第52話 vs ドッパ
やっと卵が見つかった。
一番喜んだのは、もちろんアル。切羽詰まってるもんね。
ダッシュで卵へと走り寄る。
あ、危ない!
シュパ!って、鋭い水弾が、川の方から飛んで来た!
ヴィーン!
ドクがドーム状の水の盾を、水弾とアルの間に張ったよ。
水弾の威力に、みんな一瞬固まる。けど、
ピチュン!
水弾は盾に当たるとちょっぴり跳ねて、そのまま盾に吸収されたよ。
「うあー、びっくりした。」
水弾が一区切りして攻撃が止まったスキを狙って、転がるように戻ってきたアルは、ゼイゼイと息をしながら、言った。
うん。でも確かにびっくりしたよ。僕だって、一応警戒しながら進んでたんだ。危なそうな魔力にも気をつけてたんだよ?
でも、川の中のグレーの固まりは、生物の感じがしなかったんだ。ホントに岩がポコポコあるってだけで、気にもしなかったよ。
急に魔力の高まりを感じて、そっちを見たら、長い首が立上がって、パカッと口を全開にしてた。と、思ったら、ビュシュツビュシュツ、て水弾の嵐。
まさか、魔力の気配を消しちゃう魔物がいるとは思わなかった。
でも、さてどうしよう。
「全部狩ってもいいが、今後も卵が欲しいなら、ちょっとは残しておいた方がええぞ。」
ドクが倒すこと前提で、そんなことを言ってるよ。
うーん・・・
とりあえず、燃やしてみる?
「おっと。ダー、お前、魔法禁止な。」
アルが、僕の前に立って、大きく両腕を振った。失礼な。さっきはちょっぴり失敗したけど、ちゃんと手加減できるってば。
「私もダーは、魔法を使わない方がいいと思う。」
ニーが言った。
「そうだね。ここで失敗しちゃうと、みんな100叩きの刑だよ、きっと。」
と、クジ。
「俺は、ダーのすっごい魔法も見てみたいけど、叩かれるのはやだしな。」
と、ナザ。
「ドクぅ。」
僕は、ドクに大丈夫だと言って、と目線を送る。
「ん~。まぁ、アルの腕なら、あの群れにツッコんでも大丈夫じゃろ。儂が補助するから、アルは親鳥たちを襲撃して混乱させるんじゃ。中途半端に傷つけるんじゃったら、ちゃんと殺しておくんじゃぞ。その間に、アレクたち4人は、卵の回収じゃ。自分の持ってる袋に詰めるだけ詰めて、即撤退じゃのぉ。」
「えー、ドクってばぁ。」
「これが儂の作戦じゃ。アレクよ、気にいらんなら好きにすればいいが、儂は責任持たんぞ。みんなが証人じゃ。」
見ると、全員、うんうん頷いてる。
ぶーっ。
さすがに、絶対失敗しないなんて自信ないし、僕もドクの作戦に従うことにするよ。
僕がそんな風に言うと、ドクは僕の頭を優しく撫でてくれた。そして、水鳥たちを見ると、
ビュン!
一番遠い、ドッパのさらに向こうにでっかい水弾をプチ込んだよ。
ドッバーン!
でっかい水しぶきと音を立てて、水弾は着水する。
それに驚いて、ドッパたちはみんな、そちらへと振り返ったよ。
「よし、ダー。魔法を使わせてやるよ。俺をあいつらのど真ん中の空中に連れて行け!」
アルがそう指示をした。
僕は、頷いて、アルの体を重力魔法で宙に浮かせると、ドッパが一番多くいそうな上空まで運び、パッと離したよ。
アルは、ドリャァーって言う雄叫びを上げながら、剣を振りかざし、ドッパの頭上から、切りつけた。そのまま、ドッパの背を自由自在に走り回りながら、何羽かを切り裂き、混乱の渦に巻き込んでいく。
「よし、僕たちも行くよ!」
その様子を見てクジが、声をかけた。
残念ながらリュックは船だけど、みんな自分の胴体ぐらいはある鞄を持っている。
その中に、ソフトボールぐらいのサイズの卵をポンポン放り込んだよ。
「撤退じゃ!」
アルの補助をしながら、全体を見ていたドクが声をかけた。
僕たちはすぐさま、ドクの所へ駆け戻る。
途中、僕はアルを最初と同じように空中へとつまみあげ、陸地まで移送。
僕が魔法を解除すると、アルは走りながら、僕の頭をゴーダンみたいに乱暴になで回し、追い抜いていった。
そんな風にして、アルを先頭に、そしてしんがりはドクで、僕たちは撤退したんだ。
最後にドクがブワッて土を舞上げて、追うか追わないか悩んでいそうなドッパたちの視線を遮る。
やったー!作戦成功。
想像よりもたくさん卵をゲットできたよ。
これで、アルの命も救われた!
僕らは、みんな笑顔でハイタッチ。
アルは、はじめてのハイタッチを、やっぱりナザに教えられ、恥ずかしそうに、でもすっごく嬉しそうに、
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