第61話 お花畑の向こう側
竹を少し多めにゲットして、商会のお土産に。
帰ったら、ママと一緒に竹細工するんだ。
販売してもいいし、竹籠をつくってお店で使ってもいい。夢が広がるね。
みんな、思い思いのコップを1つないし、複数ゲットして、楽しそう。
鉈みたいなの、ないのかな?やっぱり剣やナイフで切るのは違うと思うんだ。
僕らは、やっぱりたいした魔物も出ない、道なき道をひたすら東へと進んだよ。
時折、実のなる木があってこの国出身のドクに聞きながら試食したり、小さな、それこそ鳩ぐらいのサイズの、茶色い鳥を捕まえて食べたり、約1日かけて、奥へ奥へと進んでいったんだ。
うーん、楽しいけど、本当に道は大丈夫かな?
2日目。
森の中にお花畑を見つけたよ。
うわぁ、ってみんな盛り上がって、そこに向かって走っていったんだ。
ピュン、ピュン
そのとき、先頭を走ってた、僕とナザの目の前の地面に、矢が突然射かけられた!
僕らは二人とも、ていうか、気配で後ろから来てた人も、みんな慌てて剣を構えたよ。
「剣を引け!」
ドクが、ピリッとした口調で、叫んだ。
え?でも・・・・
子供達以外、みんなすぐに剣を引いた。
「ほれ、アレク達もみんな剣を引くんじゃ。」
僕は、隣にいたナザと、目を交わしつつ、いつでも構えられるように用心しながらも、剣を鞘に収めたよ。
ちょっと後方にいた、ドクだけど、その時、僕とナザの間を通って、僕らの前に出た。通りすがりに、僕らの頭を撫でていったよ。
「パッデ村の勇士たちよ、久しいのぉ。我が名はワージッポ・グラノフ。エッセル・ナッタジと共に、ぬしらと友誼を結んだ者じゃ。」
大きな声でドクが堂々と言ったよ。
パッデ村、って、今、僕たちの向かっているところだよね?
その時、誰かが前方で動く気配がした。
けど、どうやらさらに奥の方へと、何人か去って行っただけみたいで、誰も、こっちにはやってこない。どうなってるの?
「いいからそのまま待て。郷に入っては郷に従えじゃ。ホッホッホッ。」
ドクはその場に立ったまま、でも緊張もせずに、何かを待っている。
ドクがそういうんなら、と、僕たちは、そのまま、その場で立ち尽くしていたよ。
どのくらい経っただろう。
花畑の向こう側から、3人の人が現れた。
ちょっぴり黄色っぽい茶色で、光が当たったら金色にも見えそうな毛に全身を覆われた、獣人族の人達だった。真ん中の人は、ちょっと年配の人かな?両脇を固める人たちは、弓、ではなくて、まぁその一種、ボウガンみたいなのを抱えている。
「ほー、まことワージッポ様じゃ。まったくお変わりない。私は今はヒコを名乗りまするが、当時はワコでございました。」
「ほー、あの子が、主か。」
「はい。我々は年をとるのが早うございます。あの後、すぐにミコとなり、もうヒコとなってしまいもうした。」
ハッハッハッ、と、ヒコさんは笑った。
「これに控えますのは、当代のミコ、そしてこちらがワコにございます。」
「ほぉ、ワコ様まで。随分と立派になられているようじゃのぉ。」
「して、エッセル様のお顔が見えませぬが。」
「きゃつはのぉ、とおに亡くなったよ。」
「!・・・なんと。いつの日か、次のお恵みをいただきたいと、日々精進してきましたが・・・無念にござりまする。」
「うむ、・・・・アレクや。」
僕は、ドクに手招きされて、側に行ったよ。
「ヒコ殿。この子はアレクサンダー・ナッタジ。エッセルの末じゃ。主の望む知恵をエッセルに替わって授けられる、そう儂は信じとる。」
エー、ナニソレ。初耳なんだけど・・・
「それは!このお子は神子様であらせられましたか。」
うわっ、なんか、隠れていた人達もワラワラ出てきて、僕を拝み出しちゃったよ。
ちょっと、どうなってるの?
びっくりして、僕はドクの背に張り付いたけど、なんなんだこれは?
「ホッホッホッ。この子はエッセルほど耐性がないでのぉ、神様扱いは許してやってくれんかのぉ。ほれ、怯えてるじゃろ?アレクよ。そんな隠れてんで、みんなに顔を見せてやれんかのぉ?」
「これは、あい申し訳ありません。これ皆の衆。神子様のお困りじゃ。立って、神子様とお供の方をお迎えする準備じゃ!」
ウォー!と拳を上げて応えた獣人族の人達。けど、言っとくけど、みんなは仲間であって、供とかじゃないからね。
僕は否定したけど、みんな悪ふざけして、僕を持ち上げてくるし。
もう、って僕はみんなに怒りながらも、お花畑の向こう側、緑の結界に優しく包まれたパッデ村へと、足を踏み入れたんだ。
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