から刺さっているように見る。
「これが、エッセル様考案の、巣箱です。」
え?
二人の話を要約すると、ひいじいさんは、たまたま食事で出された蜂の子そっくりの虫に興味をもったんだって。蜂の子って言っても人間の大人の胴体ぐらいの太さがある。これはこの辺りのタンパク源としてよく食べられていたものらしいけど、そのステーキは、蜂蜜がコーティングされていたんだ。経験上、この蜂の子は周りの果肉(て呼んでたらしい)ごと採って、そのまま焼くとおいしいってことだったらしく、ひいじいさん、これは蜂蜜と蜂の子だ!て思ったみたい。取ってきた場所を案内してもらって、色々考えた。
そしてできたのが、その赤ちゃん室に巣箱の枠を仕込めば、養蜂っちっくなことができるんじゃないか。
で、この洞窟をつくって巣箱を設置。あとは丸投げしちゃったってことらしい。
やっと、こうやって巣箱に蜂蜜が張るようになって、まだ10年も経たないって言うから、寿命の短い獣人族になにやらせてるんだよって思うけど、成功した今、彼らの大事な戦力になりそうだね。
僕らは、感心しつつ、また元来た道を戻っていったよ。
で、次に連れてきて貰ったのが、行くときに地面が落ちるかもしれないから注意してって言われた、あの場所だったんだ。
なんと、ここ、あの枠のてっぺんが並んでいるんだって。
実際に採取するときは、この枠を持ち上げる。
すると、蜂蜜がいっぱい、この場所で手に入るってわけ。
さすがにこのまま枠を持ち上げるのは、重い。
さすがの獣人でも難しい、ってことで、枠を持ち上げるときは、これもひいじいさん考案の滑車を用意するんだって。
本当はその後、遠心分離機にかけて、蜂蜜を取り出したいところ。一応、その辺りもひいじいさんはアイデアを出していたみたい。けど、いかんせん、デカい。これだけのデカい枠を入れて回すとなると、相当デカいものが必要になるよね。ということで、遠心分離機がないから、ちょっと枠を持ち上げては、白い蓋を切り落として、流れ出る蜜を回収する、ということになるんだって。僕になんか良い方法ないか、って聞かれたけど、うーん、どうしようか?
獣人族って魔法を使えない人がほとんどみたいで、魔法でどうにかしよう、って僕の案は難しそうです。
あ、そうそう。なんで獣人族が魔法を使えないかって言うと、イマジネーションの問題らしいです。魔力自体は他の種族と変わらないけど、想像力っていうのが、なかなか育たない種族で、魔法を使うのが難しい、らしい。うーん、それならなんとかなるかな?
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